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著者に悪意は無いが、あえて皮肉な見方をすれば...。
『13歳のハローワーク』〔'03年〕 『おじいさんは山へ金儲けに』('01年/NHK出版)
親たちは何故こんなデカくて高い本を買って狭いウチに置いておくのでしょうか?(広いウチに住んでいて大きな書架があるという人もいるだろうし、買わずに図書館で借りたという人も多いとは思うが)
経済書を500冊読破したとかいう著者は、本書と同じ画家とのコンビで『おじいさんは山へ金儲けに』('01年/NHK出版)を出しています。
こちらの方は寓話による金融投資論で、そうした教育が日本でほとんど行われていない点を突いたものですが、著者のオーサーシップ(作家性)が全面に出すぎて『本当は恐ろしいグリム童話』みたくなってしまい不評でした―親が絶対買わない。
"学習"した著者は『13歳〜』ではサーチャー(の統括ディレクター)に徹し、その内容の質的な善し悪しはともかく、職業情報を整理したものが学校になく、家庭でも職業教育のようなものが行われていないという日本の現状の虚を突いたかたちになって成功しました。
ベースにあるのは労働経済学的な考え方で、受給バランスの発想です。サラリーマン以外の職業の多くは「買い手市場」であり、そう簡単になれるものではないと...。―親が安心して子供に買う。が、子供はそれほど読まない。
本書の主な情報源となっているのがインターネットであることは明らかですが、インターネット情報というのは過去または現在に偏りがちで、どうしても未来というものの比重が小さくなるのではないでしょうか。
同様に本書には、"キャリア創生"といった考えが入る余地はほとんどなく、一定の過去から現在にかけて認知を得ている職業についてのみ語られているので(1人1人の読者は「へぇ〜、こんな職業もあるのか」と思うかもしれませんが)、それらの需給バランスを検証すれば、大方が「買い手市場」の、就くのが難しい職業ということにならざるを得ないのではないでしょうか。
まあ、子供が、こういう仕事が世の中に存在しているということを知り、働いている人のことをイメージすることの教育上の意味が無いわけではないと思うので、星1つオマケという感じですが、本当に「子供」が読んでいるのかなあ。