【172】 ○ ナンシー・K・シュロスバーグ (武田圭太/立野了嗣:訳) 『「選職社会」転機を活かせ―自己分析手法と転機成功事例33』 (2000/04 日本マンパワー出版) ★★★★

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キャリアの節目で悩んでいる人には、元気づけられる事例やヒントが。

「選職社会」転機を活かせ.gifMidCareer.jpg NancySchlossberg.jpg Dr. Nancy Schlossberg
「選職社会」転機を活かせ0』 ('00年/日本マンパワー出版)

シュロスバーグのキャリア理論.png 全米キャリア開発協会(NCDA)の会長などを務めた著者による本書は、人が人生の転機やキャリアの節目にぶつかったとき、それをどう乗り越え、どうすれば豊かな人生が送れるかということをテーマとしています。

 著者は、どんな転機でも「見定め」「点検し」「受け止める」ことで必ず乗り越えられるとし、その「点検」のところでは、リソースとしての4つのS(Situation:状況、Self:自分自身、Support:周囲の支え、Strategies:戦略)を見極めるとが、成功への道に繋がるとしています。

 この論旨の流れに沿って、人生の転機や困難に直面した人がそれをどう乗り越えたかという事例が多く紹介されていて(本書の原題は"Overwhelmed"(途方にくれて))、アメリカ人というのはこういう逆境から立ち直る話が好きなのだなあという気もしましたが、もちろん日本人にとっても、とりわけ人生やキャリアの節目で悩んでいる人には、元気づけられる事例や考え方のヒントが本書には含まれていると思います。

 原著の出版は'89年と少し古く、一般的なキャリア理論の紹介も一部にありますが、必ずしも充分に網羅しきれていません。キャリア学の金井壽宏氏も「どんな転機でも必ず乗り越えられる」という考え方において、本書に賛同していたような覚えがあります。そうした意味では、理論書というより啓蒙書に近い感じがします(人生論ではないと訳者あとがきにはありますが...)。その分、自身のキャリア点検における前述の「4Sシステム」といった考え方は、時代を超えた普遍性があるようにも思いました。

 興味深かったのは、「人生半ばの危機」説に批判的なことで、人はあらゆる時期に転機に見舞われるとしていている点で、例えば母と娘が同時期に出産するといったことが起こる社会においては(そうしたことがどれぐらいの頻度でアメリカ社会にあるのかはよくわかりませんが)、確かに固定的なライフステージを想定していない方が、こうしたダイバーシティ(多様性)に対応できるのかもしれないと思いました。

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