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「●PHP新書」の インデックッスへ
自分を「この私」として「ここ」に定位することができないという特徴。
『自閉症の子どもたち―心は本当に閉ざされているのか (PHP新書)』〔'01年〕
自閉症についての基本的知識が得られる入門書ですが、同時に、著者が多くの臨床経験を通じて得た深い考察に触れることができます。
自閉症児は絶えず他者からの侵入を恐れていて、その症状は防衛の手段である、とする著者の考えは、R・D・レインの反精神医学を想起させます。
レインの場合、自閉症ではなく精神分裂病(統合失調症)の患者に特徴的な行動に対する解釈なわけですが...。
著者は自閉症児の特徴として、自分を「この私」として「ここ」に定位することの困難を指摘し、そのため「身体」、「空間」、「言葉と時間」の感覚に障害を生じているとしています。
身体感覚の喪失や指さしが出来ない、指示代名詞が使えないなどの特徴は、療育に携わっておられる方なら目の当たりにしたことがあるのではないでしょうか。
著者の考察は「自己」とは何かというところまで及び、読者の知的好奇心を刺激してやみませんが、そのためだけに書かれた本ではなく、その都度、自説に沿った治療のあり方(適切さ・一貫性・柔軟性)を提示していることからも、自閉症児が人と関わることの快さを感じられるようにしたいという著者の熱い思いが伝わってきます。
《読書MEMO》
●『レインマン』過去の飛行機事故をすべて記憶していて搭乗を嫌がる(29p)
●アスペルガー...IQと言語が正常で、コミュニケーションの質に障害がある(36p)
●自閉症児は絶えず他者から侵入されることを恐れている。自閉症児の示す多様な症状は、自己を他者の侵入から守ろうとする防衛手段である(39p)
●自分の身体が自分でない状況(101p)
●癒着的一体化(104p)クレーン現象など
●自分を「この私」として「ここ」に定位することができない(150p)