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「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「池袋ウエストゲートパーク」)
警察の特命で活躍するカトゥーンアニメの主人公みたい。
『池袋ウエストゲートパーク』(1998/09 文藝春秋) TBS(2000年)「池袋ウエストゲートパーク DVD-BOX」
1997(平成9)年・第36回「オール讀物推理小説新人賞」受賞作。
池袋をテリトリーに遊び回っている果物屋の跡取り息子マコトは、賭けボウリングで小銭を稼ぐチンピラみたいな生活を送っているが、成り行きで遊んだ女子高生リカが、ある日死体となって発見される―。
所謂"IWGP"シリーズの最初に出たもので、「池袋ウエストゲートパーク」「エキサイタブルボーイ」「オアシスの恋人」「サンシャイン通り内戦」の4篇を所収。
快活で小気味良い文体とアンチヒーロー的個性派キャラクター群、それに、池袋という街を舞台にした(ロサ会館!しばらく行ってないなあ)今日風の事件と風俗描写で読ませます(女子高生売春からギャング団抗争までてんこ盛り)。
事件はドロドロしているけれど、解決に当るマコトら少年たちは、"ブクロ"の平和を守るためにかなり前向きで、時代捕物帳のお奉行に協力する岡引きのようでもあり(これは失礼か)、警察の特命で活躍するカトゥーンアニメの主人公のようでもあります。
少年たちの目線で描かれているところが、若い読者に受けた理由でしょうか。彼らの成長物語にもなっているところに、映画「スタンド・バイ・ミー」にも似た作者の若者たちに対する暖かい視線が感じられます。
ちょっと考えれば、ヤクザがらみの事件に少年たちが落とし前をつけるなどというのは現実にはあり得ないわけで、児童図書館に置いていい本かどうかは別として、ジュブナイル系ファンタジーと見てよいのでは。
自分の高校の番長タイプの人間を過度にスゴイ存在として捉えているところなどは、醒めた都会派と言うより、どちらかと言うと一昔前の地方の高校生の感覚ですけれど...。
この子達たちから事件を取ったら何が残るのか、という"心配"もありますが、それは、アニメの主人公から事件を取ったら...というのと同じ問いであり、意味無いかも。
宮藤官九郎脚本でTBSでテレビドラマ化され、最初の方だけちらっと観ましたが、あまりに原作からの改変が激しくて、宮藤ファンには好評だったようですが、そういうの、個人的には好きにはなれない...。
「池袋ウエストゲートパーク」●演出:堤幸彦/金子文紀/伊佐野英樹●脚本:宮藤官九郎●音楽:羽岡佳●原作:石田衣良「池袋ウエストゲートパーク」シリーズ●出演:長瀬智也/加藤あい/窪塚洋介/佐藤隆太/山下智久/阿部サダヲ/坂口憲二/妻夫木聡/西島千博/高橋一生/須藤公一/矢沢心/小雪/きたろう/森下愛子/渡辺謙●放映:2000/04~06(全11回)●放送局:TBS
【2001年文庫化[文春文庫]】