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事事例解説が丁寧で、人事考課制度の設計や考課者研修をする際に参考になる。労務行政版。

最新 人事考課制度.jpg     最新成果主義型人事考課シート集.jpg  最新・目標管理シート集.jpg
今が分かる!悩みに答える!最新 人事考課制度 - 13社の企業事例、最新実態調査、専門家の解説とQ&A (労政時報選書)』['11年]/『最新成果主義型人事考課シート集―本当の強さをつくる評価・育成システム事例』['03年]/『最新・目標管理シート集』['08年]

 企業で実際に使われている人事考課のための帳票や目標管理シートを集めたものでは、日本経団連が日経連時代から何年かおきに刊行しているものがあり、直近では、『最新 成果主義型人事考課シート集―本当の強さをつくる評価・育成システム事例』('03年/日本経団連出版)や『最新 目標管理シート集』('08年/日本経団連出版)があります。

 前者は32社のモデル帳票資料263点を収録し6,020円、後者は30社のオリジナルシートを収録し、274ページで4,200円と、それぞれなかなか"いい値段"で、しかも中古でもあまり安くならないところをみると、やはり継続的に需要があるということなのでしょう。端的に言えばシート集であり、解説を書いているのも各企業の担当者です(ある意味、日本経団連は、ラクな商売してる?)。

 「労政時報選書」として刊行された本書の場合は、リクルート、リコー、日本ユニシス、ハウス食品、更にはソフトバンクなどなど13社の事例を載せていて、376ページで税込価格5,200円。まあ価格的にはこんなところになるのかなと('06年版の『最新人事考課制度』は、224ページ(3,900円)だったので、ページ数を増やし、価格もそれに伴って上げたことになる。「別冊」から「選書」になっても、安くならないんだなあ)。

 1社当たりの記事は、「労政時報選書」版の方が、背景となる人事制度の枠組みなどが「取材記事」として丁寧に解説されている点で充実していて、それら事例の紹介に入る前に、最近の人事考課の変化傾向分析などが、調査データを交え80ページに渡ってなされており、これも参考になります。

 また、後半の100ページは、運用のためのQ&Aが31問ほど付されて、かなり突っ込んだ解説がなされていたり、「考課力アップ講座」としてチェックテストが付されていたりし、これらは、考課者研修に使える実践的なものであると思われます(個人的にも実際に使用した。「労政時報」本誌でかつて掲載された内容もあるが、本誌購読会員は改めてネットでダウンロードできる)。

 13社の事例をみても、考課表の内容はバラエティに富んでいて、考課要素で言えば、「業績・能力・情意」といったトラディッショナルなものから、人材育成を単独の考課要素として取り入れたものまで様々です。

 かつてほど「コンピテンシー」ということは言われなくなったと聞きますが、こうしてみると「行動評価」として定着している企業には既に定着していて、全体的に見ても、「業績・能力・行動」が3大考課要素とみていいのではないでしょうか。

 「能力」の部分は、例えば「課題解決能力」など、業務遂行の過程で実際に顕在化した能力を見るようにしている傾向が窺えますが、プロセスという意味合いにおいて、行動評価(行動プロセス評価)と統合しているケースもあります。

 考えてみれば、「コンピテンシー」の本来の意味は(人格に近いところでの)「能力」という意味であり、米国などでは主に採用や昇進・配置のアセスメントとして使われていたのが、日本においては人事考課に用いられるようになり、そのため「そうした行動をとる人格かどうか」ということではなく、「期間中にそうした行動がみられたかどうか」に着眼するようになったと思われます。

 結果として、「コンピテンシー」とう言葉を使わずに「行動評価」という言葉を用い、一方で(本来はコンピテンシーと意味合いがダブる)「能力評価」の領域は残されていて、かつての「業績・能力・情意」のうち「情意」の部分が「行動」に置き変わったものが、今のところ日本的スタンダードになっているような印象を受けました。

 日本経団連版も労務行政版も価格的には安くはありませんが、きちんと利用すれば元は取れると思われ、個人的には、とにかく多くの企業事例を見たいのであれば日本経団連版がいいのかもしれませんが、労務行政版でも人事考課制度の傾向は掴むことが出来、実際に企業内の実務担当者やコンサルタントが人事考課制度の設計や考課者研修をする際には、労務行政版の方が参考になるのではないかと思います。

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人事評価の参考書であるとともに、職場マネジャーに組織・部下マネジメントに対する意識を促す内容。

マネジャーのための人事評価実践.jpg 『マネジャーのための人事評価実践―"査定"のための評価から"職場マネジメント"としての評価へ (SANNOマネジメントコンセプトシリーズ)』 (2009/09 産業能率大学出版部)

 本書はマネジャーや人事・教育担当者向けに書かれた人事評価の参考書ですが、マネジャーには「部下を動機づけ、その能力開発を図り、恒常的に成果を創出できる職場を築いていく」使命があり、人事評価も、単に"査定"のために行うものではなく、「職場マネジメント活動の一環として実施されるべき」である、という考え方が貫かれているのが特徴です。

 本書では、マネジャーが行うべき評価を、査定のための「人事評価」、部下の成長を支援する「フィードバック」、職場の成果を向上させるための「マネジメント活動の評価」の3つに大別しています。

 全5章から成り、第1、2章で、「人事評価」のしくみと考え方、その運用原則や留意点などについて、基本的事項を押さえた解説がなされており、ここまでは、人事評価についての一般的な参考書と内容的に重なる部分も多いかと思われます。

 第3章では、「人事評価」の実際の進め方について、第4章では、「フィードバック」の進め方について書かれていますが、ともに、マネジャー自身が自分の評価能力やフィードバック能力を向上させるにはどうしたらよいかという視点からの解説となっています。

 第5章の「マネジメント活動の評価」とは、職場マネジャーが自らに対して行う自己評価をさしています。期首及び期中にそれぞれマネジャーが行うべき「マネジメント活動の評価」について解説されていて、具体的には、「職場ミッションを部下と共有したか」「進捗管理はできていたか」などのチェックポイントが掲げられています。

 本書が前提としている、職場マネジメントが機能していない状態で実施される人事評価は、部下にとってもマネジャーにとっても決してよいものにはならず、優れた人事評価は優れたマネジメントなくしてあり得ないという趣旨はまさにその通りであり、それにはまず、マネジャー自身に、自らの職場マネジメントの課題への気づきを促すことが肝要でしょう。

 本書は、全体としては人事評価の参考書の体裁をとりながら(評価のためのガイドブックとしての要件を満たしながら)、中盤から後半にいくほど、評価者である職場マネジャー自身の部下指導のあり方や、職場マネジメント全般に対するセルフチェックを促すものとなっているわけですが、確かにそれらは、評価テクニック以上に重要なことなのだろうなあと思わされました。

 全体を通して分かり易い言葉で書かれており、評価シーズンを前に、職場マネジャーが査定のための参考書として読めば、本人の評価能力やフィードバック能力の向上に繋がるとともに、マネジャーとしての組織・部下マネジメントに対する意識も高まるという、相乗効果の期待できる本であると思います。

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評価者向きだが、考課者研修を実施する際の参考書としても"使える"本。

人事評価者の心構えと留意点.jpg 『人事評価者の心構えと留意点―現場での悩みを解消する』 (2008/04 生産性出版)

 部下をどのように「評価」すればよいのか、失敗しやすい留意点は何か、評価シートはどう記入すればよいのか、その具体例はどんなものか、どのようなフィードバックをするのが望ましいのか、その準備と方法は...etc.について、評価者の目線に立って、その心構えと留意点について纏めた本。

 一見地味な内容ですが読みにくくは無く、181ページというページ数も手頃です。
 それでいて実務に沿ったかっちりとした内容であるため、1次評価者や2次評価者である現場の部・課長が読んで得るものは多いかと思います。
 また更に、(表題のテーマの範囲内で言えば)人事担当者のテキストとしても過不足の無い内容にのように思いました。

 人事評価の概要、人事評価者の心構え、人事評価者の留意点、フィードバック面接と留意点のそれぞれについて、各章ごとにきめ細かくステップを踏んで解説されていて、評価結果の現われ方(例えば1次評価と2次評価が乖離がしているような場合)などに対する注意点についても書かれているのが丁寧です。
 
 絶対評価を相対的に調整していくというスタンダードな考え方をベースに、考課制度策定の技法論はシンプルにとどめ、まさにタイトル通り、評価者の「心構え」と「留意点」に多くのページを割いています。

 そうした意味では、コンサルタントや人事担当者の立場からすれば、「考課者研修」を実施する際の参考書として"使える"本でもあります。

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シンプル・イズ・ベスト。制度コンサルティングの初学者にはうってつけのテキスト。

続・中小企業の人事制度・考課制度設計コンサルティング.jpg続・中小企業の人事制度・考課制度設計コンサルティング―制度設計の手法をすべて見せます! (アスカビジネス)』(2009/07 明日香出版社)

 '06年刊行の『中小企業の人事制度・考課制度設計コンサルティング』の続編、と言うより"改訂版"に近い内容ですが、シンプルによく纏まったテキストで(全体で約160ページ)、コンサルタントに限らず、中小企業の人事担当者でも読める内容です。

 冒頭で人事制度・考課制度の現状と問題点を解説し、以下、賃金・等級・評価制度の設計の進め方の基本をコンパクトに解説、賞与制度・退職金制度にも触れていますが、ここまでで67ページしか使っておらず、後半の約90ページは、新人事制度の実例と、就業規則及び諸規程(賃金規程・退職金規程・育児介護休業規程・旅費規程)のサンプルや届出書式集になっています。

 冒頭で職能資格制度の考え方や留意点に触れていますが、実際の制度設計の進め方に関する章(第2章「新制度設計コンサルティング)で解説されていたり、制度事例として取り上げられているものは、「職務グレード制」乃至「役割グレード制」です。

 賃金分析の手法や範囲給の設定の仕方など、制度設計コンサルティングの"手の内"を分かり易くオープンにしている姿勢に好感が持て、図表を効果的に用いているため、少ないページながらも、イメージが掴み易いものとなっています。

 考課制度も、業績評価と行動評価(又はコンピテンシー評価)の2本立てで、それぞれ評価シートのサンプルが掲げてあり、賞与については、ポイント制賞与制度の基本的なパターンを、退職金については、「中退共」や成果型退職金制度を解説しています。

 後半、規程例に多くのページを割いているのは、一見やっつけ仕事のように見えますが、実務対応の観点からすればむしろ親切であると言え、その前に、新人事制度の実例として、等級・賃金・評価などの諸制度の運用規程が掲げてあるのも丁寧。

 ある程度の経験を積んだコンサルタントにはやや物足りない面もあるかと思いますが、制度コンサルティングの初学者にはうってつけの本だと思います。

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職能主義との対比での役割主義に基づく解説。実務者の要求に応えて余りある内容。

目標管理と人事考課.jpg 『目標管理と人事考課―役割業績主義人事システムの運用』 ['07年]  役割業績主義人事システム.jpg 『役割業績主義人事システム

 タイトル通り、目標管理と人事考課がテーマの実務書ですが、全3章構成の第1章で人事制度の基本から運用形態までを解説していて、職能制度の限界を説くとともに「役割業績制度」というものを提唱しており、この部分は著者の前著『役割業績主義人事システム』('05年/生産性出版)の"復習"であるとも言えますが、前著を読んでいない読者にも分かり易い(同時に詳しい)ものとなっています。

 「役割主義」「役割等級制度」と一般にと呼ばれる人事・等級制度に基づく目標管理の在り方や人事考課の実際について書かれた本としては最も明解かつ精緻に書かれたものであるばかりでなく、他の社員格付け制度をベースに書かれたものを含めても最上位の内容レベルであるように思われました。

 とりわけ第2章の「目標管理」に関しては、その本質、目標設定のポイント、目標達成度の把握と評価のポイント、目標管理の推進の実際、運用の実際といった順で丁寧に解説されていて、例えば、「職種による目標設定のポイント」として、営業職、生産職、調達職から研究開発職、企画管理職、一般事務スタッフまで6つの職種に分けて、それぞれにおいて効果的だと考えられる目標管理のポイントを多く掲げ、人事部を常に悩ます間接部門の目標管理と人事考課の問題に対する解決への選択肢乃至はヒントを示しています。

 第3章の「人事考課」についても、まずその本質論を分かり易く丁寧に解説し、その上で実際論に入っていて、フィードバックのポイント解説も丁寧です。
 考課表のサンプルをずらずら並べるような類書とは異なり、どこを見るのか、何を見るのか、何で見るのか、どう見るのかということが、ひとつひとつ言葉と概念図でもってきっちり解説されています。

 全体を通して、例えば職能主義と役割主義の考課体系の違いを図に示すなど、役割主義に対する理解を促すために職能主義を引き合いにし、まず職能主義だとどうなるか、それが役割主義だとこうなるかといったパターンでの解説の仕方が多くされているため、「役割(業績)主義」というものの本質を目標管理や人事考課の在り方から再確認できる本でもあり、その意味では実務者の要求に応えて余りある内容と言えるかも。

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目標管理制度も、最後は「上司力」に依るところが大きいということなのかもしれない。

できる上司の「面談力.jpg  『できる上司の「面談力!」』 (2006/02 すばる舎)

業績評価.jpg 「目標管理制度」を「制度」としてだけ導入しても、設定された目標の内容やレベル、評価のあり方等についてスタッフの充分な理解が得られていなければ、運用に際して支障をきたすというのはよく言われることです。
 
 本書は、部下に対し行う1対1面談について書かれていて、ここで想定している「面談」とは、そうした「目標管理」に関わる面談(目標設定面談、進捗状況の確認面談、評価のフィードバック面談)のほかに「キャリア」面談が含まれています。
 そして、面談においていきなり本論に入るのではなく、導入においての投げかけを工夫し、また面談目的を明らかにすること、さらに本論においては、会社の方針や現状を理解させ、部下の本音を聞きだすことなどが大事であるとしています。

 目標設定面談において大切なのは部下の「納得感」であるとしており、目標の根拠(会社の経営状況・基本方針)を示し、達成の必然性(部下への期待・目標数値・副次成果)、活動計画(概要の把握・活動内容の明確化・結果イメージ)を理解させよと。

 著者はベテランの教育・キャリアコンサルタントで、書かれていることはオーソドックス、事例も含め全体にごく簡潔にまとまっており、さらさら読める分物足りなさもありますが、忙しい中間管理職が手引きとして読むには手頃かもしれません。
 本書にある「部下の話を聴く」姿勢というのもつい忘れがちですし、間接・支援部門においては「数値化しにくい目標」をどう明確化するかということも重要なことだと思います。

 ただし、〈キャリア〉面談ということになると、日常の相互の意思疎通の度合いもうまくいく・いかないを別ける要因となるのではないでしょうか(個人的には、直属上司が行うのが必ずしも良いとは思わない)。
 いきなりストレスを抱えていないかなどと訊かれても、答えるスタッフもいれば何も言わないスタッフもいるでしょう。。

 「目標管理制度」が、最後は「上司力」「面談力」に依るところ大なるものがあるというのは、避けられないことかも知れないと思いました。

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さまざまな業種の考課フォーマットの事例が掲載。参考例として使えるものもあるかも。

社員の業績評価を正しく行なう手順.jpg 『新版 社員の業績評価を正しく行なう手順』 (2003/10 中経出版)

  〈業績評価〉と言うよりも〈人事考課〉制度全般について、考え方から運用上のポイント、制度の組み立て方や、評価表の作成と記載手順、考課者としての注意点などがオーソドックスにまとめられれています

2791489497.jpg 人事考課は(1)業績考課、(2)意欲・態度考課、(3)能力考課の3つから成るとし、ベースになっているのが職能資格制度であるようなので、後半では業績重視へ転換とその方法を説くものの、全体的にはトラディッショナルな考え方に基づく解説書という印象でした。
 出版は'03年ですが、'96年に出たものの改訂版であることが影響しているのかもしれません(依然、縦組みだし...)。
 
 コンピテンシー評価についても最終章で触れてはいますが、評価よりも教育に活用しようという考え方です。
 しかし、これはこれで今でも1つの考え方として通用するかと思います。
 自分自身も、コンピテンシー評価を導入したところ、業績評価でのマイナスをカバーし、全体評点を上方修正するために使われてしまったというような例をみたことがあり、評価として用いる場合、難しい面もあることを感じたことがあります。

 本書にはさまざまな業種の考課フォーマットの事例が掲載されていて、場合によってはすぐにでも参考例として使えるもののあるかと思います。
 実務者が考課フォーマットを新たに作成しなければならない状況になった場合、これらの中に自社に適合するタイプ(或いは近いタイプ)を見つけることができるかもしれません(自分の場合がそうでした)。

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目標管理の本質を理論的に解説。制度導入の際の心構えの書としても読める。

目標管理2.jpg 『新版 目標管理の本質―個人の充足感と組織の成果を高める』 (2003/04 ダイヤモンド社)

 目標管理について書かれた実務書といえば、まず目標管理とは何かという話が序章にあって、導入方法やシートの作成方法などが述べられていたりするのですが、本書は、その「目標管理とは何か」ということにほぼ丸々1冊費やしており、そうした意味では、タイトルに沿った理論書です。
 内容の堅さはありますが、成果主義に対する批判のなかで目標管理こそ元凶ではないかという声もある中、今一度その本質を理解しておくことは意味があるのではないかと思われます。

 本書で言う目標管理は、ドラッカーの提唱したMBO(Management By Objectives And Self-Control)の考え方に準拠していて、著者は彼の経営思想に沿って企業の目的や社会的責任とは何かということから説き起こし、企業は「共生の価値観」に基づく人間集団であって、マネジメントとは「人と仕事を結びつけること」であると。
 ならば、MBOとは「チャレンジ目標」を手がかりとしたマネジメントであり、そのことを前提に、By Objectives の意味は何か、And Self-Control をどう解釈するかなどを述べています。

 本書の中核は、「チャレンジ目標」と「セルフ・コントロール」こそ「MBOの基本原理」であることを述べた第6章ではないかと思いますが、そこで著者は、「チャレンジ目標」を設定することの意義を説き、それがノルマ管理と同じにならないようにするには「セルフ・コントロール」されていることが条件であると。
 「セルフ・コントロール」には内発的動機づけが必要であるとし、そのためのアプローチとして、自己実現欲求の喚起、責任感の醸成、チャレンジ目標の納得設定をあげています。

 著者はそのためのコミュニケーション・コストの増大は覚悟せよ!と言っていますが、個人的にも、このあたり(とりわけ目標設置の「納得性」)がMBOの成否を決めるのではないかと思われ、最終的には著者の言うように、人間関係を円滑化するコミュニケーションがベースになければならず、「聴く姿勢」を持つことなどを通しコミュニケーション・ギャップを解消していくことで、問題解決型コミュニケーションが促進されていくということだと思いました。
 システムだけ作って「はい、終わり」ではダメで、結局は個々の人間同士の関係性の問題に行き着くのだなあと改めて思いました。

 目標管理というものの基本を押さえるほかに、導入する際の心構えとしても読め、巻末近くでは、MBOと経営戦略の結合、人事評価との関連についても述べられていて、経営・人事戦略におけるMBOの位置づけを再認識するうえでも参考になります。

《読書MEMO》
●「By Objectives」...目標による管理→「チャレンジ目標」を手がかりとしたマネジメント(24p)
●他律統制マネジメント、「人間関係論」の限界→MBO「And Self-Control」
●専門知識活用型マネジメントの押さえどころ→セルフ・コントロールによる「専門能力の開発」、「アメとムチ」に代わる「内なる力」による動機づけ(43p)
●「自己実現欲求の喚起」によるセルフ・コントロール(83p)...ドラッカーはの「Ⅹ理論・Y理論」批判(「Y理論」は楽観的過ぎるとドラッカーは批判)。著者「Y理論の弱点を克服し、Y理論によるマネジメントを機能させることは可能」(93p)
●「チャレンジ目標の納得設定」によるセルフ・コントロール(104p)...目標の「意味づけ」と「見通しづけ」による納得、「上位計画の共感的理解」による納得、「目標達成の見通しづけ」による納得

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豊富なサンプルは、目標管理シート作成の参考になる。

目標管理.jpg目標管理の考え方・進め方・強め方―業績アップと適切な人事考課の実現!』 〔'03年〕

 本書の冒頭で、目標管理とは何かについて触れられていますが、ピーター・ドラッカーが開発したマネジメントとしての目標管理(MBO)は、「目標を管理する」と言うよりは、「目標により管理する」ということであり、「目標による経営」という意味合いのものであることがわかります。  
 
目標.jpg 著者によれば、多くの企業で導入されている目標管理には、実質的に2つの側面があり、1つ目は「人事考課に連動させ、賃金や賞与といった処遇面での評価の手段として取り入れる」、すなわち「人事考課制度のサブシステムとしての側面」と、もう1つは「会社と働く社員の成長発展に向けて望ましい目標を設定し、達成に向けて進捗管理し、評価の時点では次の成長発展に向けてのさらなる目標に結びつける」、いわゆる「経営管理システムの側面」です。
 
 どちらが欠けても目標管理は成立しないわけで、こうした前提を常に意識しておかなければ、例えば経営トップの目標と社員の目標に、その方向性においてズレが生じるといったことが起こるのだろうと思います。
 
 本文は「理論編」、「導入編」、「推進編」、「運用強化」から成りますが、「推進編」を中心に、目的別の目標管理シートのパターン例が、記入要領と併せて豊富にとりあげられています。
 実務担当者が目標管理シートを作成・改定する際の参考になるかと思います(ただしコピーしてそのままは使うことはできません)。

 こうしたシートのサンプル集は(本書掲載のものはパターン例であって実際の使用例ではないが)、経済団体などからも出版されていますが、価格的にはずっと割高であるため、個人で手元にそうした事例集があれば便利だろうなあと思われる人には、手頃な1冊だと思います。

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評価される側にすれば、この本で"勝つ"のは難しい?

人事評価に勝つ 新書.gif 『"人事評価"に勝つ!』 宝島社新書 〔'02年〕

人事評価に勝つ.bmp 著者は目標管理・人事考課の専門家であり、本書では人事評価に派生する様々な問題を具体的にとり上げていますが、これは企業で人事評価に携わる人が、自分自身が留意すべき事柄をチェックする用にも使えると思いますし、人事部サイドで考課者訓練を実施する際の参考書としても使えると思います。
 事実、本書は著者が実施した考課者訓練(考課者研修)を素材にした事例が多いようです。

 でも、ここで1つ一般読者の立場で疑問に思うのは、考課者研修に参加するのは主にマネージャーはないかということです。
 マネージャーにとっての「紙上考課者訓練」的意味合いは本書にはあるかと思いますが、評価される側の一般社員にとっては、「ウチの会社の管理職にも、これぐらいキチンと考課者研修を受けさせてくれよ」という感想に止まるかも。

 事実、実際に評価される側の一般社員がとることが出来る対応策として本書にあるのは、
  「上司との充分な話し合いを」
  「自らの働きぶりをPRせよ」
  「人事部門に見直しを提案しては」
  「自分を腐らせず仕事に取り組む」
 といった類のものが多くなっています。
 こうしたアドバイスだけで"勝て"と言われても...。
 
 会社や上司の行う人事考課に"勝つ!"つもりで本書を買った人には、ややフラストレーションの残る内容だったかも知れません。

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