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モチベーション・タイプ別の自律的人材になるための処方箋を示す。
『自律的人材になるためのキャリア・マネジメントの極意』(2009/09 ナカニシヤ出版)
先行き不透明な経済・経営環境のもと、企業にとってこれからは自律的人材が求められるとは、昨今よく言われることですが、本書では、自律的人材とはどのような人材なのか、自律的人材とモチベーションはどのような関係にあるのかを示したうえで、個人のモチベーションのタイプ別に、自らやる気を高める方策をまとめています。
本書によれば、自律的人材とは、「自分が何をすべきかの方向を定め、他者から指示・コントロールされなくても、責任感をもって主体的に物事を進めていく人材」であり、モチベーションの効果が比較的短期間であるのに対し、自律意識(自律的人材であろうとする意識)は一定期間持続するとしています。
そのうえで、モチベーションをタイプ分けするために、まず「やる気のエンジン」がどこにあるか、つまり、内発的動機づけによるもの(目的的)か外発的動機づけによるもの(手段的)かで区分し、それぞれに、自己決定が可能な自律的ケースと、他からの支援など関係性に依存する他律的ケースがあるとしています。
この区分に沿って、モチベーション・タイプを「目的的‐手段的」と「自律的‐他律的」の2軸に分け、内発的動機づけによるものは自律的‐他律的を問わず「内発的モチベーション」(目的的)として1つのタイプとし、外発的動機づけによるもののうち、自律的なものを「役割自発型モチベーション」、他律的なものを「外発的モチベーション」とし、これに、まだ動機づけられていない「アパシー状態」を加えた4つのタイプを規定したうえで、各タイプごとに章分けして、自律的人材になるための最適方法を教唆しています。
心理学の考え方が各章に織り込まれていますが、例えば「内発的モチベーション・タイプ」ではキャリア・マネジメントの方法論そのものがに書かれているのに対し、「役割自発型モチベーション・タイプ」においては、「自己追究型アプローチでキャリアをマネジメントする」といった具合にアイデンティティの追究にウェイトが置かれています。
「外発的モチベーション」では「有能感を貯める」「行為の主体になる」といったことが、さらに「アパシー状態」においては、「できない気持ちを学ばない」などとなっていて、このように、タイプごとに"処方箋"レベルが明確に区分されているのが興味深かったです。
個人においても仕事や課題の違いによって異なるタイプの状態になるであろうし、部下を使う側に立てば、部下1人1人は違ったタイプに分けられるかもしれませんが、このタイプ区分を前提に、部下ごとに「やる気の引き出し方」が違ってくることを意識してみるのもいいのではないか、そうした意識を持つことが、人材マネジメント・スキルの向上にも繋がるのではないかと思いました。
モチベーションのタイプ分け自体が1つの仮説であるともとれますが、むしろ、概念整理の方法および心理学をベースとした方法論と読み手との相性によって、この本の評価は分かれるかも知れません(ハマる人はハマる)。
言えることは、ただただ"自律的人材たれ"と連呼するだけでなく、1つの仮説からスタートしてでも、より多くの社員が自律的人材となるべく方向付けをしていくことが、仕事に対する価値観や関わり方の違いという"目に見えない"ダイバーシティをマネジメントしていくうえでの、管理職や人事担当者のこれからの課題ではないかと思いました。







原口 佳典 氏(コーチングバンク代表/略歴下記)
事例やエピソードも豊富で、最終状態を「想像する/想像させる」ことが目標達成を早めることになることをゴルフを例とし、殆どのゴルファーが良いバックスウィング、良いダウンスウィングをすれば良いショットができると考えるのに対し、タイガー・ウッズは、どういうインパクトをすれば良いかから考え始めるといい、彼の父親のアール・ウッズは、息子にゴルフを教えるに際して、ドライバーから練習を始めるのが通常であるのに対し、「ゴール」であるパットから練習させたとのこと。ゴルフの目的はカップにボールを沈めることであり、上手にスウィングすることではないからであると。
「メンタリング」について書かれた本の中には、リーダーシップ論やコーチングの技法論とまったく同じになってしまっているものも散見し、「高成果型人材を育成する」といった、短期間でパフォーマンスの向上を求めることが直接目的であるかのような書かれ方をしているものもあります。



本書の興味深い特徴の1つは、上司や部下といった年功序列的な階級意識の強い言葉を使うのをできるだけ避けているということです。
パフォーマンス・コーチング及びメンタリングについての理解を(理論上)深める上で、よく整理された本だと思います。

菅原 裕子 氏 (ワイズコミュニケーション代表取締役)
こうした前提を踏まえたうえで、実践的な事例を挙げつつ、ミラーリング、ベーシング、バックトラッキングといった"技術"論に入る姿勢には好感が持てました。
コーチングの人間観は、相手をまず「能力を有する存在であると捉える」ということだと著者は述べていますが、カウンセリングとの共通点を感じました(カウンセリングの立場では、コーチングは「職場」への適応を通して個人の発達を支援するものという捉え方をし、一方カウンセリングの場合は、個人の発達を通して、仕事や職場への適応を促進するとされているのですが)。