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マトモだけどインパクトが弱い就活本。「就職協定」守れないからと廃止したのはどうだったか。

もうダメだと思ったときから始まる「就活」大逆転術.jpg                                 就職とは何か 森岡孝二.jpg
戸山 孝『もうダメだと思ったときから始まる「就活」大逆転術 (青春新書プレイブックス)』 森岡 孝二『就職とは何か――〈まともな働き方〉の条件 (岩波新書)

 学生向けの「就活」ハウツー本にはかなりヒドい内容のものもあり、特に比較的若手の就職コンサルタントとか就職ジャーナリストが書いたものの中には、心情的に学生に近い立場をとろうとしているのか、"ブラック企業"のことを面白おかしく露悪的に書いたりして、却って学生を不安や疑心暗鬼に陥れるのではないかと思われるものもあったりします。

 そうした本に比べると、実際に大学のキャリアセンターで相談業務を行っているベテラン・キャリアカウンセラーによる本書は、比較的まともな方かもしれません。「就活をマネジメントする」といった考え方はいかにもコンサルティングファーム出身者らしいけれど、全体としては、テクニカルなことより、心理面での啓発的な事柄にウェイトが置かれているように思いました。

 不採用通知、所謂"お祈りメール"を貰い続けても、落ち込んだ気分にならないように、「次いこう、次!」とか気分回復のパスワードを決めておく、或いは、イチローを尊敬している人はイチローの写真を携帯するようにして、常に憧れの人だったらどう就活するかを考える、などといったアドバイスは、なるほどなあと。

 但し、「勝負ネクタイ」を数本決めておくとか、だんだんお呪いみたいになってきて、そのうち読み終ってしまい、インパクトとしては弱かったかも(「就活」本の中では相対的にはまあまあだけど、絶対評価的にみると物足りない)。

 この本、どうせ読むなら、就活を始める前に読むべきで、「もうダメだと思ったとき」に読んでも遅いような気もしますが、この「もうダメだと思ったとき」というのはいつ頃になるのだろうなあ。


森岡孝二氏.jpg 本書冒頭に、2013年度卒の就職活動は、例年より2ヵ月遅い昨年12月にスタートとなり、これは、早まりすぎた大学生たちの就活が学業の妨げになっている、と経団連が考えたためだが、当然それは就活の"短期決戦化"を招くことになった―とありますが、この辺りの過去からの経緯は、労働経済学者・森岡孝二氏の近著『就職とは何か―〈まともな働き方〉の条件』('11年/岩波新書)に詳しく書かれています。

 森岡氏の本は、主に学生に向けて書かれた本ですが、「就活」ハウツー本ではなく、なぜこうした厳しい就職環境になったのかを分析するとともに、就職後にどのような状況が学生を待ち受けているか解説し、更に、サブタイルにあるように、〈まともな働き方〉の条件を賃金、労働時間、雇用、社会保障を柱に整理し、過重労働に代表される労働現場の諸問題を通して、なぜ〈まともな働き方〉ができないのかを考察した良書。

 採用する側からみても考えさせられる面が多々ある本でしたが、「就活」スケジュールについて書かれた部分だけ見ると、かつての「就職協定」に代わる日本経団連の「倫理憲章」で、3年生の12月から広報活動開始となっていても、これは自粛規定に過ぎず、多くの会員企業(主に大企業)が3年10月からエントリーシートを受付け、12月から1月にかけて面接選考、3月から4月に「内々定」を出すというスケジュールであるため、4年生の4月までに内定を貰えなければ、5月には殆どの企業が内定通知を終了してしまっているというのが、現在の状況のようです(そこからまた、中堅・中小企業を中心とした長い第2ラウンドが始まるのだが)。

 「就職協定」が結ばれた頃からの経緯を同書で見ると、'52年に「採用選考は4年生の1月以降」実施という文部省・労働省通達があり、しかしこれは守られず、'53年には大学団体と日経連などの産業界代表とで「採用選考は4年生の10月中旬から1ヵ月くらい」とすることを取り決め、これが所謂「就職協定」の始まり。'57年には事務系は「推薦は10月1日以降、試験は10月10日以降」とされましたが、これも守られず、60年代初めには既に、大企業は7月末までに殆ど採用活動を終えている状況だったそうです。

 「就職協定」には文部省・労働省が加わったり離脱したり、或いは日経連も一時離脱していますが、'76年に改めて「10月1日会社訪問解禁、11月1日入社試験解禁」とする協定が結ばれました。但し、これも"形式"に過ぎず、'86年には「8月20日会社訪問解禁、11月1日採用内定解禁」に変更されましたが、バブル期には、5月の連休明けには多くの企業で会社説明会をやっていたのが現実。

 '89年には「8月20日会社訪問解禁、10月1日採用内定解禁」、'91年には「8月1日会社訪問解禁、10月1日採用内定解禁」と変更されたものの、公然と協定は破られ続け、'97年に日経連の判断で「就職協定」そのものが廃止されたとのことです。

 代わりに出来たのが「倫理憲章」で、ところが「憲章」で3年生の12月から広報活動開始と定めても、エントリーシートなどの提出に制限を設けていなかったため、3年の10月からエントリーシートを受け付け、3年の3月から4年の4月にかけて「内々定」(実質「内定」)を出すというのが常態化していたのがこの何年もの傾向で、それを今回、実質的なスタートを2ヵ月遅らせたということ(但し、内定を出す時期は変わらないので、第1ラウンドは"短期決戦"となる)。

 今回のように「学生向けの広報活動を3年の12月1日以降に開始」「実質的な選考活動については4年の4月1日以降に開始」と制限しても、森岡氏が指摘するように、インターネット等を通した不特定多数向けの情報発信は制限されていないのは、実質"ザル"であるし、現実にも、フェイスブック等でどんどん選抜して、あとは「内々定」という言葉で学生を押さえてしまうというのが当たり前のように行われているというのが実態であると思われます。

 「倫理憲章」は"自粛規制"だから弱いわけで、「就職協定」を守れないからと言って廃止にしてしまったのはどうだったかなあ。

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ジャンル的に著者の専門外。就活中の学生が、こんな経歴の人の話を聴くかなあ。

面接ではウソをつけ.jpg面接ではウソをつけ (星海社新書)』['11年]29歳でクビになる人、残る人.bmp 『29歳でクビになる人、残る人 (PHP新書)』['10年]

  「一流大生」「コミュニケーション能力抜群」「凄い経験の持ち主」といった"就活強者"ではなく、「二流大生」「内気・ねくら・コミュ力ゼロ」「サークルとアルバイト以外、何もしてこなかった」といった"就活弱者"が、面接をクリアし、内定を勝ち取るにはどうしたらよいかを伝えたかったというのが本書の趣旨であるようです。

 著者は「営業コンサルタント」とのことで、以前、この人の『29歳でクビになる人、残る人』('10年/PHP新書)を読みましたが、個人的にはあまり得るものは無かった...。最近は、『人は上司になるとバカになる』('11年8月/光文社新書)、『誰も教えてくれないセールスの教科書』('11年9月/ぱる出版)、『トップ営業マンになる!身近なツール65の活用術』('11年9月/実務教育出版)など、かなりのペースで本を書いていますが、この本に関しては、ジャンル的にはやはり著者の"専門"外ではなかったかと...。

 著者自身もそう思っていたらしいですが、編集者から「営業コンサルタントだからこそ語れる面接の本を作りたい」と言われ、また企画を進めるうちに「営業」と「面接」には共通点が多くあることに気付いて、こうした本を著したとのことですが、結局、言っていることは、自分をいかによく見せるか、相手にまた会ってみたいと思わせるかのコツを説いたものであり、ほとんど「営業本」の世界だなあと。

 別に「面接でウソをつけ」と言っているわけではなく、「上手に演技せよ」と言っているわけで、これではインパクトが弱いと思ったのか、編集者がこういうキャッチーなタイトルにしたのだろうなあ。

 それ合わせて前書きでも「ウソのつき方をお教えします」的なことを言ってはいますが、本篇ではそうした言い方をしている箇所はどこにもなく、むしろ、「心で思っていることは簡単に見透かされる」とあり、これが実際のところではないでしょうか(その意味でマトモだが、タイトルずれしているとも言える)。

 具体的な事例が全てセールストークであり、しかも、著者自身が経験した住宅販売会社の営業マンのそれであって、自分の体験を基に書いているのは正直だけれど、それを強引に採用面接の場面に敷衍化したのは、やはり無理があったように思います。

 著者自身、住宅販売会社に入社して7年間は泣かず飛ばずだったそうですが、そもそも住宅販売や訪問販売の業界というのは、とりあえず許す限りヒトを採用して、後は辞める者は辞めるし、残る者は続けられる範囲で残る―といった業界ではないかと。

 就活中の学生が、こんな経歴の人の話を聴くかなあ。

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企業の採用担当者の間で話題の大学。国際教養人を育てるための取り組みが徹底している。

なぜ、国際教養大学で人材は育つのか.jpg   なぜ、国際教養大学で人材は育つのか 図書館.jpg 国際教養大学の365日24時間開館の図書館
なぜ、国際教養大学で人材は育つのか (祥伝社黄金文庫)

 この就職氷河期と言われる時代において、新進ながらも"就職率100%"の大学として、企業の採用担当者や大学の就職関係者の間で最近話題となっている国際教育大学(AIU)は、'04年春に日本初の公立大学法人として、秋田市(当時は秋田県雄和町)に開学した学校ですが、本書はそのAIUについて、学長自身が歴史や理念、取り組みを紹介したもの。

 本書で紹介されているAIUの特徴としては、●国際教養という新しい教学理念、●全授業を英語で行なう徹底した少人数教育(学生対教員数は15:1)、●必須の海外留学(1年間)、●厳しい卒業要件、●365日24時間開館の図書館などが挙げられます。

 秋田県が東京外国語大学の元学長を引っ張って来て、「あなたの思うような学校作りをしてください」と言って出来たのがこの大学であるわけで、学長自らが語っているため、やや「宣伝本」のキライもありますが、併せて、高等教育に関する問題意識や提言が随所にあり、これはこれでいいのでは。

 それにしてもスゴイね。入試偏差値は東大・京大レベルで、入学した1年生は外国人留学生と相部屋の寮生活、海外留学は卒業の要件ですが、英語力が一定レベル(TOEFL550点以上)にならないと留学出来ず、その他にも卒業のための厳しい要件があって、4年間で卒業できた学生は51.2%(2009年度)と全体の約半数であったとのこと。

 この就職難の時代に、企業の方から秋田の地を訪れて、企業ガイダンスをやるというからますますスゴイなあと思いますが、考えてみれば、これだけ市場がグローバル化した時代に、企業が(不足している)グローバル人材の獲得・育成に注力するのは当然と言えば当然、日立製作所などのように、「文系は全員グローバル要員」と言い切る企業もあります。

 著者自身、「世界を相手にする企業における、社内の英語公用化は望ましい」と言っているぐらいですが、英語力をつけさせるだけでなく、人口学、比較文化学など多様な人文学・社会科学系の学問に加えて、物理や生物などの自然科学系科目、また華道や茶道など、日本の伝統芸能も学ぶことができるとのことで、但し、あまり入試が難しくなり過ぎると、結局、上智大学の国際教養学部の最初の頃のように帰国子女ばかりにならないかなあ(上智の同学部は、現在は帰国子女の定員枠が設けられている)。

 4年間でストレートに卒業する学生が50%というのは、ハーバードでもその割合は50%程度というから、そうした世界のトップ大学を見据えているのだろうし、大学教員の教育実績を評価し、一定のレベルに到達しない教員とは再契約しないというのも、そうした海外の一流大学では行われているのかも(研究成果を上げないと再契約してもらえないというのは、海外の理科系の大学のフェローなどでは珍しいことではないが、AIUの場合、「教育」と「研究」の比重はどうなっているのだろうか)。

 就職難の時代、入試レベルが低偏差値であっても、学生の企業への就職において一定の成果を上げている大学はあり、但し、その実態は、「大学教育の専門学校化」だったりするわけで、そうした動向と比べれば、広い意味での国際教養人を育てようというAIUの取り組みは評価できるものであるかもしれず、また、その徹底ぶりには、やるならやはりここまでやらねばならないのか、という思いにさせられます(どの大学もがこのようになる必要は全く無いと思うが)。

 今のところ、企業側がAIUの学生に期待を込めて積極採用しているというだけで、それらAIU出身者のビジネスの世界での評価はこれからでしょう。
 但し、AIUのことを今まで知らなかったという企業の採用担当者は、"情報"として、一応は読んでおいていいのでは。

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就活の現況を概観するにはいいが、大学の新たな取り組みをもっと掘り下げて取材して欲しかった。

就活地獄の真相.jpg 『就活地獄の真相 (ベスト新書)

就職内定率の推移.gif 本書によれば、就職氷河期レベルと言われた2010年春の就職状況は、文部科学省の「学校基本調査」(2010年8月公表)によると、前年より5万3000人減の32万9000人と厳しいものだったが、2011年春は、より厳しい見通しにあるとあります(因みに就職率で言うと、本書には無いが、2011年春の最終数値は61.6%で、前年最終の数字との比較で0.8ポイント上昇したものの、ほぼ横ばいだったとみていいか)。

 また、厚生労働省の「就職内定状況調査」(年4回、10月、12月、2月、4月に調査)では、2011年春の内定状況は、2010年10月1日時点で57.6%と「氷河期」を下回る過去最悪となっているとあります(因みに、2011年4月の最終内定率は91.0%で、こちらは最終数値も過去最低だった)。

 大学ジャーナリストである著者は、その原因を、単にリーマン・ショック後の不況による求人減少のせいだとして片づけることはできないとし、そこには、「就活」をめぐっての大学側、国側、採用する企業側のさまざまなウソ・ゆがめられた真実があり、それらがいびつな就活構造を作り出し、学生を疲弊させるだけでなく、結局は採用企業にも大学にとっても不利益をもたらすという悪循環を生みだしているとしています。

 例えば、文部科学省・厚生労働省の「大学卒業(予定)者の就職内定率調査(前記:厚生労働省の「就職内定状況調査」と同じ)」(2010年5月公表)によれば、「10年4月1日時点での就職率(内定率)は91.8%」となっているとマスコミも伝えましたが、マスコミを通して発表される政府の就職内定率調査や、大学が公表している就職率は、現役学生だけを対象としたものであり、しかも、内定率というのはあくまで就職希望者に占める就職決定者の割合であって、厳しい就活に耐えられず途中で就職を諦めた学生などは分母に含まれていないそうです(2011年の「過去最低の数字」が、前述の通り「91.0%」だったというのは、確かに実感とずれているが、要因はここにある)。
 
 また、大学によっては、自大学が出資して派遣会社を設立し、就職が決まらない学生をとりあえずそこへ押し込むことによって、就職内定率の低下を表面上防ぐようなこと(水増し工作?)が行われているとのことです(個人的に知るところでは、早稲田大学なども「キャンパス」という名の100%出資の人材派遣会社を、随分以前から持っている。会社設立当初は、学内事務等の要員を、校風を知る自大学の出身者で賄おうというというのが狙いだったと思われるが)。
 
 こうした統計の"ウソ"を明らかにする一方で、企業側についても、学生に対して求める能力の評価基準が曖昧であることを、これもまた統計をもって明らかにし、その結果として、大学・学生・企業の間に相互不信が渦巻いているとしています(この「就職率」と「就職内定率」の30ポイントもの数字の開きは何とかならないものか。例えば、東京工業大学などは、大学院進学者が多いので「就職率」は落ちるが「就職内定率」は高い。そもそも、「就職内定状況」の調査対象は、国立大学を中心とする62校で、私立では、明治・青山・立教・法政などは除かれている)。
 
 また、「厳選採用」を求められながらも、理想の人材と現実の学生とのギャップに戸惑い、また、ネット・エントリーなどで母集団が拡大し、膨大な費用と労力を消費せざるを得ない、企業の採用現場の厳しい現状についても言及しています。
 結果として、大手企業などの場合、予め学校を有名校に絞る「ターゲット採用」などが行われているとのことです。

 更に、就職活動の早期化が「学生から学びの時間を奪っている」という実態が大学教育にもたらす悪影響についても述べていますが、早期化の根底には、「大学での勉強は仕事にはあまり役立たない」「日本の大学教育は米国などのように、自分の頭で考える力が身につく教育ではなく、単なる知識の習得に重点が置かれている」との考えがあるようだとしています。

 しかし一方で、著者によれば、最近では大学教育も変わりつつあり、「問題発見力、問題解決力を鍛える教育」に力を入れたり、文科省が学生が自分に合った仕事を見つけて卒業後に自立できる「就業力」の育成に取り組む大学・短大への支援を2010年から始めたのを受けて、独自の授業プログラムを実施している大学も増えているとのことです。

 そうした大学の新たな取り組みについても紹介していますが、東海大学の就職指導は「総戦力」であるという考えに基づく同窓会や保護者なども一体化した親身のサポート体制での対応、明治大学の学長主導による「就職情報懇談会」、「就職率100%」という秋田の国際教養大学(AIU)の「すべての授業を英語で行う」などの国際人を養成するという教育方針、立教大学経営学部の「BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)」による人材育成など、どれも興味深いものでした。

 企業側にも、新卒採用の早期化を見直したり、本格的なインターンシップを通して、時間をかけて能力適性を見極めるなど、新たな動きが出てきているようですが、今後もこうした取り組みが拡がっていくよう思います。

 著者は日経記者出身のベテランのジャーナリストであり、本書は「就活」の現状を把握するにはいい本ですが、現状分析がやや長過ぎて、大学の「就業力」を育成するプログラムの紹介に至るまでに紙数が尽きた感もあります。

 その分、全体を通して提案的な部分の比重が小さくなり、「大学が変われば、企業も動き、就活も変わる」というのが著者の考えなのですが、肝心の大学の取り組み状況の紹介がそれこそ新聞記事程度(コラム記事未満)のものであり、実際に現場を取材したシズル感のようなものが感じられず、詰まるところ「大学」ジャーナリストとしての著者の本領は活かされてないように思われたのが残念です。

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就活ゲームの中で形成される"即席アイデンティ"が、ミスマッチの原因との分析は興味深かったが...。

豊田 義博 『就活エリートの迷走』.jpg 『就活エリートの迷走 (ちくま新書)

 本書を読むまで「就活エリート」とは何を指すのか分からなかったのですが、本書における「就活エリート」とは、エントリーシートを綿密に作り込み、面接対策をぬかりなく講じて、まるで受験勉強に勤しむような努力をして、超優良企業へと入社していく若者のことを指していました。
 著者によれば、こうした「就活エリート」が、会社に入社してから、多くの職場で戦力外の烙印を押されているという状況が今あるとのことです。

 なぜ彼らは、肝心の社会生活のスタートで躓いてしまうのか、著者は、その原因が「就活」という画一化、パッケージ化したゲームにあるとし、このゲームの抜本的なルールを改変し、或いはゲームであることを中止しない限り、同様の犠牲者は生まれ続けると警告しています。

 著者はリクルートワークス研究所の主任研究員であり、就職活動がいかにして「就活」というゲームになったのかを、データをもとに俯瞰的に分析している箇所は、採用担当者が読んで、頷かされる部分も多いのではないでしょうか。
 そうした分析を通して、「自己分析」の流行や「エントリーシート」の普及が、就職活動の画一化、パッケージ化を促した背景要因としてあるとしています。

 就活エリートたちは、「やりたいものは何ですか?」というエントリーシートの問いが求めるままに、「自己分析・やりたいこと探し」に熱中し、就職活動という短い期間に自身のアイデンティティを確立してしまうが、そのアイデンティティは本物ではなく"即席"のアイデンティにすぎず、その際に抱いた「スター願望」や、「ゴール志向」とでもいうべき偏狭なキャリア意識が、逆に、彼らが入社後に迷走する原因となっているとの分析は、興味深いものでした。

 もう1つの原因として、「面接」重視の傾向を挙げていて、企業側が「面接」を極端に重視するあまり、その場で「自分」を作り上げてしまう就活エリートとの間で、同様の「ゲーム」が繰り返され、「面接」は形骸化し、その意義を失いつつあると。

 更には、採用コミュニケーションの在り方についても問題提起しており、新入社員の中には、企業側の巧みなPRにより、入社した会社に「恋」をしてしまっているような人が多くいるが、その分、入社後の理想と現実のギャップは大きくなり、そのことも、就活エリートたちが入社後に迷走する原因になっていると。

 前段の就職活動の変遷はデータに裏付けられており、中盤の就活の在り方と若者のメンタリティについて論じた部分も興味深く読めましたが、就活エリートたちの入社後の迷走についての実態は、城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか』('06年/光文社新書)から引用するなどに止まっていて、あまり突っ込んだ解説がなされていないのがやや不満でした。

 また、最終章では、こうした状況を打破するための「就活改革」のシナリオが示されていますが、「採用活動時期の分散化」「採用経路を多様化」「選考プロセスの多面化」といった提案の趣旨には概ね賛同できるものの(「採用活動時期の分散化」は、個人的には疑問符がつくが)、前段の分析部分に比べるとやはり具体性に乏しいように思われ、「分析に優れ、提案に弱い」というのは、研究所系の本に共通して見られる傾向なのかも。

 むしろ、読んでいてずっと気になったのは、リクルートグループこそ、こうした就職活動の画一化、パッケージ化を促した就職関連企業の筆頭ではなかったかと思われることで、適性試験「SPI」や就職情報サイト「リクナビ」でどれだけ利益を上げたのかは知りませんが、例えば「インターネット就活」の促進というのも、著者は学生に広く機会を与えるものとしているようですが、結果として就職活動の画一化に「寄与」してしまっているのではないかと。

 そうした想いは、本書を読む採用担当者の多くが抱くであろうことは想像に難くないところですが、本書では、学生ばかりが悪いのではなく、企業側もこれからの採用活動の在り方を見直さなければならないというスタンスをとりながら、自らが行ってきたことに関しては、「あとがき」で、「私にも就活エリートの迷走を生みだした責任の一端はあると思っている」との個人的感想一言で片付けられてしまっているのは、こりゃあんまりだという気がしなくもありませんでした。

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学生にとっての良書は、企業の採用担当者にとっても参考になることがある。

人事のプロは学生のどこを見ているか.jpg                               就活のしきたり2.jpg
人事のプロは学生のどこを見ているか (PHPビジネス新書)』(2010/10)/『就活のしきたり (PHP新書)』(2010/10)

 同時期に読んだ『就活のしきたり―踊らされる学生、ふりまわされる企業』(2010/10 PHP新書)は、「PHP新書」の品格を疑うようなレベルであり、学生にとっても企業の採用担当者にも役に立たない本のように思いましたが、版元が同じでありながらも本書の方はマトモであり、蹴活本が大流行りのご時世ですが、学生にとっての良書は、企業の採用担当者にとっても参考になることがあると思わせるものでした。

 そんな言い方をすると、マニュアル化された学生の「傾向と対策」を、面接場面においてどう突き崩すかが分かる本ともとれそうですが、本書はそうした小手先の戦術的なレベルの本ではなく、書店に溢れているマニュアル的な蹴活本とは一線を画し、但し、マニュアル本を全否定するわけではなく、より深い意味において、会社側は学生のどこを見ようとしているのかを、経験的且つ体系的に探ったものとなっているように思いました。

 まず典型的な採用のプロセスを概観したうえで、会社側の意図や重視する部分を説明し、更に、「コミュニケーション力」とは何か、「行動力」とは何かについて掘り下げて解説されています。

集団面接.bmp グループ討議で重要なのは「それらしい結論に導くことよりも、自分の意見をきちんと出して議論すること」、最終面接で重視されるのは、「能力的なことよりも、本気でこの会社に来てくれるかどうか」といった太字で書かれている部分は、人事部の担当者にとってはある程度分かっていることかも知れませんが、現場の面接担当者や役員に関してどれぐらい共有されているでしょうか。

 「面接官も間違いを犯す」という前提のもとに、考課者研修などではお馴染みの「ハロー効果」や「対比誤差」といったものが、面接場面でどのように現れるかが分かり易く具体例で示してあり、「ああ、こんなこと、今までの面接でもあったなあ」とか「これ、面接担当者の指導要領として使えるなあ」などと、密かに思ってしまいました。

 「企業分析」をする際に、バリューチェーン分析でその会社の仕事の流れを理解せよと説いているのも、一般の蹴活本などにあまり書かれていないことではないでしょうか。
 
 学生からすれば、本書を読んでテクニックを学ぶのではなく、そこから、より深い企業研究を自らの努力でしていかなければならないということですが、表面的な企業情報の検索に終始し、そうした受身的ではない、自分の頭で考える企業研究というのがあまりなされていないのが、現在における「蹴活」の状況であり、そのことが、学生側から見れば「自分らしさ」を出せず、企業側からすれば「本当の姿が見えてこない」という結果を生みだしているようにも思います。

 後半では、学生に向けて「働きたい会社の見つけ方」を説いていますが、外資系企業、非上場企業、ファミリービジネス(同族)企業などの幅広い範囲にわたって、その特徴やコーポレートカラーを的確・簡潔に示しつつも、最後は、会社の方針と自分の価値観が一致することが大切であると説いているのもいいです。

 全体を通してとりたてて奇抜なことや目新しいことが書かれているわけではありませんが、企業側にとっても、本書に書かれていることに照らした場合、自社における新卒採用の選考や面接の在り方はどうかを確認するうえで、一読の価値はあったように思います。

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学生にとってほとんど参考にならないのでは。「呑み屋のネタ話」のレベル内容。

就活のしきたり2.jpg 『就活のしきたり (PHP新書)』 就活のバカヤロー.jpg 大沢 仁/石渡 嶺司『就活のバカヤロー

 著者は『最高学府はバカだらけ』('07年/光文社新書)などの著書のある"大学ジャーナリスト"ということで、最近では『就活のバカヤロー』('08年/光文社新書)、『ヤバイ就活!』('09年/PHP研究所)(何れも共著)、『就活のバカタレ!』('10年/PHP研究所)などといった「蹴活」に関する本も書いています。

 本書は「蹴活」をする学生に向けて書かれたものであって、学生にとっての良書は、企業の採用担当者にとっても参考になることがあったりしますが、この本は、学生にも企業の採用担当者にも参考にならないように思いました。

 各見開きの左側に「ブラックしきたり」と題した「アヤシイ蹴活のウワサ」が書かれていて、そのウソを暴くような体裁がとられていますが、そもそもここに書かれている「奇抜なほうが受かりやすい」、「大声を出せば内定がもらえる」、「マスコミの試験には特殊な訓練が必要」、「アルバイト経験は長いほうがいい」、「一人暮らしの女性は不利」といったようなことを信じて、不安に思っている学生がいるのだろうか。

 いわんや企業側をや、であり、採用担当者や面接官で今時こんな偏見を持っている人がいれば、"絶滅危惧種"的存在かも。

「パンチラをしたら内定がもらえる?」や「お酒が好きだと就活に強い?」となると、もう、呑み屋における(「サラリーマン」でなくて「蹴活仲間」が1日の"活動"を終えて集った際の?)ネタ話か、或いはそれにもならないレベルではないかと思ってしまいます。

 敢えて星1つとしなかったのは、著者が蹴活の実態をよく知り、一応はまともに答えていると思われる箇所も所々にはあったためで、最初からエンタメ的な効果を意図しての味付けが施されているということなのでしょう。

 著者自身、「あくまでも箸休め、一服の清涼剤として読んでいただければ。生まじめな方は読み飛ばしていただいたほうが精神衛生上よろしいかもしれません」と冒頭に書いてはいますが、一応はエスタブリシュメントとされる「新書」に収まっているわけだし...。

 尤も「PHP新書」について言えば、元々"玉石混交"が激しいレーベルではありますが、それにしても、ちょっとねえ。

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コンセプトがしっかりしていて、実務面のフォローもされているのが良い。

中途採用の新ルール.jpg 『1人採るごとに会社が伸びる! 中途採用の新ルール』(2010/10 すばる舎)

 採用に関する本が最近また何冊か刊行され始めていますが、本書のように中途採用に的を絞ったものは、今のところそれほど多くありません。これは、中途採用は各社の事情によって様々なやり方があり、これというモデルを規定できないという考え方がどこかにあるからではないでしょうか。
 しかし、採用コンサルタントが中途採用の方法論を説いた本書を読んで、やはり中途採用にもベースとなる戦略やノウハウはあるのだと思いました。

 著者は、人材獲得競争の激しいIT業界の中のある企業で採用に携わってきた経験の持ち主ですが、「待ち」の採用ではなく「攻め」の採用を行うことで、採用を軸として会社を一気に伸ばすことを提唱しています。
 そのための方法論として、例えば、優秀な人材が多いと思われる「非転職希望者」層をいかにして取り込むかという課題を、採用活動を「リクルーティング」(募集)と「ハイヤリング」(雇用)を分けて考えることから説いています。

 つまり、常日頃において人材情報をストックしておくことが大切であり、その上で、実際の採用段階においてはスピードとタイミングが重要であるとし、さらに具体的な方法論を説いています。
 その中には、「選んでやろう」「見てやろう」とせず、「トップが "三顧の礼"で駆けつける」「30分の面談のために採用担当者が出向く」といった啓発的な内容も含まれますが、先に戦略的なコンセプトを示し、そのうえで具体的な対応にまで落とし込んでいるため、採用担当者が読んで、たいへんしっくりくる内容となっているのではないでしょうか。
 
 とりわけ、欲しい人材をどこから採用するか(採用ソース)については、公募や社員紹介、人材紹介会社の活用など、多面的に言及されています。

 「入社日の45日前には承諾のサインをもらう」といったことは、ある程度の長期にわたって採用を経験している担当者であれば、その必要を感じているのではないでしょうか(それでいて、こうしたことが書かれている本は少ない)。
 一見「優秀そうに見える」履歴書には落とし穴があることがあり、どこを注視すればよいかを解説した箇所なども、思い当たるフシは多いのは。

一方で、コストをかけて採用した人材を定着させるために、入社直後に「入社インタビュー」を行って中途採用者のサポート体制を整えるといったことは、その必要を感じながらも、行っていない企業が多いのではないでしょうか。
 そうした意味では、自社で今どういった施策が不足しているのかをチェックする目安にもなるかと思います。

 最後に、「採用」マネジメントと併せて、「離職」もマネジメントすべきものであるという考え方を示し、それは自主的に自分の将来を考えてもらう仕組みづくりであって、それを行わないと、本当の肩たたきや、それ以上の大量解雇が始まるリスクがあるとしていますが、この部分にも共感しました。

 極端な事例ばかり挙げて読者の表面的な関心を引こうとする本も類書に多い中、本書は平易な文章で書かれていながらもコンセプトがしっかりしていて、実務面のフォローもされているのが良く、また、中途採用のノウハウを惜しみなく開示している姿勢にも好感が持てました。

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「GPTW1位企業」の経営者の人材採用・育成・定着施策。ITベンチャーらしいなあ。

君の会社は五年後あるか2.jpg 君の会社は五年後あるか 帯.jpg君の会社は五年後あるか? 最も優秀な人材が興奮する組織とは (角川oneテーマ21)』['10年]

 成長著しいIT企業(ワークスアプリケーションズ)の若きトップが、自社の人材戦略を自ら語ったもので、すでにこの会社のことは人事専門誌などでも紹介されていたりするため、さほど目新しさは感じませんでしたが、一般向けの新書ということで、読み易いことは読み易かったです。

 この会社が注目を浴びるようになったのは、「働きがいのある会社ランキング」で'09年に4位、'10年にはトップになったことも影響しているかと思いますが、これは、サンフランシスコに本部があるGreat Place to Work Institute(GPTW)のサーベイの、'07年から始まった「日本版」調査であり、企業の「働きがい」を高める具体的な施策について「採用する」「歓迎する」「触発する」「語り掛ける」「傾聴する」「育成する」「配慮する」「祝う」「分かち合う」といった組織風土面の従業員意識調査を行って採点し、ランキングを決めるものです。

 結構この調査は、毎年ランクイン企業の順位が入れ替わるので、1位になったタイミングでこうした本が出るパブリシティ効果は大きいし、また、それが出版の狙いであるという穿った見方も出来るわけですが('10年のトップ10のうち6社はIT企業であり、この業界の人材獲得競争の熾烈さを反映しているとも言える)、そうしたことは抜きにして、改めて参考になった面もありました。

 人材育成のコンセプトがしっかりしていて、「勉強ができた人を、仕事ができる人に育てる」ということですが、これ、グーグルとかマイクロソフトと同じだなあと。基本、先ず優秀な人材を採るわけですね、しかも新卒で(新卒採用に重きを置いているのは、'10年のGPTWで6位にランクインしているサイバーエージェントなども同じである)。そして、育成と定着を図る―。

 あと、評価(人事考課)に力を注いでいて、プロセス重視の「相互多面評価」を取り入れると共に、何をもって優秀な社員とするかを明確にしています。
 それと、こうした進取の気質溢れる会社では、社員が退職し独立するのはやむを得ないとしても、独立した後でまた出戻ってくるのは歓迎するとしています。
 もちろん、育児休業なども手厚く、産休から復帰した社員には特別ボーナスが出るとのことです。

 個人的に思うに、ソフト産業界には四年制大卒・文系女子がかなり流れるため、一から教育した投資分を人材の定着を図ることで回収しないと、初期の教育投資が無駄になってしまうというのもあるのでしょう。

 そうした業界特有の状況もあっていろいろ講じた施策(ある意味、"競争"的にそれをしている)が、現在の人事マネジメントのトレンドである「人を尊重する」或いは「ワークライフバランス」といったものに偶々合致したともとれますが、その結果、業績が伸びているのだから、ワークライフバランス施策を講じることが企業業績の向上に繋がるという恰好の見本であるとも言えるかと思います。

 経営者が自分で書いて、登場する人物が役員や幹部社員だったりするため、宣伝気味の感は拭えず(人事専門誌で読むとそうでもないのだが、こうして新書で読むとね)、実際には本書に書かれていない裏事情もあるのではないかと。

 でも、ベンチャーから大企業然とした会社になるのではなく、ベンチャーからメガベンチャーになるのだと最後に述べているのは、この会社のこれからの課題をよく認識しているように思えました。

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所謂「タイトル過剰」気味。中身はオーソドックス乃至は古典的。

新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか.jpg 『新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか (光文社新書)』 ['09年] 若者が3年で辞めない会社の法則.jpg 『若者が3年で辞めない会社の法則 (PHP新書)』 ['08年]

 日本ヒューレット・パッカードの人事出身で、採用コンサルタントの樋口弘和氏(1958年生まれ)が書いた『新入社員はなぜ「期待はずれ」なのか』('09年/光文社新書)は、タイトルに何となくムムッと惹きつけられて買ってしまいましたが、中身的には、サブタイトルの「失敗しないための採用・面接・育成」というのが順当で、要するに、新卒採用が「期待はずれ」のものとならないように予防するには、面接において留意すべき点は何かということ。

 内容は比較的オーソドックスで、強いてユニークなところを挙げれば、本来の「お見合い形式」の面接を改めて「雑談形式」面接で本来の素質を見抜くというのは、時間的余裕があれば採り入れてもいいかなあと思いました(これが「模擬討論」みたいな硬いものになると、却って人材の質の見極めが難しくなるけれども、多くの企業ではその難しい方のやり方でやっている)。

 志望動機とかキャリアビジョンとかを語らせても、仕事というのは将来性志向だけでは空回りするものであり、今まで何をしてきたか、どんな役割だったかを、掘り下げて雑談風に聞くのが良いというのは、著者がヒューレット・パッカードの米国本社でのキャリア採用の現場を見て体験的に学んだことのようですが、この辺りの日米の採用面接のやり方の違いは、興味深いものでした。

 但し、そうした考えに基づく実際の面接の進め方の例も出ていていますが、これはこれで、面接する側に相当のヒューマンスキルが求められるような気も。

 前半部分ではリテンション(人材引止め)についても触れられており、「OJTは放置プレイ」と言い切っていて人材育成の重要性を説いていますが、この辺りは本田有明氏の『若者が3年で辞めない会社の法則』('08年/PHP新書)においても強調されていました。

 本田有明氏は1952年生まれのベテランの人事教育コンサルタント。この人の書いたものは月刊「人事マネジメント」などの人事専門誌でも今まで読んできただけに、リテンション戦略の中心にメンター制度を含めた社内教育制度を据えるというのは、読む前から大体予測がつき、実際、そうした内容の本でした(「辞めない法則」ではなく「辞めさせない制度施策」、人材確保というより人材教育そのものの話)。

 組織風土の問題を語るのに"厚化粧がこうじた挙句の「仮面会社」"とか"仕切っているのは「レンタル社員」"とか "制度はそろっているのに「機能不全」"といった表現がぽんぽん出てくるのも手慣れた感じですが、「トリンプ・インターナショナル・ジャパン」や「未来工業」の事例も使い回し感があり、書かれていることに正面切って異論は無いのですが、樋口氏よりやや年齢が上であるということもあるのか、「仕事の面白さやロマンを堂々と語れる浪花節的上司たれ」みたいな結論になっているのが、ホントにこれで大丈夫かなあと。

 あまりに古典的ではないかと。実際、若手社員の意識は昔とそう変わらないということなのかも知れませんが。
 樋口氏の本より"啓蒙書"度が高いように思われ(微妙な年齢差のせい?)、何れにせよ、両著とも、タイトルから受ける印象ほどの目新しさやパンチ力は感じられませんでした(所謂「タイトル過剰」気味)。

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