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「●「うつ」病」の インデックッスへ
「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法までを分かりやすく解説。
真面目な人が「うつ」になり易く、「うつ」になった場合は自分を責める傾向にある―という「従来型のうつ」に対し、軽く注意したら不調を訴え会社に来なくなった、本人からは上司に叱責されたために「うつ病」になったとの訴えがあり、配置換えを申し出てくる―そうした、いわゆる「新型うつ」ではないかと思われるケースが、最近若い社員を中心に増えていると言われますが、本書はその「新型うつ」と呼ばれるものについて、経験豊富な産業カウンセラーが分かりやすく解説した新書本です。
前半部分では、「新型うつ」の特徴や「従来型うつ病」との違い、「新型うつ」になりやすいのはどんなタイプの人かなどが事例をあげて解説されており、後半は、「新型うつ」と思われる社員への対応から、社員を「新型うつ」にしないための対策やストレス・マネジメント法まで、対処法が提案されています。
このように、「新型うつ」の見分け方から企業としての対応の在り方や予防法まで、全体によく網羅されていて、内容のバランスもとれていると思いますが、新書であるため、その分一つ一つの事柄がそれほど深く書かれているわけではありません。それでも個人的には、「新型うつ」は若者だけの問題ではなく、四十代、五十代でもなることがある、といった新たな知識を得ることができました。
また、企業内で、メンタル不調者一人ひとりに対しどのようなアプローチが必要なのかを総合的にアセスメントできる人材、「メンタルヘルスのスペシャリスト」を育てることを提案している点は、まったく同感だと思いました。
この分野の知識を深めようとするならば、精神科医など専門家の書いた本も読むといいと思われ、最初に読む入門書としては、野村総一郎『うつ病をなおす』(2004/11 講談社現代新書)などがお薦めです。逆に、医師であっても専門医ではない人が書いた本には、特殊な見解や特定の療法に偏っていたりするものもあり、危うさを感じることがあります。一方で、専門医は専門医で、"病態区分"などに関して、それぞれの立場ごとに書かれていることが異なったりすることもあります。
例えば、林公一『それは、うつ病ではありません!』(2009/02 宝島社新書)では、"「ディスチミア親和型うつ病」(「うつ病」と診断されるには至らない軽症のうつ状態が慢性的に長期間持続するもの―岩波 明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書))などをうつ病と呼ぶ派"などという言い方で、「新型うつ」と呼ばれるものは「擬態うつ」であってうつ病ではないとしています。一方で、吉野聡『それってホントに「うつ」?―間違いだらけの企業の「職場うつ」対策』(2009/03 講談社+α新書)では、「ディスチミア親和型うつ病」などを「現代型うつ病」とし、さらに、「職場うつ」と呼ぶべきものの中には、パーソナリティ障害や内因性精神障害(統合失調症や躁うつ病など)も含まれる場合があるとしています。
本書『「新型うつ」な人々』の場合、精神科医による典拠を示し、さらに「私の解釈」と断ったうえで、「うつ病」の領域には「ディスチミア親和型」も含まれ、「新型うつ」を理解するためには、「適応障害」や「パーソナリティ障害」の理解も必要であるとしており、これは吉野氏の立場に比較的近く、また「新型うつ」に関するオーソドックスな解釈であると言えるのではないでしょうか。
「ディスチミア親和型うつ病」は、かつては「軽症うつ」などという言われ方もし、従来型のうつ病に比べて軽度のものであると思われがちですが、岩波明『うつ病―まだ語られていない真実』(2007/11 ちくま新書)では、非常に重篤で大きな事故に繋がった「ディスチミア親和型うつ病」の症例が報告されています(但し、岩波氏の場合、岩波明『ビジネスマンの精神科』(2009/10 講談社現代新書)の中で、「新型うつ病」を「ジャンクうつ」と"断罪"し、「ディスチミア親和型うつ病」とは峻別している)。
また、貝谷久宣『気まぐれ「うつ」病―誤解される非定型うつ病』(2007/07 ちくま新書)では、かつて「神経症性うつ病」と呼ばれた「非定型うつ病」について解説されています。岡田尊司『パーソナリティ障害―いかに接し、どう克服するか』(2004/06 PHP新書)は、パーソナリティ障害の入門書としてお薦めです。
メンタルヘルス対策の専従部門を設けることができるのは、限られた数の大企業だけでしょう。普通の会社だと、結局、人事労務部門にいる人たち自らが「メンタルヘルスのスペシャリスト」となるべく自助努力をしなければならないような気もしますが、新書レベルでも、一人の専門家に偏らず何冊かを読むようにすれば、一定の知識は得られるように思います。





真野 俊樹 氏(NTV系「世界一受けたい授業」)

入門書でありながら、所々で著者の"持ち味"が出るのが面白かったですが、








元・気象キャスターの倉嶋厚氏も「うつ」に罹患経験者の1人として紹介されていますが、発症したのが妻が癌で亡くなった73歳の時で、この人のように伴侶の死が発症の契機となることも、やはり多いのかも(倉嶋氏のうつ病の発症と闘病の記録は、自著『やまない雨はない―妻の死、うつ病、それから...』('02年/文藝春秋)に詳しい)。