【111】 ○ ルイス・V・ガースナー (山岡洋一/高遠裕子:訳) 『巨象も踊る (2002/12 日本経済新聞社) ★★★★

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「実直」で「分析的」なCEOが書いたIBM復活の物語。

巨象も踊る.jpg 『巨象も踊る』 (2002/12 日本経済新聞社) Who Says Elephants Can't Dance.jpg Louis Gerstner "Who Says Elephants Can't Dance?: How I Turned Around IBM"

 巨大企業IBMはかつて、パソコンのOSの支配権をマイクロソフトに、マイクロプロセッサーの支配権をインテルに委ねましたが、その後のパソコンの普及、企業情報システムのダウンサイジングなどにより、'90年代初頭にはそれらの新興企業とは対照的に、メインフレーム主体のその経営は悪化していました。
 にもかかわらず、社内には連帯感や危機感が薄く、いわば大企業病が蔓延していた―。

 そこへCEOとしてナビスコから来たのが情報産業の門外漢ルイス・ガースナーですが、彼がどのようにして大企業病からの脱却を図り、経営を安定させたかを、本書では専門ライターを使わずに自身が克明に述べています(原題は"Who Says Elephants Can't Dance?"-「踊る」ということをポジティブな意味で使っている)。
 
 基本的には、サービス主導モデル、ネットワーク主導モデルを確立するという戦略を立てるわけですが、顧客志向の企業体質に転換を図るうえで最も障壁だったのが「企業文化」をどう変えるかという問題であったと―。
 また、ネットワーク、eビジネスに対する考え方は、企業買収に極めて慎重でありながらもノーツを有するロータスに対しては買収に踏み切り、また(彼の退任後ですが)パソコン事業を中国企業に売却したことにも表れていているかと思います。

 個人的には、ジャック・ウェルチがアグレッシブで、インスピレーションの人という印象なのに対し、彼は派手さはありませんが実直で、コンサルタント出身らしく理知的・分析的であるという印象を持ちました。
 もちろん競合企業に対してはアグレッシブなのですが、それらのトップ、例えばビル・ゲイツなどに対しては、自分とは異質の人種と見ているようです。
 むしろ彼が最後の方で批難しているのは、ネットバブルとその崩壊を招いた投資銀行などです。
 でも彼はその後、カーライル・グループという世界最大級の投資顧問会社のトップに収まっている...。

【2203】 ○ ジャック・コヴァート/トッド・サッターステン (庭田よう子:訳) 『アメリカCEOのベストビジネス書100』 (2009/11 講談社)
【2701】 ○ 日本経済新聞社 (編) 『マネジメントの名著を読む』 (2015/01 日経文庫)

《読書MEMO》
●わたしの経営哲学(抜粋)(42p)
・手続きによってではなく、原則によって管理する。
・われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である。
・速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎたためのものより、速すぎたためのものがいい。
●報酬制度についての四つの主な変更(135p)
・ 均質性→差別化
・ 固定報酬→変動報酬
・ 内部ベンチマーク→外部ベンチマーク
・ 社員の権利→業績本位
● 成功を収めている経営者の三つの基本的な性格(288p)
・ 焦点を絞り込んでいる
・ 実行面で秀でている
・ 顔の見えるリーダーシップがすみずみまで行き渡っている
● マッキンゼーにいたころ、多数の企業を見てきて、「ビジョン」が「戦略」とおなじものだと考える経営者が多いのには驚いていた。(中略)ビジョンをまとめると、自信と安心感が生まれるが、これはじつはきわめて危険なことだ。(294-295p)
● わたしが一貫して確信している点だが、称号は個人ではなくポストにつくべきであり...(394-395p)

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