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シナリオだが(一部、書き起こしあり)読んでそのままに面白く、またヴィヴィッドな印象。
『ゴダール全集』(全4巻)〔'71年〕
「スタジオ・ボイス」1994.02 ゴダール特集
ゴダールの'60年代までの作品の全シナリオを収録したもので、映画が難解なイメージがあるわりには、本として読んでそのままに面白いものが多く、またヴィヴィッドな印象を受けるのが意外かも知れません。
よく知られているところでは、ジーン・セバーグ、ジャン・ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」('59年)、アンナ・カリーナ、ベルモンド主演の「気狂いピエロ」('65年)などの初期作品でしょうか。
スチール写真が適度に配置され、読むと再度見たくなり、未見作品にも見てみたくなるものがありました。
「勝手にしやがれ」('59年)/ 1978年公開時チラシ/DVD


「勝手にしやがれ」の一応のあらすじは―、自動車泥棒のミシェル(J・P・ベルモント)が、警官を殺してパリに逃げ、アメリカ人のパトリシア(ジーン・セバーグ)と互いに束縛しない関係を楽しんでいたところ、そのパトリシアはミシェルとの愛を確認するため、ミシェルの居所をわざと警察に密告する―というもので、この不条理に満ちた話のオリジナル作者はフランソワ・トリュフォーですが、最終シナリオはゴーダルの頭の中にあったまま脚本化されずに撮影を開始したとのこと。
台本無しの撮影にベルモンドは驚き、「どうせこの映画は公開されないだろうから、だったら好きなことを思い切りやってやろう」と思ったという逸話があります。

「勝手にしやがれ」●原題:A BOUT DE SOUFFLE●制作年:1959年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●原作・原案・脚本:フランソワ・トリュフォー●撮影:ラウール・クタール●音楽:マルチアル・ソラール●時間:95分●出演:ジャン=ポール・ベルモント/ジーン・セバーグ●日本公開:1960/03●配給:新外映●最初に観た場所:三百人劇場 (78-07-25) (評価★★★★)●併映:「ヒア&ゼア・こことよそ」(ジャン・リュック・ゴダール)
三百人劇場(文京区・千石駅付近) 2006(平成18)年12月31日閉館
「気狂いピエロ」 ('65年)/1983年公開時チラシ/DVD
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「気狂いピエロ」は―、フェルディナン(J・P・ベルモント)という男が、イタリア人の妻とパーティに行くが、パーティに退屈し戻ってきた家で、昔の恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会し、成り行きで彼女のアパートに泊まった翌朝、殺人事件に巻き込まれて、2人は逃避行を繰り返す羽目に。フェルディナンは孤島での生活を夢見るが、お互いにズレを感じたマリアンヌが彼を裏切って情夫の元へ行ったため、フェルディナンは彼女と情夫を射殺し、彼も自殺するというもの。
本書で脚本を先に読み、なかなかがいいと思いましたが、映像はほぼそれを裏切らなかったと思います(「勝手にしやがれ」よりギャング映画的な娯楽性を感じるが、前衛性はやや後退する)。
これ、日本語タイトルはテレビコードにひっかかるのか?('89年テレビ放映時はフランス語のカタカナ読み「ピエロ・ル・フ」に)

「気狂いピエロ」●原題:PIERROT LE FOU●制作年:1965年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワース・デュアメル●原作:ライオネル・ホワイト●時間:109分●出演:ジャン=ポール・ベルモント/アンナ・カリーナ/グラツィエッラ・ガルヴァーニ/ダーク・サンダース/ ジミー・カルービ ●日本公開:1967/07●配給:セントラル●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★★)●併映:「彼女について私が知っている二、三の事柄」(ジャン・リュック・ゴダール)
有楽シネマ 2004(平成16)年1月31日閉館 (1955年オープン、1996年〜銀座シネ・ラ・セット)
「女と男のいる舗道」 ('62年)

"シナリオ"集といっても、この2つの作品やアンナ・カリーナ主演の「女と男のいる舗道」('62年)などは、蓮實重彦氏など本書の翻訳陣が映画を採録し、シナリオのスタイルに「再構成」したものです。
「女と男のいる舗道」は、時期的には「勝手にしやがれ」と「気狂いピエロ」の間に位置する作品で、若くして結婚し離婚した女優志望の女ナナ(アンナ・カリーナ)が、あるきっかけで娼婦になり、最後はヒモ同士のトラブルに巻き込まれて死んでしまう話で、ラストなどは「勝手にしやがれ」の女性版を思わせる部分もあり、また、エミール・ゾラの小説『ナナ』が娼婦から女優に成り上がった女性を描いた、その逆を描いているともとれます。

アンナ・カリーナ演じるナナは、別に不真面目に生きているわけではなく、たまたま出会った哲学者と真理について語ったり、「裁かるるジャンヌ」を観て涙したりするのですが、哲学者との会話などはシナリオで読むと面白いのに、映像化されると言葉が単に映画の背景になってしまうような感じがしました(映画を観てアンナ・カリーナが涙を流す場面は良かった)。
「女と男のいる舗道」●原題:VIVRE SA VIE●制作年:1962年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン・リュック・ゴダール●製作: ピエール・ブロンベルジェ ●撮影:ラウール・クタール●音楽:ミシェル・ルグラン●原作:マルセル・サコット 「売春婦のいる場所」(ドキュメント)●時間:84分●出演:アンナ・カリーナ/サディ・ルボット /アンドレ・ラバルト●日本公開:1963/11●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会 (81-09-12) (評価★★★☆)●併映:「裁かるるジャンヌ」(カール・テオドア・ドライヤー)
団地妻の売春という"予想外"の素材を扱った「彼女について私が知っている二、三の事柄」('66年)というのもありましたが、所収の作品で最後に見たのが、政治的メッセージの強い「ヴェトナムから遠く離れて(ヒア&ゼアこことよそ)」('67年)あたりで、その後は短編しかもう撮らないのかと思ったら、'80年代にまた長編映画の製作に復帰しています。
《読書MEMO》
●ゴダール全シナリオ集・収録作品
Ⅰ 水の話・シャルロットと彼女のジュール・勝手にしやがれ・小さな兵隊・女は女である・立派な詐欺師・カラビニエ
Ⅱ 怠惰の罪・女と男のいる舗道・軽蔑・恋人のいる時間・未来展望・気狂いピエロ
Ⅲ アルファヴィル・男性女性・メイドインUSA・彼女について私が知っている二三の事柄・ヴェトナムから遠く離れて・中国女・ウィークエンド
