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日本のジャーナリズムの中では見えなかったイチローの一面が見えた。
『イチローUSA語録』 集英社新書 〔'01年〕
デイヴィッド・シールズ氏 (略歴下記)
イチロー語録は何冊か本になっていますが、シアトル在住の米国人作家の編集による本書は、その中でも早くに出版されたもの。雑誌・新聞等に掲載された英文訳のイチローのコメントを再録していますが、渡米1年目の6月ぐらいまでのものしか載っていません。
でも、掛け値なしで面白い!
編者は―、
「イチローはグラウンドで超人的な離れ業、人間業とも思えない送球や捕球や盗塁やヒットなどを演じ、あとでそれについて質問されると、彼の答えときたら、驚くほかはない。
そのプレーを問題にもしないか、否定するか、異を唱えるか、前提から否定してかかるか、あるいは他人の手柄にしてしまう」
と驚き、
「日本語から英語に訳される過程で、言葉が詩的な美しさを獲得したのだろうか?」
と考察していますが、日本語に還元したものを我々が読むと、もっと自然な印象を受けます(彼のプロ意識の控えめな表現だったり、ちょっとマスコミに対して皮肉を言ってみたとか、或いはただインタビューを早く終らせたいだけだったとか)。
それでも面白いのです。
個人的に一番気に入ったのは、シアトルの地元紙に日本の野球に心残りがあるかと聞かれ、
「日本の野球に心残りはありません。野球以外では、飼っている犬に会えないのが寂しいけど、グランドでは何もないです」
と答えた後、その飼い犬の名前を聞かれて、
「彼の許可を得てからでないと教えられません」
と言ったというスポーツ・イラストレイテッドの記事。
何だか、味わい深い。
スポ・イラも丹念だけれども、編者もよくこういうのを拾ってきたなあと言う感じ。
例えば、日本でまとめられた"類書"などは、「精神と目標」「準備と訓練」「不安と逆風」...といった構成になっていて、こうなると上記のようなコメントは入る余地がなくなります。
日本のジャーナリズムの中では見えてこなかったイチローの一面が見えました。
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デイヴィッド・シールズ
1956年ロサンゼルス生まれ。ブラウン大学卒(英文学専攻)。作家、エッセイスト。ワシントン大学教授(クリエイティヴ・ライティング・プログラム担当)。著作に「ヒーローズ」「リモート」「デッド・ランゲージズ」など。ニューヨーク・タイムズ・マガジン、ヴォーグなどにも寄稿。1999年刊の「ブラック・プラネット」は全米批評家協会賞最終候補となる。シアトルに妻、娘とともに住む。
