【448】 ◎ 太宰 治 『斜陽 (1950/11 新潮文庫) ★★★★★

「●た 太宰 治」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【449】 太宰 治 『人間失格
「○近代日本文学 【発表・刊行順】」の インデックッスへ

単なる自虐小説ではなく、一縷の光明が見られる作品だと思う。

『斜陽』 新潮文庫.jpg 斜陽.jpg斜陽』 新潮文庫  安田屋旅館2.jpg 伊豆三津・安田屋旅館

 1947(昭和22)年発表の太宰治(1909‐1948)の晩年の代表作で、主人公のかず子、お母さま、弟の直治、流行作家の上原の4人が主な登場人物ですが、太宰自身の生育歴や思想歴から見て、それぞれが彼の一面を反映しているかと思います。

 とは言え、読者には、自身を戯画化した作品ばかり書くようになってしまった「上原」という作家が太宰を直接的に想起させる存在であり、かず子の手紙の中での呼ばれ方〈M・C〉が、「マイ・チェホフ」、「マイ・チャイルド」「マイ・コメディアン」と変遷していくところなどは、巧みさと屈折した自虐的ユーモアも感じます。

 太宰作品は暗いというイメージがありますが、実際には(こうして屈折してはいるものの)ユーモアを滲ませたものが多くあり、また芥川のようなペダンティックな匂いが無く、同時代の作家と比べても読みやすい、その上に人間疎外という普遍的なテーマを扱っているため、かなりこの先も読まれ続けるような気がします。

 特に「斜陽」は、実在の女性の日記を参照しているとは言え、独自の流麗な文体で"たおやめぶり"を描き、また、主要登場人物のうち3人が、肉体的・精神的・世俗的に滅びていくのに対し("退廃の美学"を描いている点では晩年の他の作品に通じる)、主人公のかず子は世間知らずのお嬢さんでありながら、チェホフの小説の中の強いタイプのヒロインと重なるような前向きな姿勢で、人間的にも成長している点で、単なる自虐小説ではなく、一縷の光明が見られる作品となっていると思います。

 この小説の前半部分は、伊豆三津の「安田屋旅館」で書かれましたが、その旅館に泊まった際に、今も客室として使われている太宰が使った2階の部屋を、掃除の時間の後で見せてもらいました。
 海に面し、壁2面が全面ガラス戸で採光に恵まれた、それでいてゆったりと落ち着く部屋で、「斜陽」の前半部に漂う"気品"や主人公のオプティミスティックな "姿勢"も、こうした執筆環境と関係あるのかなとも思いました。

 【1950年文庫化・1990年・2003年改版[新潮文庫]/1950年再文庫化・1979年・1988年改版[角川文庫]/1971年再文庫化[講談社文庫]/1977年再文庫化[旺文社文庫]/1988年再文庫化[岩波文庫(『斜陽 他一篇 』)]/1999年再文庫化[集英社文庫]/2000年再文庫化[文春文庫(『斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇』)]/2009年再文庫化[ぶんか社文庫]】

《読書MEMO》
●「斜陽」...1947(昭和22)年発表

      



ブログランキング・にほんブログ村へ banner_04.gif e_03.gif


About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年9月10日 00:28.

【447】 ○ 太宰 治 『ヴィヨンの妻』 (1950/12 新潮文庫) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【449】 ◎ 太宰 治 『人間失格』 (1952/10 新潮文庫) 《(1948/07 筑摩書房)》 ★★★★☆ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 5.01