【473】 ○ 夏目 漱石 『三四郎 (1948/10 新潮文庫) ★★★★

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前期3部作の1つと言うより、『猫』、『坊ちゃん』に続くもの。青春小説として読める分、楽しい。

三四郎.jpg 『三四郎 (新潮文庫)』 

 1908(明治41)年9月から12月にかけて新聞連載された夏目漱石(1967‐1916)の本作品は、漱石の『吾輩は猫である』('05年)、『坊ちゃん』('06年)などに続く初期代表作で、地方の高校を卒業し東京の大学で学ぶために上京してきた小川三四郎が、都会で学友や先輩、若い女性たちと接触して、日露戦争を経た日本の「新しい空気」に触れ、戸惑いながらも成長していく様が描かれています。

 三四郎が、自分が繋がっている世界を、母がいる熊本の古いが安らぎのある「田舎の世界」、世俗と意識的に交渉を絶って生きる野々宮(寺田寅彦がモデル)や広田先生がいる「学問の世界」、上流階級に属する美禰子(平塚雷鳥がモデル)らがいる「華やかな世界」の3つの世界に整理区分しているのがわかり、三四郎は最後の「華やかな世界」にどうしても憧れてしまう...。

 トリックスターのように動き回る学友の与次郎に対し、三四郎は常に受動的で内省的あり(ある意味、知識人(予備軍)の一典型とも言える)、結局、美禰子に翻弄され続けるのですが、果たして、先進的な女性と思われる美禰子が三四郎より自由な世界にいたのかというと、そうでもないという気にさせられます。

 また、三四郎が「学問の世界(学ぶ世界)」を大学(東大ですが)の授業ではなく、学外に見出すのも現代に通じるとことがあるかと思われ、学生の尊敬を集めながらも教授職に就かず「偉大なる暗闇」と呼ばれている広田先生に傾倒するのもわかる気がします。
 「学問の世界」グループの男性は皆独身で、三四郎を除いては美禰子のことをあまり好きでないらしく、警戒気味なのも面白い。

 漱石の女性に対する観察眼の鋭さには驚かされますが、美禰子における「無意識の偽善」というのが以降の作品でもテーマになっており、ではこの作品の主人公は美禰子なのかと言うと、それでは今ひとつしっくりしない気が...。

 この作品は漱石の前期3部作の最初の作品とされていますが、『猫』、『坊ちゃん』に続くものという色合いも感じられ(田舎に行った坊ちゃんと、上京した三四郎とで、方向的には逆ですが)、個人的には、三四郎を主人公にした青春小説として読みました。
 23歳と今の新入学生よりは年齢は若干上ですが、そうした青春小説としての読み方が出来る分、楽しい。

 当時の東大生は現在の東大生に比べると、エリートとしての"希少価値"は比較にならないぐらい高かったようで(by 石原千秋)、こんなこと言うと三四郎に失礼になるかも知れませんが、高橋留美子の『めぞん一刻』を思い出した...。

 【1948年文庫化・1986改訂[新潮文庫]/1950年再文庫化・1990改訂[岩波文庫]/1951年再文庫化[角川文庫]/1966年再文庫化[旺文社文庫]/1972年再文庫化[講談社文庫]/1986年再文庫化[ちくま文庫]/1991年再文庫化[集英社文庫]/2000年再文庫化[ポプラ社文庫]】

《読書MEMO》
●「三四郎」...1908(明治41)年9月発表

       



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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月10日 09:07.

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