「●ふ 藤沢 周平」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●ふ 藤原 新也」 【615】 藤原 新也 『東京漂流』
隠れた剣客というだけではなく、自分なりの価値観を持つ男たち。
『たそがれ清兵衛 (新潮文庫)』 〔'06年改版版〕 (カバー:村上 豊)
『たそがれ清兵衛』 単行本新装改訂版 ['02年]
表題作「たそがれ清兵衛」のほか、「うらなり与右衛門」、「ごますり甚内」、「ど忘れ万六」、「だんまり弥助」、「かが泣き半平」、「日和見与次郎」、「祝い人助八」の全8編を収録。
一見すると情けないほど貧相だったり頼りなさげだったりするため普段は侮られているのだけれど、いざという時には毅然とした行動をとる男たちの話。
彼らは何れも、しがない宮仕えの下級武士なのですが、実は知られざる(知る人ぞ知る)凄腕の剣客なのである―。
アンチヒーロー達による剣豪小説は、サラリーマンの心をくすぐるものがあるのかも知れません。
でもそれだけではない。

表題作「たそがれ清兵衛」のように、意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうといった話が多いのですが、命令には従い、そしてやり遂げる。しかし、そのことを足掛かりに出世しようなどという気は毛頭ない―。
"逆刺客"を倒した直後も番所へ届けず、とっとと家路を急ぐ主人公の姿に、夫婦愛というより、自分なりの価値観を持った人間が描かれていると思いました。
2002年映画化 (松竹/監督:山田 洋次/出演:真田広之, 宮沢りえ)
「うらなり与右衛門」、「日和見与次郎」などは義憤による敵討ちの話で、外見や日頃の立ち振る舞いでは窺えない主人公の心意気が伝わってきます。
風呂敷包みに隠されていた"うらなり"与右衛門のしたたかさ、黒幕を絶対に許さない"日和見"与次郎の徹底ぶりが、"うらなり""日和見"という外面との対照で、強く印象に残りました。
【1988年単行本・2002年新装版[新潮社]/1991年文庫化・2006年改版[新潮文庫]】
