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映画を見てドラマを見て再読して、"本格派" 推理小説だったと...。

『砂の器 (カッパ・ノベルス 11-9)』『砂の器〈上〉 (新潮文庫)
』 『砂の器〈下〉 (新潮文庫)
』〔'06年改版版〕「砂の器 デジタルリマスター版 [DVD]
」
この作品は、'60(昭和35)年5月から翌年4月にかけて「読売新聞」夕刊に掲載され、カッパ・ノベルスで'61(昭和36)年刊行、'74年に映画化されたほか、'04年には中居正広主演でTVドラマ化されているので、ストーリーを知る人は多いと思います。
映画を見て、「宿命」という言葉(または"曲の演奏")が頭にこびりついてしまい、パセティックな作品とのイメージを持っていましたが、もう一度原作にあたると、刑事たちに視点を置いて犯人を地道に追う"本格派" 推理小説の色合いが強いという印象を受けました(テレビ版は最初から犯人を明かす倒叙型だった)。
好みは人それぞれだと思いますが、小説における、推理を通して徐々に、間接的に"犯人像"を浮き彫りにして行く描き方の方が、主人公の"業"のようなものがじわ〜っと感じられる気もします(元々テレビ版の配役で「人間の業」のようなものの描出を期待する方が無理がある?)。
野村芳太郎(1919‐2005)監督による映画は、他の野村監督作品と比較しても、また同じ時期に映画化された他の松本清張原作のものとに比べても良い出来だと思います。
加藤剛が演じた〈和賀英良〉は、「飢餓海峡」('64年)で三國連太郎が演じた〈犬飼多吉(樽見京一郎)〉や「白い巨塔」('66年)で田宮二郎が演じた〈財前五郎〉と並んで、「成り上がる男」を体現していたと思われ、刑事役の丹波哲郎の演技も光るものがありました(その部下役を森田健作が演じている)。
ただし、幼児期の暗い記憶や、自分をいじめた社会に対しての見返してやるという登場人物のリベンジ・ファクターが清張作品ならではのものだと思うのですが、どこまで映像で表現されていただろうかという気もします。
テレビ版では「ハンセン病」というファクターを抜いてしまっているので、なおさらに原作とのギャップを感じざるを得ませんでした。
個人的には、この小説が今まで読んだ清張作品の中で一番だとは思わないし、「ハンセン病」に対する偏見を助長したという批判までありますが、作者の代表的な傑作作品であることに異存はなく、結末を知ったうえでも読む価値はあると思います。
「砂の器」●制作年:1974年●製作:橋本プロ・松竹●監督:野村芳太郎●脚本:橋本忍/山田洋次●音楽:芥川 也寸志●原作:松本清張●時間:143分●出演:丹波哲郎/森田健作/加藤剛/加藤嘉/緒形拳/山口果林●劇場公開:1974/10●配給:松竹●最初に観た場所:池袋文芸地下(84-02-19) (評価★★★★)●併映:「球形の荒野」(貞永方久)
【1961年ノベルズ版[光文社]/1973年文庫化・2006年改版版[新潮文庫]】
