【529】 ◎ 山崎 豊子 『白い巨塔 (1965/07 新潮社) ★★★★★ (○ 山本 薩夫 「白い巨塔 (1966/10 大映) ★★★★)

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医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせた傑作。

白い巨塔 1965.jpg白い巨塔 (1965年)』 白い巨塔 1.jpg 白い巨塔 2.jpg 白い巨塔 3.jpg 新潮文庫(全5巻)

 映画「白い巨塔」('66年/大映)    映画チラシ
kyotou1.jpg kyotou2.jpg この作品は何度かテレビドラマ化ざれ、佐藤慶('67年/テレビ朝日系/全26回)、田宮二郎('78年/フジテレビ系/全31回)、村上弘明(90年/テレビ朝日系/全2回)などが主役の財前五郎を演じています。

 更に最近では、'03年にフジテレビ系で唐沢寿明主演のもの(全21回)がありましたが、断トツの視聴率だったのは記憶に新しいところ(最終回の視聴率32.1%は、'78年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回る数字)。
 しかしながら個人的には、やっぱりテレビ版よりは、原作を読む前に映画(田宮二郎主演)で観たものが、強烈な印象として残っています。

銀座シネパトス.jpg また観たいと思っていたら、'04年にニュープリント版が銀座シネパトス(東銀座・三原橋の地下にあるこの映画館は、しばしば昔の貴重な作品を上映する)で公開されたため、約20年ぶりに劇場で観ることができました。これも全てテレビドラマが大ヒットしたお陰なのでしょう。

 「白い巨塔」●制作年:1966年●製作:永田雅一(大映)●監督:山本薩夫●脚本:橋本忍●音楽:池野成●原作:山崎豊子●時間:150分●出演:田宮二郎/東野英治郎/小沢栄太郎/小川真由美/加藤嘉/田村高廣/ 船越英ニ/滝沢修/藤村志保/下条正巳/石山健二郎/加藤武●劇場公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:渋谷(東急?)名画座 (83-12-05)●2回目:銀座シネパトス (04-05-02) (評価★★★★)

テレビドラマ版 「白い巨塔」
田宮二郎.jpg 田宮二郎(1935-1978/享年43)は、31歳の時にこの小説と巡り会って主人公・財前五郎に惚れ込み、作者の山崎豊子氏に懇願してその役を得たとのこと。

 その演技が原作者に認められ、それがテレビでも財前医師を演じることに繋がっていますが、テレビドラマの方も好評を博し、撮影終盤の頃、ドラマでの愛人役の太地喜和子(1943‐1992/享年48)との対談が週刊誌に掲載されていた記憶があります。

 それがまさか、ヘミングウェイと同じ方法でライフル自殺するとは思わなかった...。クイズ番組「タイム・ショック」の司会とかもやっていたのに(司会者は自殺しないなどという法則はないのだが)。

 「白い巨塔」テレビ版

テレビドラマ 白い巨塔 田宮二郎  dvd.jpg白い巨塔 ドラマ 1.jpg「白い巨塔」●演出:小林俊一●制作:小林俊一●脚本: 鈴木尚之●音楽:渡辺岳夫●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:田宮二郎/生田悦子/太地喜和子/島田陽子/上村香子/高橋長英/中村伸郎/小沢栄太郎/河原崎長一郎/山本学/金子信雄/清水章吾/加藤嘉/渡辺文雄/戸浦六宏/大滝秀治/関川慎二/東恵美子/中村玉緒●放映:1978/06~1979/01(全31回)●放送局:フジテレビ

 後に知ったのですが、彼は30代前半の頃から躁うつ病を発症したらしく、テレビ版の撮影当初は躁状態で、自らロケ地を探したりもしていたそうです。

 それが、終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのは、テレビドラマの全収録が終わった日でした(実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて、「俺はマフィアに命を狙われている」とかいう、あり得ない妄想を抱くようになっていたらしい)。

 週刊誌での大地喜和子とのにこやかな対談は、実際に行われたものなのだろうか。

 もともとの『白い巨塔』('65年/新潮社)は、'63年から'65年にかけて「サンデー毎日」に連載されたもので、熾烈な教授選挙戦を征して教授になった財前五郎が、権力者の後ろ盾のもとに、彼の医療ミスを告発する里見医師らを駆逐するところで終わっています。
                                            
続白い巨塔.jpg白い巨塔1994.jpg 映画('66年)も教授選をクライマックスにそこまでを描いていて、原作・映画ともに、医学界の権威主義に対する強烈な風刺や批判となっていますが、権力志向の強い男のピカレスク・ロマンとしてもみることができます。
 
 しかしながら、こうした終わり方に世間から批判があり、そのため『続・白い巨塔』('69年)が書かかれたということです('94年新装版では、正・続が2段組全1冊に収められている)。

『続・白い巨塔』('69年/新潮社 )/『白い巨塔(全)』('94年/新潮社 改版版)

白い巨塔 新潮文庫.jpg 文庫の方は、当初は正(上下2巻)・続に分かれていましたが、'93年の改定で「続」も含め『白い巨塔』として全3巻になり、更に'02年の改定で全5巻になっています(「続」という概念が消されている)。

 最近のテレビドラマもそれに準拠し、財前が亡くなるところまで撮り切っていますが、文庫で読むときは、もともとは今ある全5巻のうち、第3巻までで終わる話だったことを意識してみるのも良いのではないでしょうか。

 因みに、田宮二郎の主演のものも、テレビ版の方は唐沢寿明版と同じく、主人公が癌で亡くなるところまで撮っていますが、田宮二郎自身が台本に挿入させた遺書を自分で書き、末期がんのがん患者に成り切ったとのこと、ストレッチャーに乗る遺体役での演技に、本人は満足していたそうです。

 この小説は、続編も含め、単純な勧善懲悪物語にしていないところがこの著者の凄いところです。

 財前はむしろ、周囲に翻弄されるあやつり人形のような存在で(苦学生上がりで医師になったのに、才能を上司に認められないというのは辛いだろうなあ)、彼をとりまく人々の中に、医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせている(読んでると、権力を持たなければ何も出来ないではないかという気にさえさせられる)一方、個々には、権力に憧れる気持ちと真実を追究し正義を全うしようという気持ちが入り混じっているような"普通の人"も多く出てきて、この辺りがこの小説の充実したリアリティに繋がっていると思います。

 【1965年単行本・1969年続編・1973年改訂・1994年新装版[新潮社]/1978年文庫化(上・下・続)・1993年改訂(全3巻)・2002年再改定(全5巻)[新潮文庫]】

                        



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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月10日 15:21.

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