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初めは「アンダルシアの犬」と同じ狙いかと...。後半がっかり。
『蛇にピアス』 (2004/01 集英社)
「アンダルシアの犬 [DVD]」
2003(平成15)年・第27回「すばる文学賞」、2003(平成15)年下半期・第130回「芥川賞」受賞作。
主人公の19歳のルイは、刺青やピアス、更には少しずつ舌を裂いていくスプリットタンなどの身体改造に興味を示し、自分の舌にもピアスを入れる―。
著者はお酒を飲みながらこの小説を書いたそうですが、それは、この小説の全編に漂う現実からの浮遊感みたいなものと関係しているでしょうか。
ただし文章はうまいのではないかと思いました。
かなり刺激的な場面を抑制の効いた、というか他人事のような冷静な筆致で綴ることで、逆に舌にピアスの穴を空ける痛みとかがよく伝わってきます。
読んでいて初めのうちは、目玉を剃刀で切るシーンで有名なルイス・ブニュエルの実験映画「アンダルシアの犬」と同じ狙いかと思いました。
The opening scene, just before Buñuel slits the woman's eye with a razor.

「アンダルシアの犬」●原題:UN CHIEN ANDALOU●制作年:1928年●制作国:フランス●監督・製作:ルイス・ブニュエル●脚本:ルイス・ブニュエル/サルバドール・ダリ●時間:17分●出演:ピエール・バチェフ/シモーヌ・マルイヌ/ルイス・ブニュエル/サルバドール・ダリ●公開(パリ):1929/06●最初に観た場所:アートビレッジ新宿 (79-03-02) (評価:★★★?)●併映:「詩人の血」(ジャン・コクトー)/「忘れられた人々」(ルイス・ブニュエル)
「アンダルシアの犬」 ['90年/大陸書房](絶版)
「アンダルシアの犬」は、ルイス・ブニュエルとサルバドール・ダリの共同脚本からなるシュールレアリズムの世界を端的に描いた実験映画ですが、女性が目を切られるシーンの他にも掌を蟻が食い破るシーンや子供が人間の手首を転がしているシーンなどショッキングな場面が続き(目を切るシーンはブニュエルの見た夢が、掌を食い破る蟻のシーンはダリの夢がもとになっているらしい)、ストーリーや表現自体に意味があるかと言えば、意味があるとも思えず(シュールレアリズムってそんなものかも)、むしろ、たかがスクリーンに映し出されているに過ぎないものに、人間の心理がどこまで感応するかを試しているような作品に思えました(因みに目玉が切られ水晶体が流れ出すシーンは、死んだ牛の目玉を使ったとのこと。これが女性のシーンと繋がって観る者を驚かせるというのは、まさにモンタージュ技法の典型効果と言える)。
『蛇にピアス』の場合、映像ではなく活字でどこまで感覚を伝えることが可能かという実験のようにも思えたのですが、そうであるならば、途中までは成功しているのではないかと。
ただ、「アンダルシアの犬」が、モンタージュなどの技法により最後まで実験的姿勢を保持しているのに対し、この小説は、後半は何だかショボくれた恋愛ドラマみたいになってしまい、少しがっかりしました。
作者は以前、父親に「もっと恥ずかしいものを書け」と言われたそうですが、父親に言われている間はこのあたりが限界ではないかと思います。
【2006年文庫化[集英社文庫]】
