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伝わる時代の雰囲気、キャラクターやイカサマ対決の面白さ。

『麻雀放浪記』 (全4巻)/『麻雀放浪記』 角川文庫(全4巻) (表紙イラスト:黒鉄ヒロシ)/阿佐田哲也
'69年に「週刊大衆」で連載が始まった阿佐田哲也(1929‐1989/享年60)のギャンブル小説ですが、「青春編」「風雲編」「激闘編」「番外編」と続き、彼の代表作となりました。
この作品のヒットのお陰で、当時倒産の危機にあった双葉社は経営が持ち直して新社屋を建てたというから、昭和40年代って麻雀ブームだったんだなあと、改めて思いました。
しかしこの小説で描かれているのは昭和40年代ではなく、終戦後まもなくの時代。上野のドヤ街をはじめ、その時代の情景やそこに生きた人々の息吹が、麻雀という勝負事を通して、圧倒的シズル感をもって伝わってきます。さすが、後に「色川武大」の本名で直木賞をとることだけはある筆力!
ギャンブル小説なのでほとんど全編ヤクザな世界を描いたものなのですが、同時に、(明らかに阿佐田哲也がモデルであるところの)〈坊や哲〉の子どもから大人への成長物語にもなっています。
〈坊や哲〉以外にも、〈ドサ健〉、〈上州虎〉、〈出目徳〉といった魅力的なキャラが多く登場し、随所で紹介されるイカサマ技も面白かったです。
最初から、お互いにイカサマで最高の手で上がることしか考えていない麻雀とか、自分の情婦から果ては自宅の権利書まで賭けて、何と死人が出ても続けている麻雀って、「ちょっとスゴ過ぎ」という感じでした。

映画「麻雀放浪記」('84年/東映)(映画パンフ :和田誠)
イラストレーターの和田誠の監督により'84年に映画化されましたが、配役がまずまずハマっていて、白黒で撮影したのも成功していたと思います。
〈ドサ健〉の鹿賀丈史も悪くなかったのですが、〈出目徳〉の高品格が特に良かったです。俳優になる前はプロボクサーを目指していたらしいですが、味のあるバイプレーヤーでした。

「麻雀放浪記」●制作年:1984年●製作:角川春樹事務所●監督・脚本:和田誠●原作:阿佐田哲也(色川武大)●時間:109分●出演:真田広之/鹿賀丈史/高品格/加藤健一/名古屋章/大竹しのぶ/加賀まりこ/内藤陳/天本英世/笹野高史●劇場公開:1984/10●配給:東映 (評価★★★★)

『麻雀放浪記 1 青春篇 (1) (文春文庫)』 ['07年]
【1979年文庫化[角川文庫(全4巻)]/2007年再文庫化[文春文庫(全4巻)]】
