【611】 ○ 干刈 あがた 『ウホッホ探険隊 (1984/02 福武書店) ★★★☆

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「離婚」と対峙する親子を通して、当時としては新しいタイプの家族の形を模索。

干刈 あがた 『ウホッホ探険隊』.jpg 『ウホッホ探険隊』〔'84年〕 ウホッホ探険隊.jpg 『ウホッホ探険隊 (朝日文庫)』〔'00年〕 (表紙イラスト:大橋 歩)

干狩あがた.jpg この作品は、'82年に第1回「海燕」新人文学賞を受賞した作者が、その年に小学生の男の子2人を抱えての離婚を経験し、(多分その経験をもとに)翌年に発表したもので、芥川賞の候補作となりました。
 離婚に踏み切ろうとしている主人公の女性と、そのことを自分たちなりに受け止めようとしている小学生の長男・次男とのやりとりを通して、当時としては新しいタイプと言える家族の形を模索したものと言えます。

干刈 あがた (1943‐1992/享年49)

 統計によると、本書が発表された頃に離婚率の1つのピークがあり、その後いったん減少傾向に転じたものの、'90年代に入って再び増加し、近年はかつてない急激な上昇ぶりを示しています。
 つまり、離婚が社会現象化してきた頃の作品であるとは言え、今ほど当たり前のように夫婦が離婚するような時代でもなく、その分、当時の離婚に対する社会的許容度は今よりずっと低かったとみてよいのではないでしょうか。
 それはある意味、物語の中で息子が言う「僕たちは探検隊みたいだね、離婚ていう、日本ではまだ未知の領域を探検するために、それぞれの役をしているの」という、本書のタイトルにも繋がる言葉に表れており、また、親子の軽妙な会話の中にも、お互いに暗くなるまいとするいじらしい努力のようなものが感じられます。
博士の愛した数式.jpg 猛スピードで母は 単行本.jpg
 離婚家庭、シングルマザーをモチーフとしたものはその後も多くの作家が書いています。
 思いつくところでは、芥川賞を受賞した長嶋有の『猛スピードで母は』('02年)のように強烈なキャラクターの母親を子どもの眼から捉えたものであったり、同じく芥川賞作家の小川洋子の『博士の愛した数式』('03年)のように"博士"のような第三者を介入させたり"数式"が出てきたりとかなりひねったものになっていて、こうした子持ち離婚に踏み切ろうとしている時期の迷いや悩みというのは、それだけをストレートに扱うには古すぎるテーマになってしまったのかも。

 文体はドラマの脚本みたいで(本作は映画化もされている)、〈家族社会学〉的要素もある一方で文学としては物足りなさもある作品ですが、'92年に壮絶なガン死を遂げた(享年49)作者の優しいが芯のある人柄が伝わってくる作品です。
 
 【1985年文庫化[福武文庫]/1998年全集〔河出書房新社(『干刈あがたの世界〈2〉』)〕/2000年再文庫化[朝日文庫]】

   



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