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宮沢賢治の集大成であり、読めば読むほど謎に満ちた作品。
『童話集 銀河鉄道の夜』岩波文庫

『新編銀河鉄道の夜』 新潮文庫 [旧版/2009年限定カバー版]
1924(大正13)年頃に初稿が成ったされる宮沢賢治(1896‐1933)の「銀河鉄道の夜」は、37歳で亡くなった彼の晩年まで改稿が重ねられ、完成までに10年位かかっていることになります("生前未発表"のため、完成しているのかどうかもよくわからない)。
最後(第4稿)の頃には既に病臥と一時回復を繰り返す生活だったわけですが、研ぎ澄まされた感性、みずみずしい叙情、達観した宗教観が窺える一方、現実と幻想の巧妙なバランスと融合ぶり(完全な幻想物語だった初稿に比べ、最終稿は「授業」「活版所」など"現実"部分の比重が大きくなった)や、幅広い自然科学の事象の表象的用い方などに理知的なものが感じられ、賢治の集大成と呼ぶにふさわしい作品だと思います。
カムパネルラとジョバンニのシンクロニティ(共時性)がモチーフになっていますが、再読してみると、タイタニック号を思わせる乗客の話から、列車がどういう人を乗せているのかがその時点で察せられ、また、人々の宗教の違いを表している部分があるなど、いろいろと再認識することもありました。
一方ラストの、息子を今亡くしたばかりのカムパネルラの父が、ジョバンニにかけた言葉の内容など、テーマに深く関わると思われる謎から、ジョバンニの父親の本当の仕事は何かとか、カムパネルラが自らを犠牲にして助けたザネリという子は男の子なのか女の子なのかといったトリビアルな謎まで、新たな謎も浮かんできます。
絵本化したものでは、影絵作家の藤城清治氏のもの('82年/講談社)が、文章を小さな子にも読み聞かせできるようにうまくまとめていて、絵の方もさすがという感じ、ただし、完全に"藤城ワールド"という印象も(評価 ★★★☆)。
原文を生かしたまま絵を入れたものでは、東逸子氏の挿画のもの('93年/くもん出版)がいいかなあという感じで、人物はやや少女マンガみたいだけれど、透明感のある背景は素晴らしい(評価 ★★★★)。
田原田鶴子氏の油彩画によるもの('00年/偕成社)も美しいし、何と言っても挿入画の点数が多いのが嬉しいですが、一方で、ここまでリアルに描かれると、やはり自分の当初のイメージとはいろいろな点でズレがあるような感じも受けなくもなかったです(評価 ★★★☆)。
【1951年文庫化・1966年文庫改訂[岩波文庫(『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』)]/1971年再文庫化[講談社文庫(『銀河鉄道の夜、風の又三郎,ポラーノの広場 ほか3編』)]/1981年再文庫化[旺文社文庫]/1982年再文庫化[ポプラ社文庫]/1985年再文庫化[偕成社文庫]/1989年再文庫化[新潮文庫(『新編銀河鉄道の夜』)]/1990年再文庫化[集英社文庫]/1996年再文庫化[角川文庫]/1996年再文庫化[扶桑社文庫]/2000年再文庫化[岩波児童文庫]など】
《読書MEMO》
●「銀河鉄道の夜」...1922(大正11)年頃〜1932(昭和7)年頃執筆

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