【649】 ◎ 宮沢 賢治 「銀河鉄道の夜」―『童話集 銀河鉄道の夜 他十四編』 (1951/10 岩波文庫) 《『宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか』 (1985/12 ちくま文庫)》 ★★★★☆ (○ 宮沢 賢治(作)/藤城 清治(影絵・文) 『銀河鉄道の夜』 (1982/12 講談社) ★★★☆)

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宮沢賢治の集大成であり、読めば読むほど謎に満ちた作品。

銀河鉄道の夜  s16 新潮社.jpg銀河鉄道の夜 童話集 他十四編.jpg  新編 銀河鉄道の夜.jpg 新編銀河鉄道の夜 (新潮文庫).jpg オーディオブック(CD) 宮沢賢治「銀河鉄道の夜」.png
童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』岩波文庫/『新編銀河鉄道の夜』新潮文庫 [旧版/2009年限定カバー版] アイオーディオブック(CD) 「銀河鉄道の夜」
『銀河鉄道の夜』1941(昭和16)年新潮社
新潮文庫2018年プレミアムカバー宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか (ちくま文庫)』(「ちくま文庫」1985/12/1 創刊ラインアップ)カバー画:安野光雅
新潮文庫 プレミアムカバー 2018 銀河鉄道の夜.jpg宮沢賢治全集〈7〉銀河鉄道の夜・風の又三郎.jpg 1924(大正13)年頃に初稿が成ったとされる宮沢賢治(1896‐1933)の「銀河鉄道の夜」は、37歳で亡くなった彼の晩年まで改稿が重ねられ、完成までに10年位かかっていることになります("生前未発表"のため、これで完成しているのかどうかもよくわからないという)。因みに、ちくま文庫版『宮沢賢治全集〈7〉―銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュほか』には、「銀河鉄道の夜」の初期第一次稿から初期第三次稿までが(逸失部分があって全部ではないが)収録されていますが、途中、随分と変わっていることが分かります。

 最後(第4稿)の頃には既に病臥と一時回復を繰り返す生活だったわけですが、研ぎ澄まされた感性、みずみずしい叙情、達観した宗教観が窺える一方、現実と幻想の巧妙なバランスと融合ぶり(完全な幻想物語だった初稿に比べ、最終稿は「授業」「活版所」など"現実"部分の比重が大きくなった)や、幅広い自然科学の事象の表象的用い方などに理知的なものが感じられ、賢治の集大成と呼ぶにふさわしい作品だと思います。

 カムパネルラとジョバンニのシンクロニティ(共時性)がモチーフになっていますが、再読してみると、タイタニック号(の乗客であったこと)を思わせる乗客の話から、列車がどういう人を乗せているのかがその時点で察せられ、また、人々の宗教の違いを表している部分があるなど、いろいろと再認識することもありました(因みにタイタニック号が沈没したのは、1912(明治45)年4月15日。作者15歳の時)。

 一方ラストの、息子を今亡くしたばかりのカムパネルラの父が、ジョバンニにかけた言葉の内容など、テーマに深く関わると思われる謎から、ジョバンニの父親の本当の仕事は何かとか、カムパネルラが自らを犠牲にして助けたザネリという子は男の子なのか女の子なのかといったトリビアルな謎まで、新たな謎も浮かんできます。

銀河鉄道の夜 藤城.jpg         銀河鉄道の夜 (大型本).jpg               銀河鉄道の夜 田原.jpg 
藤城清治/影絵と文       東逸子/絵                   田原田鶴子/絵
銀河鉄道の夜 藤城清治.jpg  銀河鉄道の夜 東逸子.jpg  銀河鉄道の夜 田原田鶴子.jpg

 絵本化したものでは、影絵作家の藤城清治氏のもの('82年/講談社)が、文章を小さな子にも読み聞かせできるようにうまくまとめていて、絵の方もさすがという感じ、ただし、完全に"藤城ワールド"という印象も(評価 ★★★☆)。

 原文を生かしたまま絵を入れたものでは、東逸子氏の挿画のもの('93年/くもん出版)がいいかなあという感じで、人物はやや少女マンガみたいだけれど、透明感のある背景は素晴らしい(評価 ★★★★)。

 田原田鶴子氏の油彩画によるもの('00年/偕成社)も美しいし、何と言っても挿入画の点数が多いのが嬉しいですが、一方で、ここまでリアルに描かれると、やはり自分の当初のイメージとはいろいろな点でズレがあるような感じも受けなくもなかったです(評価 ★★★☆)。

銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場 (講談社文庫 み 13-1)
銀河鉄道の夜・風の又三郎・ポラーノの広場.jpg 【1951年文庫化・1966年文庫改訂[岩波文庫(『童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』)]/1971年再文庫化[講談社文庫(『銀河鉄道の夜、風の又三郎,ポラーノの広場 ほか3編』)]/1981年再文庫化[旺文社文庫]/1982年再文庫化[ポプラ社文庫]/1985年再文庫化[偕成社文庫]/1985年再文庫化[ちくま文庫(『宮沢賢治全集〈7〉』)]/1989年再文庫化[新潮文庫(『新編銀河鉄道の夜』)]/1990年再文庫化[集英社文庫]/1996年再文庫化[角川文庫]/1996年再文庫化[扶桑社文庫]/2000年再文庫化[岩波児童文庫]/2009年再文庫化[PHP文庫(『銀河鉄道の夜・風の又三郎・セロ弾きのゴーシュ』)]/2011年再文庫化[280円文庫]】


童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇2.jpg童話集 銀河鉄道の夜 他十四篇』岩波文庫
■収録作品(十五篇)
北守将軍と三人兄弟の医者 むかしラユーという首都に,兄弟三人の医者がいた.いちばん上の......
オッペルと象 オッペルときたらたいしたもんだ.稲こき器械の六台も据えつけて......
どんぐりと山猫 おかしなはがきが,ある土曜日の夕がた,一郎のうちにきました.......
蜘蛛となめくじと狸 赤い手の長い蜘蛛と,銀色のなめくじと,顔を洗ったことのない狸が......
ツェねずみ ある古い家の,まっくらな天井裏に,「ツェ」という名前のねずみが......
クねずみ クという名前のねずみがありました.たいへん高慢でそれにそねみ深......
鳥箱先生とフウねずみ あるうちに一つの鳥かごがありました. 鳥かごというよりは鳥箱という方......
注文の多い料理店 二人の若い紳士が,すっかりイギリスの兵隊のかたちをして,ぴかぴか......
からすの北斗七星 つめたいいじの悪い雲が,地べたにすれすれにたれましたので, 野はら......
雁の童子 流沙の南の楊で囲まれた小さな泉で,私は炒った麦粉を水にといて......
二十六夜 旧暦の六月二十四日の晩でした. 北上川の水は黒の寒天よりも......
竜と詩人 竜のチャーナタは洞のなかへさして来る上げ潮からからだをうねり出し......
飢餓陣営 砲弾にて破損せる古き穀倉の内部,からくも全滅を免かれしバナナン軍団......
ビジテリアン大祭 私は昨年九月四日,ニュウファウンドランド島の小さな山村,ヒルティで...
銀河鉄道の夜「ではみなさんは、そういうふうに川だと云われたり、乳の流れたあとだと云われたり......

《読書MEMO》
●「銀河鉄道の夜」...1922(大正11)年頃〜1932(昭和7)年頃執筆

●新潮文庫2018年プレミアムカバー
新潮文庫 プレミアムカバー 2018.png

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