【664】 ○ アンブローズ・ビアス (西川正身:訳) 「アウル・クリーク橋の一事件」―『いのちの半ばに』 (1955/08 岩波文庫) 《(大津栄一郎:訳) 「アウル・クリーク鉄橋での出来事」―『ビアス短篇集』 (2000/09 岩波文庫)》 ★★★★

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死の間際を悲劇的・皮肉的に描く短篇集。結末1行の意外性が見事。

アンブローズ・ビアス いのちの半ばに.jpg  ビアス短篇集.jpg      ふくろうの河.jpg
いのちの半ばに (岩波文庫)』『ビアス短篇集』 岩波文庫 / ロベール・アンリコ監督 「ふくろうの河
 
 1891年刊行のアメリカの作家アンブローズ・ビアス Ambrose Gwinnett Bierce (1842‐1914?)の短篇集『いのちの半ばに』(In the Midst of Life)から7篇を収めています(『いのちの半ばに』 '55年/岩波文庫)。

 ビアスはエドガー・アラン・ポーの後継者とも言われた作家で、本書にあるのは、〈死の間際〉にある人間の極限や神秘をミステリアスに、あるいはその過程や結末を悲劇的または皮肉的に描いたものがほとんどです。

 「アウル・クリーク橋の一事件」は、まさに今死刑を執行されようとする男が体験したことの話で、これは一般に「メリーゴーランド現象現象」「走馬燈現象」「パノラマ視現象」などの名で呼ばれているものでしょうか。


 原作もいいけれど、「冒険者たち」の監督ロベール・アンリコによる本作の映画化作品「ふくろうの河」(La Rivière du Hibou/'61年/仏)も良くて、逃走する主人公の息づかいが聞こえる緊張感に、モノクロならではの瑞々しさが加わった傑作短篇映画となっています。

 セリフも音楽もほとんど無く、アテネフランセで英字幕版で久しぶりに観ましたが、充分堪能することができました(1962年カンヌ国際映画祭パルム・ドール賞(短編部門)、1963年アカデミー賞短編実写賞、各受賞作)。

 昨年('06年)、日本語字幕版DVDがリリースされましたが、表題作(第3部「ふくろうの河」)は米TVシリーズ「トワイライトゾーン」の一話としても放映されたことがあります(リメイクではなく、ロベール・アンリコの作品をそのまま)。

ふくろうの河1.jpgふくろうの河2.jpgふくろうの河3.jpg An Occurence at Owl Creek Bridge ( La rivière du hibou)

 「アウル・クリーク橋の一事件」もそうですが、結末の一文で読者を唸らせる意外性にエンタテインメントとしての完成度の高さを感じ、「生死不明の男」「人間と蛇」「ふさがれた窓」などは本当にその一文(1行)で決まりという感じです。
 「生死不明の男」のタイム・パラドックスもいいけれど、特に、「ふさがれた窓」のラスト一文は、強くぞっとするイメージを湧かせるものでした。

芥川龍之介.bmp乱歩の選んだベスト・ホラー.jpg短篇小説講義.jpg ビアスを日本に紹介したのは、彼を短篇小説の名手と絶賛していた芥川龍之介だったそうですが、『侏儒の言葉』などには『悪魔の辞典』のアフォリズムの影響も見られるし、ビアス作品全体に漂うアイロニカルな死のムードも、彼には結構身近に感じられ(?)惹かれたのではないかと思います。

 その他にも、筒井康隆氏が『短篇小説講義』('90年/岩波新書)の中で「アウル・クリーク橋の一事件」を取り上げているし、『乱歩の選んだベスト・ホラー』('00年/ちくま文庫)という本では「ふさがれた窓」が紹介されています。


La Rivière du Hibou de Robert Enrico.jpg「ふくろうの河」●原題:LA RIVIERE DU HIBOU●制作年:1961年●制作国:フランス●監督・脚本:ロベール・アンリコ●撮影:ジャン・ボフェティ●音楽:アンリ・ラノエ●原作:アンブローズ・ビアス「アウル・クリーク橋の一事件」●時間:95分(第3部「ふくろうの河」23分)●出演:ロジェ・ジャッケ/アン・コネリー/サミー・フレイ●日本公開:1963/09●配給:東和●最初に観た場所:ACTミニシアター (84-02-05)(評価:★★★★)●併映:「カビリアの夜」(フェデリコ・フェリーニ)/「フェリーニの監督ノート」(フェデリコ・フェリーニ)/「チャップリンのノックアウト」(チャールズ・チャップリン)/「聖メリーの鐘」(レオ・マッケリー)/「お熱いのがお好き」(ビリー・ワイルダー)
「ふくろうの河」(La Rivière du Hibou) 仏版DVD


トワイライトゾーン.jpg「トワイライトゾーン (ミステリーゾーン)」The Twilight Zone (CBS 1959~64) ○日本での放映チャネル:日本テレビ(1960)/TBS(1961~67)/AXN


 【1955年文庫化[岩波文庫(西川正身訳)〕/1987年文庫化[創元推理文庫(中村能三訳『生のさなかにも』〈26篇収録〉)〕/2000年再文庫化[岩波文庫(大津栄一郎訳『ビアス短篇集』〈15篇収録〉)〕】

              



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