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前半部分はサスペンス。映画には無いジリジリさせる小出し感が良かった。
『ジュラシック・パーク〈上〉
・〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)
』
「ジュラシック・パーク」 DVD
1990年に発表されたマイクル・クライトン(Michael Crichton)の『ジュラシック・パーク』(Jurassic Park)は、映画('93年)で見るより先に原作を読みましたが、原作の方が面白かったと思います。
まず、原作はかなりSF小説っぽく、例えばカオス理論の話とかが数学者によって詳しく述べられていますが、映画では「蝶のはばたき効果」(北京で蝶がはばたくとニューヨークで嵐が起きるというやつ)程度の話ぐらいしか出てきません。
しかしそれよりも映画を見てエッと思ったのは、原作のサスペンス・タッチが、映画ではかなりそぎ落とされてしまっていることです。
特に前半部分、浜辺で遊んでいた子どもの失踪など、不審な出来事が断続的に続き(この部分は映画化を想定してか、非常に映像的に書かれている感じがしました)、「何かあるな」と読者に思わせるものの、事実の全体が読者にもなかなか見えてこない"ジリジリ感"と言うか"小出し感"のようなものが、いやがおうにもサスペンス気分を盛り上げます。
「激突!」パンフレット/チラシ/DVD


スティーヴン・スピルバーグが監督するということで、大いに期待しました。
「激突!」('72年、原題:はDuel=決闘)という元々テレビ映画として作られた彼の初期作品があります(監督はオーディションで決まった。スピルバーグは応募者の1人だった)。
デニス・ウィーヴァー演じる一般ドラーバーが、ハイウェイで前方の大型トラックに対してパッシングをしただけで、その大型トラックにずっと追い回されるという極めて単純なストーリーにも関わらず、追ってくる運転手の顔が最後まで見えないため、トッラクが人格を持っているように見えるのが非常に怖かったのですが、そうした対象がなかなか見えてこない恐怖(不安)は、「JAWS/ジョーズ」('75年)においても効果的に生かされていたように思います(「ジョーズ」は人間ドラマとしてもよく出来ている。但し、ピーター・ベンチュリーの原作自体はたいしたことないと思う。「ザ・ディープ」の原作も読んだが、通俗作家であるという印象)。
更に、"小出し感"ということで言えば、「未知との遭遇」('77年)などはその最たるもので、最後フタを開けてみれば、大掛かりな割には他愛も無い結末という気もしなくもありませんが、やはり、途中の"引っ張り方"は巧みだなあと。
このマイケル・クライトンの原作を読んで、これはスピルバーグが映画化するのにふさわしい作品だと思いました。
ところが、実際に映画化された「ジュラシック・パーク」('93年)を観てみると、原作と違ってあまりにもあっさりと恐竜たちにお目にかかれたため拍子抜けしました。
CG(コンピュータ・グラフィックス)の魅力に抗しきれなかったスピルバーグ、監督の意向を受け容れざるを得なかったマイケル・クライトンといったところでしょうか(マイケル・クライトンも脚本に参加しているのだが)。これではサスペンス気分も何もあったものではないと...。
登場人物は映画とほぼ同じでも、キャラクターの描き方が異なっていたり(映画化に際して単純な善玉悪玉に振り分けられてしまった?)、映画でカットされた原作の挿話(翼竜の飼育ドームのことなど)が、映画続編の「ロストワールド」('97年)や「ジュラシック・パークⅢ」('01年)に分散して挿入されていたりもし、その分、映画を既に見た人にも楽しめる内容だと思います。


マイクル・クライトン自身は、小説だけでなく、直接映画の脚本や監督も手掛けていて、テレビドラマシリーズ「ER緊急救命室」の脚本、製作総指揮に携わったことでも知られています(彼自身ハーバード・メディカルスクールの出身)。
「ER」というのはカメラーワークに特徴のあるドラマで、この小説(『ジュラシック・パーク』)も映画作品のノベライゼーションではなくあくまでも小説なのですが、非常に視覚的に描かれていて、場面転換なども映画のカット割りと似たものを感じ、このまま脚本として使えそうな気がしました(でも、実際にはそうなってはいない。スピルバーグは自分自身の"監督"オリジナルにこだわった?)。
「ジュラシック・パーク」●原題:JURASSIC PARK●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●脚本:マイケル・クライトンほか●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:マイケル・クライトン●時間:127分●出演:サム・ニール/ローラ・ダーン/ジェフ・ゴールドブラム/リチャード・アッテンボロー/ウェイン・ナイト●日本公開:1993/07●配給:UNI(ユニバーサル・ピクチャーズ)●最初に観た場所:有楽町・日本劇場 (93-09-12) (評価★★★)

「激突!」●原題:DUEL●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ジョージ・エクスタイン●脚本:リチャード マシスン●撮影:ジャック・A・マータ ●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●原作:リチャード マシスン●時間:90分●出演:デニス・ウィーヴァー/デヴィッド・マン/キャリー・ロフティン/エディ・ファイアストーン●日本公開:1973/01●配給:CIC (評価★★★☆)

「JAWS/ジョーズ」●原題:JAWS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:デイヴィッド・ブラウン/リチャード・D・ザナック●脚本:ピーター・ベンチュリー/カール・ゴッドリーブ●撮影:ビル・バトラー●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:ピーター・ベンチュリー●時間:124分●出演:ロイ・シャイダー/ロバート・ショウ/リチャード・ドレイファス/カール・ゴットリーブ/マーレイ・ハミルトン/ジェフリー・クレイマー/スーザン・バックリーニ/ジョナサン・フィレイ/クリス・レベロ/ジェイ・メロ●日本公開:1975/12●配給:CIC●最初に観た場所:新宿ローヤル (82-12-28) (評価★★★★)
新宿ローヤル劇場(紀伊国屋新宿店裏手) 1988年11月28日閉館
高野進 『想い出の映画館』('04年/冬青社)より


「未知との遭遇 〈特別編〉」●原題:THE SPECIAL EDITION CLOSE ENCOUNTERS OF THE THIRD KIND●制作年:1980年 (オリジナル1977年)●制作国:アメリカ●監督・脚本:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ジュリア・フィリップス/マイケル・フィリップス●撮影:ヴィルモス・ジグモンド●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:133分●出演:リチャード・ドレイファス/フランソワ・トリュフォー/テリー・ガー/メリンダ・ディロン/ボブ・バラバン/ケイリー・ガフィー/ランス・ヘンリクセン/ケイリー・ガフィー/ジャスティン・ドレイファス/メリル・コナリー/J・パトリック・マクナマラ/ウォーレン・J・ケマーリング/ジョージ・ディセンツォ/メアリー・ギャフリー/ロバーツ・ブロッサム●日本公開:1980/10 (オリジナル1978/02)●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:新宿ミラノ座(81-02-16) (評価★★★)
新宿ミラノ座 1956年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」1Fにオープン、2006年6月1日~「新宿ミラノ1」
「ER 緊急救命室」ER (NBC 1994~2009) ○日本での放映チャネル:NHK-BS2(1996~2011)/スーパー!ドラマTV
【1993年文庫化[ハヤカワ文庫NV(上・下)]】