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かなり怖い心理小説であると同時に、何だか予言的な作品。
『新しい世界の文学〈第40〉コレクター (1966年)』 白水社
『コレクター (上)・(下)
』 白水Uブックス

1963年発表のイギリスの小説家ジョン・ファウルズ(1916‐2005)の『コレクター』 (The Collector)は、映画化作品('65年、テレンス・スタンプ主演)でも有名ですが、イギリス人女性とフランス人男性の不倫を描いた映画「フランス軍中尉の女」('81年、メリル・ストリープ主演)の原作者も彼であることを知り、サイコスリラーからメロドラマまで芸域が広い?という印象を持ちました。
(後に考えるに、映画「フランス軍中尉の女」がハロルド・ピンターの脚色であることに原因があった模様で、完全にピンターの作品になってしまっている。映画は映画として見るべきか。)
『コレクター』の方のストーリーは、蝶の採集が趣味の孤独な若い男が、賭博で大金を得たのを機に仕事をやめて田舎に一軒家を買い、自分が崇拝的な思慕を寄せていた女学生を誘拐してそこに監禁する―、というもの。
"The Collector " ('65/UK)
「新潟女児誘拐長期監禁事件」とかもありましたし、何だか今日の日本にとって予言的な作品ですが、原作は、独白と日記から成る心理小説と言ってよく、人とうまくコミュニケーション出来ない(当然女性を口説くなどという行為には至らない)社会的不適応の男が、自分の思念の中で自己の行為を正当化し、さらに一緒にいれば監禁女性は自分のことを好きになると思い込んでいるところがかなり怖い。
しかし、性的略奪が彼の目的でないことを知った女性が彼に抱いたのは「哀れみ」の感情で、彼女の日記からそのことを知った男はかえって混乱する―。
文芸・社会評論家の長山靖生氏は、この作品の主人公について「宮崎勤事件」との類似性を指摘し、共に「女性の正しいつかまえ方」を知らず、実犯行に及んだことで、正しくは"コレクター"とは言えないと書いてましたが、確かにビデオや蝶の「収集」はともかく、この主人公に関して言えば女性はまだ1人しか"集めて"いないわけで―、しかし、作品のラストを読めば...。
映画化作品の方も、男が監禁女性を標本のように愛でるのは同じですが、彼女に対する感情がより恋愛感情に近いものとして描かれていて、結婚が目的となっているような感じがして、ちょっと原作と違うのではと...。
但し、テレンス・スタンプの代表作として知られているものの、ヒロインを演じたサマンサ・エッガーの演技は悪くなかったです(アカデミー主演女優賞受賞)。
「ローマの休日」を撮ったウィリアム・ワイラーの監督作品だと思うと、少し意外かも(結構、SMっぽい場面もある)。
「萌え」評論家?の本田透氏は、「恋愛」を追い求めるという点で(レイプ犯とは異なり)主人公はストーカー的であると言ってましたが(『萌える男』('05年/ちくま新書))、これは映画を見ての感想のようですが、確かに「娼婦ならロンドンに行けばいくらでも買える」だけの大金を主人公が持っていたことは、本作品を読み解くうえで留意しておいた方がいいかも。
「コレクター」●原題:THE COLLECTOR●制作年:1965年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ウィリアム・ワイラー●製作:ジョン・コーン/ジャド・キンバーグ●脚本:スタンリー・マン/ジョン・コーン/テリー・サザーン●撮影:ロバート・サーティース/ロバート・クラスカー●音楽:モーリス・ジャール●原作:ジョン・ファウルズ●時間:119分●出演:テレンス・スタンプ/サマンサ・エッガー/モナ・ウォッシュボーン/モーリス・ダリモア●日本公開:1965/08●配給:コロムビア映画(評価:★★★☆)
「フランス軍中尉の女」●原題:THE FRENCH LIEUTENANT'S WOMAN●制作年:1981年●制作国:イギリス●監督:カレル・ライス●製作:レオン・クロア ●脚本:ハロルド・ピンター●撮影:フレディ・フランシス●音楽:カール・デイヴィス●原作:ジョン・ファウルズ●時間:123分●出演:メリル・ストリープ/ジェレミー・アイアンズ/レオ・マッカーン/リンジー・バクスター/ヒルトン・マクレー●日本公開:1982/02●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:三鷹文化(82-11-06)(評価:★★☆)●併映:「情事」(ミケランジェロ・アントニオーニ)
【1984年新書化[白水Uブックス(上・下)]】
