【741】 ○ ローレンス・J・ピーター/レイモンド・ハル 『ピーターの法則―創造的無能のすすめ』 (1970/01 ダイヤモンド社) ★★★☆

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処世術としてではなく、組織論の1つとして押えておいてもいいのでは。

ピーターの法則.jpg 『ピーターの法則』 新訳版 〔'02年〕  The Peter Principle.jpg The Peter Principle〔'84年版〕

 教育学者ローレンス・J・ピーター(Laurence.J.Peter、1919‐1990)が唱えた有名な「ピーターの法則」の原著『The Peter Principle』は'69年に出版され(実際にはカナダ人作家のレイモンド・ハルが書いた)、'70年に邦訳されていますが、'02年には新訳が出されていることから、やはりインパクトは今でもあるのかと。

vision03.jpg 「ピーターの法則」とは、「階層社会では、すべての人は昇進を重ね、おのおのが無能レベルに到達する」というものです。
 さらに、これに続く「ピーターの必然」というものがあり、それは、 「やがて、あらゆるポストは、職責を果たせない無能な人間によって占められる」、「仕事は、まだ無能レベルに達していない者によって行われている」というものですが(何れも渡辺伸也氏訳)、組織論的に見てかなり当たっているのではないかという気がしています。

 読む側が、上司である管理職の無能を嘆いている場合は、一定のカタルシスを得られる本かもしれませんが、最後の「必然」を飛ばしてしまうと、自分がいる組織は回らなくなるというパラドックスに陥り、それでも組織が回っているのは、組織を構成する個々において"無能化"に至る時間差があるためです。

 冒頭にこうしたパラドックスの種明かしをしておきながら、本文全体は、人々が"無能化"する経緯を様々な事例を挙げてパラドキシカルに述べているために本書は"奇書"と見なされ(新訳の帯にも「"構造社会学"の奇書」とある)、しかも最後に、"昇進しない"ための〈創造的無能〉を"大真面目に"説いていているため、書店では、ビジネス書コーナーよりも、啓蒙書・人生論のコーナーに置かれていたりします。

 "スロー・キャリア"などが唱えられる昨今、意外と自らのキャリア・プランのヒントとして、或いは処世術として(これも新訳の帯に「無敵の処世術!」とある)、本書を読む人もいるかも知れませんが、一方で、著者の読者を煙に巻くような言い方が合わない人も多いのではないでしょうか(強いて言えば、努力することによって無能に到達するまでのステップを増やせ、という自助努力論であって、"処世術"とは少し違うのでは...)。

 個人的には、本書に横溢するパラドックスはユーモアとしてのものであると捉え、処世術の本としてではなく、ちょっとひねった感じの組織論の本として読んでいます。
 人事コンサルタントが「役職定年制」や「役職任期制」などを提案する際なども、この「ピーターの法則」を引くことが多く、組織論の1つの考え方、言い表し方として押えておいてもいいのでは。

 【1970年単行本[ダイヤモンド社(訳:田中融二)]/2002年単行本[ダイヤモンド社(訳:渡辺伸也)]】

《読書MEMO》
●「ピーターの法則」(田中融二氏訳)
「階層社会にあっては、その構成員は(各自の器量に応じて)それぞれ無能のレベルに達する傾向がある」
系1:「時がたつに従って、階層社会のすべてのポストは、その責任を全うしえない従業員(構成員)によって占められるようになる傾向がある」
系2:「仕事は、まだ無能のレベルに達していない従業員(構成員)によって遂行される」

    



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