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「●講談社現代新書」の インデックッスへ
最初に読むうつ病の本としてならば、オーソドックスで読みやすい。
『うつ病をなおす (講談社現代新書)』 ['04年] 野村 総一郎 氏(防衛医科大学教授) NHK教育テレビ「福祉ネットワーク」 '05.05.28 放映 「ETVワイド-"うつに負けないで"」より
「うつ病」の入門書であり、「うつ病」を「うつ病性障害」、「双極性障害(躁うつ病)」、「気分変調症」の3タイプに分け、代表的症状をわかり易く解説していますが、この内「うつ病性障害」が「大うつ病」と訳されているのに対し、このタイプを「うつ病」と呼び、いろいろなタイプを総括した呼び名を「気分障害」とした方が良いのでは、といった著者なりの考えも随所に織り込まれています。
「特殊なうつ病」や、うつ病ではないがうつ病に関連があると言われているタイプについても、「仮面うつ病」、「子供のうつ病」、「マタニティーブルー」や、「軽症うつ病」(「気分変調症」以外の「小うつ病」、「短期うつ病」など)、「双極2型障害」(ウツが重く躁が軽い)、「季節性うつ病」(冬だけ発症する)、「血管性うつ病」(高齢者に発症、アルツハイマーとは症状が異なる)などの解説がされていて、改めてウツには様々なタイプがあることを知りました。
患者の側に立って書かれている本でもあり、趣味・気晴らしもウツ気分の時はかえってエネルギー枯渇を招き、症状を悪化させることがあるといった指摘などもされています。
うつ病の人は休養するのが一番なのだが、「休むなんてとんでもない」というのがうつ病者独特の考え方であり、そこで著者の場合は、そうした努力好きの性格を利用して、「休暇を取る」ことだけに向けて「努力」してもらうよう説得するとのこと。
薬物療法についても、症状のタイプ別に「治癒アルゴリズム」という概念を用いて、一般に抗うつ剤や安定剤がどの段階でそのように処方されるかがわかり易く書かれているほか、精神療法については、それぞれに患者との相性の違いがあるとしながらも、その中で、元来うつ病の治療と予防を目的として作られた「認知療法」に的を絞って解説しています。
最初に読むうつ病の本としてはオーソドックスで読み易いものであるともに、網羅的でありながらさらっと読める分、やや物足りなさも。
最後に「うつ病」の病因について「こだわり遺伝子」という仮説を示していて、「物事の重みづけができない」ため「全てをやって初めて成功すると感じる」、逆にそれが出来ないと不全感に囚われストレスに見舞われるという、遺伝子に根ざす「こだわり」がその原因ではないかとしているのが、興味深い考察に思えました。