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何でもかんでも「劣化」ということで括って個々の問題の解決に繋がるのならともかく...。
『なぜ日本人は劣化したか』 (2007/04 講談社現代新書)
かつて、ゲームの世界では、RPGでは「ファイナルファンタジー」「ドラゴンクエスト」などの大作があり、個人的にはドラクエよりもFFの方が好きでしたが、ギリシャ神話が世界観をベースにした「ヘラクレスの栄光」というゲームも、なかなか味わい深いものがありました(「父親殺し」がテーマで、どちらかというと"オイディプス"よりむしろ"カラマゾフ"に近い)。
こんな思い出を言うのは、たまたま昔のゲームのことを思い出したことぐらいしか、本書には個人的に印象に残る部分が無く、本書によると、こうしたRPGのビックタイトルは最近出てなくて、売れているのは「脳トレ」のような「短時間で手軽に遊べる」「脳年齢が若返る」といったゲームばかりだそうです。
著者は、こうしたゲームの傾向をもって「コンテンツが劣化している」と言い、同様に、言葉の乱れを指して日本語は劣化しているとし、地べたに座り込む若者を見て体力も劣化しているとし、ともかく、おしなべて日本人の考える力が劣化し、知性は退廃していると、本書で述べています。
「劣化」ということで括って個々の問題の解決に繋がるのならともかく、「劣化」を連呼するだけ連呼して、特に個人としての解決案を示さず、「これをなんとか食い止めねばならない」で終わっているため、拍子抜けしてしまいます。
一時、著者が「愛国心」について書いたものを何冊か読みましたが、『〈私〉の愛国心』('04年/ちくま新書)において精神分析のタームを濫用しながら"素人政治談議"、"床屋談議"をしているのにやや辟易し、それでも、『いまどきの「常識」』('05年/岩波新書)などは、世相をざっと概観するには手軽だったかなあと。
しかし、本書においては、評論家がテレビや雑誌の限られた時間やスペースの枠内で、一般向けにどうでもいいようなコメントをしている(著者自身、その一員になりつつある?)、そうしたものを、ただ繋ぎ合わせただけという感じがします。
最近の著者は、この類の本を量産しているようで、講談社現代新書でもこれが初めてではないようですが、新書が「劣化」しているのか?
「売れるものはよいもの」という考えを著者は批判していますが、本人はどうなの、と言いたくなります(商売目的の粗製乱造なのか、本気で世直ししたいと思っているのか?)。
