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今もパリの片隅で写真の人物たちがこうして息づいているような...。
『パリ ドアノー写真集 (1)』['92年]
『パリ遊歩―1932-1982』['98年]
(30 x 22.6 x 1.4 cm)
『パリ』は、リブロポート刊行のロベール・ドアノー(Robert Doisneau 1912-1994)の写真集の1冊で、この人の作品で最も知られているのは、表紙にもある、ライフ誌の"パリの恋人"という企画で発表された「市庁舎前のキス」('50年)でしょう。
広告業界からフォトジャーナリズムの世界に進み、戦場写真なども撮っていた人であるため、カルティエ=ブレッソン流の所謂「決定的瞬間」(この言葉、今橋映子氏によると"誤訳"であり、実際は「 かすめ取られたイマージュ」という意味らしいが―『フォト・リテラシー』('08年/中公新書)より)を掴まえる名手との評判が高まったけれども、この写真が有名になると、モデルを務めた多くの人からモデル代やネガの要求があり、実は多くの人に声かけして何枚もこうした写真を撮ったことが後に判明、この写真の女性も女優であり、後にドアノーからネガを贈られています。

そうであってもいい写真には違いない、但し、この写真は、この人の作品に「お洒落」というイメージが主として伴う一因になっているように思え、このパリ写真集を見ると、むしろ「お洒落」というより「エスプリ」に満ちた楽しい写真が多いような気がします(ヌード写真を街角にかざして、通りがかりの人の反応を撮るといったようなこともやっている)。
但し、一方で、パリの暗い部分もモチーフにしていて、浮浪者やアル中っぽい感じの人も多く撮っており、これらの哀感が漂う写真も、ある種"攻撃的"なエスプリと言えなくもなく、また、この人が撮る夜の居酒屋など写真には、喧騒と退廃に満ちた何とも言えないシズル感があります。
個人的には、この写真集の後半に出てくる、あまりドアノーの代表作として通常は前面に出てこないような、無頼の"マドロス"風の男や、公園で力技を披露する"ストロングマン"、サーカスの"軽業師"、ストリップ小屋の"ダンサー"や、肉屋のいかにも"ブッチャー"という感じの親爺さんなどの写真から、何となく、今もパリの片隅で彼らがそうして息づいているような印象を受け(自分自身がタイムスリップしたような感じ)、心に残りました。
ドアノーのパリ写真集は、この後『パリ遊歩 1932‐1982』('98年/岩波書店)というのが出ていて、大判ではないですが665ページもあり、各ページに大体1葉、キッチリ作品が収められており、量的には圧倒されるとともに、これを見ても、やっぱりこの人の持ち味は「エスプリ」だなあと。
その約600葉の写真のほぼ全てに、撮影場所と撮影年が記されているのが親切ですが、ページ数が多い割にはソフトカバー、且つ絶版で価格がプレミア価格になっているのがやや難であるといった感じ、図書館でたまたま見つけることができて幸運でした。
