【1059】 ◎ バスター・キートン/クライド・ブラックマン 「キートンの大列車強盗 (将軍/The General)」 (26年/米) (1926/12 東和) ★★★★☆ (○ ジェラルド・パッタートン 「キートンの線路工夫」 (65年/カナダ) ★★★☆/○ ジョン・スポットン 「キートン・ライズ・アゲイン」 (65年/カナダ) ★★★☆)

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「キートン・ライズ・アゲイン」でレール・テクニックが体に染み付いたものだったことを知る。

キートンの大列車追跡.jpg世界名作映画全集 99 キートンの大列車追跡.jpg 『キートンの大列車追跡』(1926) 21.jpg Buster Keaton.jpg
世界名作映画全集99 キートンの大列車追跡 [DVD]
「キートンの大列車追跡」1977年リバイバル公開時チラシ

THE GENERAL  Buster Keaton.jpg アメリカ南北戦争を舞台にした機関車追跡劇。キートンが機関士を務める蒸気機関車の名が「将軍(General)」。愛する機関車を北軍に奪われ、彼は別の機関車で追走するが、その奪われた機関車には彼の恋人も乗っていた―。


キートン将軍 vhs.jpg キートン黄金期の代表作で、日本初公開時のタイトルは「キートン将軍」で、後に「キートンの大列車強盗」となり、70年代のリバイバル上映時に「キートンの大列車追跡」という邦題になっていますが、その方が内容に沿ったタイトルと言『キートンの大列車追跡』(1926) .jpgえるかも(80年代の渋谷ユーロスペースでの自主上映では「キートンの大列車強盗」のタイトルを使用し、最近のフィルムセンターでの上映は「キートン将軍」、シネマヴェーラ渋谷での上映では「キートンの大列車強盗」を使用している)。

 最後の方で本物の機関車を鉄橋ごと川に落下させるシーンがあり、この場面だけで映画製作予算42万ドルの大半を使っているとのことです。そうしたスケールの大きさもさることながら、とにかく、機関車の線路の切り替えのテクニックを使ったアクション描写が巧みな映画でした。今でこそキートン映画の上映会の定番作品ですが、公開当時の評価は「かつての労作より遥かに劣る」(NYタイムズ)など惨憺たるもので、興行収入も「拳闘屋キートン」('26年)の77万ドルに対して47万ドルに止まったということです。

 キートンは、MGM解雇、離婚やアルコール中毒などによる没落期を経て、50代半ば頃から映画界に復帰しましたが(「サンセット大通り」('50年)に"かつての大物俳優"役で出演している)、70歳近くなった晩年にも「線路工夫(The Railrodder)」('65年/カナダ、ジェラルド・ポタートン監督)という25分ほどの小品を撮っています。

The Railrodder dvd.jpg これは、カナダ観光局がキートンを招聘して作った作品で、ロンドンにいたキートンがふとした思いつきでカナダに渡り(泳いで!)、偶々休息をとったトロッコ(カナディアン・ナショナル鉄道の「CN」のロゴ入り)が動き出して、結局それに乗って風光明媚なカナダの各地を旅するという、いわば「レイルロード・ムービー」。背景的に登場する人はいるものの、出演者は実質、終始The Railrodder 11.jpgトロッコに乗りカナダ各地を駆け抜ける(その間トロッコに乗ったまま、料理したり洗濯したり鳥撃ちしたり編み物したりする)キートンのみで、カラー作品ではあるもののセリフ無しという無声映画のスタイルを踏襲しています。「大列車強盗」と同趣の、つまり"レール・テクニック"を前面に押し出したものとなっており、高齢となったキートンが自らアクションっぽいこともやっていれば、随所でしっかり笑いもとっています。人生に浮き沈みのあったキートンが、晩年にこうした原点回帰的な作品を撮っているというのは嬉しいことであり、それがドラマなどでなく、純粋にテクニカルな要素を前面に出した、スピード感溢れる乾いたコメディになっている点が尚のこと良いです。爆笑コメディと言うより、キートンが次々と繰り出す懐かしいギャグやクスッと笑える妙技を(サイレント時代と同じく笑わないが、"無表情"ではなく表情豊かになっている点に注目)、カナダの美しい風景と共に楽しめる作品で、キートンを招聘したカナダ観光局にも一票を投じたく思います。
                     "Buster Keaton Rides Again / The Railrodder "(輸入版)
BUSTER KEATON RIDES AGAIN1.jpgRailrodder & Buster Keaton Rides Again.jpg その「線路工夫」もさることながら、「線路工夫」のメイキング・ムービーである「キートン・ライズ・アゲイン」('65年/カナダ)というのがこれまた興味深く、70歳に間近いキートンが、自ら線路の切り替えテクニックの指導をし、しばしばとり憑かれたように自分で機械の調整や操作をしています。この記録映画の中で老優の日常の生活ぶりも紹介されていますが、個人的には、「線路工夫」の撮影の様子が、失った何かを取り戻そうとしている老人に見えて、切ないような印象も受けました。でも、「線路工夫」の見事な出来映えからするに、70歳間際であれだけのものを作ろうとするならば、やはり、とてつもない集中力(気力・体力)が必要なのだろなあとも思いました。

 共にキートンが亡くなる1年前の映像ですが、とりわけ「キートン・ライズ・アゲイン」により、老優の映画と機関車への執着を感じさせるとともに、「大列車強盗」におけるレール・テクニックが彼の体の真底に染み付いたものであったことを、改めて思い知りました。

キートンの大列車強盗 vhs.jpgBUSTER KEATON THE GENERAL.jpg「キートンの大列車強盗 (将軍)」●原題:THE GENERAL●制作年:1926年●制作国:アメリカ●監督・脚本:バスター・キートン/クライド・ブラックマン●製作:ジョセフ・M・シェンク●撮影:デヴラクス・ジェニングス/バート・ヘインズ●音楽:コンラッド・エルファース●時間:106分●出演:バスター・キートン/マリオン・マック/グレン・キャベンダー/チャールズ・スミス●日本公開:1926/12●配給:東和●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-21)●2回目:池袋文芸座ル・ピリエ(86-02-01)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「キートンのカレッジ・ライフ(大学生)」(バスター・キートン)/「キートンの線路工夫」(ジェラルド・ポタートン)●併映(2回目):「我輩はカモである」(マルクス兄弟)

BUSTER KEATON The Railrodder1.jpgBUSTER KEATON The Railrodder01.jpg「キートンの線路工夫」●原題:THE RAILRODDER●制作年:1965年●制作国:カナダ●監督・脚本:ジェラルド・パッタートン●製作:ジュリアン・ビッグス/ナショナル・フィルム・ボード・オブ・カナダ作品●撮影:ロバート・ハンブル●音楽:エルドン・ラスバーン●時間:25分●出演:バスター・キートン●日本公開:1980/02●配給:有楽シネマ●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-21)(評価:★★★☆)●併映:「キートンの大列車強盗 (将軍)」(バスター・キートン)/「キートンのカレッジ・ライフ(大学生)」(バスター・キートン)

BUSTER KEATON RIDES AGAIN 2.jpgBUSTER KEATON RIDES AGAIN2.jpg「キートン・ライズ・アゲイン」●原題:BUSTER KEATON RIDES AGAIN●制作年:1965年●制作国:カナダ●監督・撮影:ジョン・スポットン●製作:ジュリアン・ビッグス/ナショナル・フィルム・ボード・オブ・カナダ作品●時間:61分●出演:バスター・キートン/エレノア・キートン/ジェラルド・ポタートン●日本公開:1980/02●配給:有楽シネマ●最初に観た場所:アートシアター新宿 (84-05-27)(評価:★★★☆)●併映:「キートンの文化生活一週間」(バースター・キートン)/「デブ君の浜遊び」(バースター・キートン)/「デブ君の自動車屋」(ロスコー・アーバックル)

「荒武者キートン」チラシ(1977(昭和52)年/日劇文化)
キートンの大列車強盗13-0.jpg 

キートンの大列車強盗13-1.jpg
 
爆笑コメディ劇場1.png爆笑コメディ劇場 DVD10枚組 キートン将軍 我輩はカモである マルクス兄弟オペラは踊る キートンの蒸気船 猛進ロイド キートンの大学生 ロイドの牛乳屋 チャップリンの拳闘 チャップリンの舞台裏 チャップリンの駈落 BCP-047

バスター・キートン Talking KEATON DVD-BOX.jpgバスター・キートン Talking KEATON DVD-BOX
【収録作品】
1「キートンのエキストラ」FREE AND EASY 1930年 90分
監督:エドワード・セジウィック 出演:アニタ・ペイジ/ロバート・モンゴメリー
2 「キートンの決死隊」 DOUGHBOYS 1930年 79分
監督:エドワード・セジウィック 出演:クリフ・エドワーズ/サリー・アイラース
3「キートンの恋愛指南番」PARLOR, BEDROOM AND BATH 1931年 72分
監督:エドワード・セジウィック 出演:シャーロット・グリーンウッド/レジナルド・デニー
4 「紐育(ニューヨーク)の歩道」SIDEWALKS OF NEW YORK 1931年 73分
監督:ジュールス・ホワイト/ジオン・マイヤーズ 出演アニタ・ペイジ/クリフ・エドワーズ
5 「キートンの決闘狂」 THE PASSIONATE PLUMBER 1932年 74分
監督:エドワード・セジウィック 出演:オーギュスト・トレール/アイリン・パーセル
6「キートンの歌劇王」SPEAK EASILY 1932年 82分
監督:エドワード・セジウィック 出演:ルース・セルウィン/セルマ・トッド
7「キートンの麦酒王」 WHAT NO BEER? 1933年 66分
監督:エドワード・セジウィック 出演:フェリス・バリー/ジミー・デュランテ
【特典ディスク】「キートンの大列車追跡」 THE GENERAL 1926年 106分
監督:バスター・キートン/クライド・ブラックマン 出演:マリアン・マック/グレン・キャベンダー

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