【1060】 ○ エーリッヒ・フォン・シュトロハイム 「グリード」 (24年/米) (1926/11 MGM) ★★★☆

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人間の強欲を皮肉をこめて描く、完璧主義者シュトロハイムらしい作品(オリジナルは9時間半)。

グリード.jpg greed 1.jpg 「グリード [DVD]」 Erich von Stroheim.bmp Erich von Stroheim

 サンフランシスコでヤミ歯科医をしている主人公マクティーグは、友人マーカスの恋人トリーナに横恋慕し、マーカスから彼女を譲って貰って妻にしたのだが、そのトリーナがある日5千ドルの宝くじを当てたため、マーカスはこれを妬んでマクティーグが無許可医であることを告発、一方、トリーナは5千ドルを守ろうと極端に倹約に走り、失職したマクティーグは妻のそうした態度に我慢できずに彼女を殺して金を奪い死の谷へ逃走。それを追うマーカスと灼熱の谷で5千ドルを奪い合う―。

 人間の強欲さ(greed)を描いた作品で、何だか、「三つの願い」を叶えて貰えることになった欲の張った夫婦が欲にかまけてそのチャンスを全て無駄にしてしまうという昔話を思い出しましたが、フランク・ノリスの原作小説『マクティーグ』は実話に基づいているとのこと。

greed 2.jpg 最後の男2人の死の谷での死闘は、モノクロ画面のお陰で却って灼熱感があり壮絶で、その後の「莫大な金はあっても一杯の水が無い」という "落ち"は確かに皮肉が効いていますが、映画全体としてはむしろ、大金を手にしたトリーナが、それを無駄遣いしてはならない思いから、いつの間にか常軌を逸した吝嗇家になっていく様の方が印象的で、こっちの方が人間心理の怖さを表しているかも知れないと感じました(この監督は女性をシニカルに描く傾向にある?)。

 完璧主義者エーリッヒ・フォン・シュトロハイム(Erich Von Stroheim、1885‐1957)監督の長編サレント映画作品はどれも途方もない長編で、現存しているのはすべて極端に短縮されているものばかりであり、この作品も、完成時は9時間半あったそうですが、知人宅で8mmフィルムで観たものは約100分の短縮版で、どうしても話が飛び飛びになってしまうきらいはありました(一般向けにビデオ化、DVD化されているものも、同じく短縮版)。

 シュトロハイムはスタジオセットを用いずオール・ロケでこの映画を撮っていますが、死の谷の場面の撮影では、暑さに耐えかねて体調を悪くするスタッフが続出し、死人も出たというから、スゴイ、そこまでやるかという感じ。
 その他にも、無声映画なのに出演者に台詞を全部暗記させたとか、この映画のために自宅や自家用車を抵当に入れたとか、完璧主義者らしい逸話に事欠かない作品ですが、如何せん長すぎて、映画会社上層部の意向でどんどん短縮編集されていったのは彼にとって気の毒(但し、9時間半全部を観たいかというと、個人的にもさすがにそんな気は起きないのだが)。

 こうした仕打ちに嫌気がさしたのかどうかは知りませんが、1920年代には監督としてのキャリアに終止符を打ち、俳優として活躍。ジャン・ルノワールの「大いなる幻影」('37年)の貴族出身のドイツ将校役、ビリー・ワイルダーの「サンセット大通り」('50年)の執事役の名優ぶりはよく知られているところです。

「グリード」●原題:GREED●制作年:1924年●制作国:アメリカ●監督:エーリッヒ・フォン・シュトロハイム●製作:MGMスタジオ●製作総指揮:ルイス・B・メイヤー●脚本:エーリッヒ・フォン・シュトロハイム/ジューン・メイシス●撮影:ベン・F・レイノルズ/ウィリアム・ダニエルズ●原作:フランク・ノリス「マクティーグ」●時間:100分●出演:ギブソン・ゴウランド/ザス・ピッツ/ジーン・ハーショルト●日本公開:1926/11●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (80-12-27) (評価★★★☆)

     



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和田泰明

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