【1073】 ○ チャールズ・ディケンズ (村岡花子:訳) 『クリスマス・カロル (1952/11 新潮文庫) ★★★☆ (△ リチャード・ドナー 「3人のゴースト」 (88年/米) (1988/12 パラマウント映画) ★★★)

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文豪が大衆や子供たちに向けて贈ったクリスマス・ストーリー(寓話)。意外とコミカル。

クリスマス・カロル 新潮文庫.jpgクリスマス・カロル 新潮文庫.bmp 『クリスマス・カロル (新潮文庫)』 A Christmas Carol.jpg "A Christmas Carol " (洋書ハードカバー)

 1843年12月17日に出版された英国の文豪チャールズ・ディケンズ(1812‐1970/享年58)の中編小説。ロンドンの下町近くに事務所を構える商人で、偏屈で人間嫌い、金の亡者であるスクルージは、クリスマス・イブの夜もクリスマスなど自分には関係ないとして、甥のパーティへの誘いも断り事務所にいたが、そこへかつての共同経営者であり7年前故人となっていたマーレイの亡霊が現れ、更に3晩続けて3人の幽霊が現れると告げる―。

 物語は吝嗇家のスクルージが3人の幽霊に導かれて自らの過去・現在・未来を見せられるという超自然的な体験を軸に展開し、その描写が、ディケンズらしい社会派リアリズムと、この寓話の特性としてのシュールさが相俟って面白かったです(もともと、マーレイの亡霊が現れるところからシュールであるとともに、時にリアルなホラーになっていて不気味だったりするのだが)。
Scrooge & Scrooge
scrooge2.jpgSCROOGE.jpg また、スクルージと幽霊のやりとりはかなりコミカルであり、頑固で神経質なスクルージのキャラクターは、個人的には、ディズニーのドナルドダックの伯父さんであるスクルージのキャラクターとよく符合したように思います。

 超常体験を通してスクルージは改悛し、自らの価値観が誤っていたことを悟って貧者への思いやりに目覚めるというのも予定調和ですが、この結末から窺えるように、もともとスクルージは悪人ではないわけで、こうしたスクルージという人物の本質を突いたディズニーのキャラクター造型というのもなかなかのものだと思ったりもします(この作品に対しては、スクルージの描き方が漫画的であるという批判もあるようだが、もともと文学というより寓話に近いのでは)。

 文豪が大衆や子供たちに向けて贈ったクリスマス・ストーリーということになるのでしょうが(新潮文庫版の翻訳は『赤毛のアン』シリーズの翻訳で知られる村岡花子(1893-1968))、クリスマス・ストーリーの中では最も有名なもので、何度か映画化やミュージカル化もされていています。

Scrooged (1988)
SCROOGED2.bmp3人のゴースト.jpg 自分が観たのは、話を現代に置き換えたリチャード・ドナー監督、ビル・マーレイ主演の「3人のゴースト」(Scrooged、'88年/米)で(ビル・マーレイは「ゴーストバスターズ」('84 年/米)にも主演していて、幽霊繋がり?)、映画では主人公は"金の亡者"ならぬ"視聴率の亡者"であるテレビ局の若社長になっていて、登場する"ゴースト"がタクシー運転手だったり女妖精だったりとバラエティ豊かですが、一応、原作のストーリーは押さえている感じでした。

 但し、こうした古典的寓話を複雑な現代社会に置き換えても、なかなかヒューマンな部分は伝わりにくいという感じもし(主人公が最後に自分の局の番組の中で慈善演説をぶつのも、ややわざとらしい)、マイルス・ディヴィスなど有名人が顔見せ的に画面に登場するなどしていて、映画を作る側も感動させるというより、ひたすら楽しんで(やや開き直って?)作っている感じがしました。

「3人のゴースト」●原題:SCROOGED●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:リチャード・ドナー●製作:アート・リンソン/リチャード・ドナー●製作総指揮:ステファン・J・ロス/●脚本:ミッチ・グレイザー/マイケル・オドノヒュー●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:ダニー・エルフマン●原作:チャールス・ディッケンス「A Christmas Carol」●時間:101分●出演:ビル・マーレイ/カレン・アレン/ジョン・フォーサイス/ボブキャット・ゴールスウェイト/デビッド・ヨハンセン/キャロル・ケイン/ロバート・ミッチャム●日本公開:1988/12●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:名古屋毎日ホール(88-12-30)(評価:★★☆)●併映:「星の王子ニューヨークへ行く」(ジョン・ランディス)

 【1950年文庫化[岩波文庫〕/1950年再文庫化[角川文庫〕/1952年再文庫化[新潮文庫〕/1969年再文庫化[旺文社文庫〕/1984年再文庫化[講談社青い鳥文庫(『クリスマス・キャロル』)〕/1991年再文庫化[集英社文庫(『クリスマス・キャロル』)〕/2001年再文庫化[岩波少年文庫(『クリスマス・キャロル』)〕/2006年再文庫化[光文社古典新訳文庫(『クリスマス・キャロル』)〕】

                



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和田泰明

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