【1083】 ○ サルヴァトーレ・サンペリ 「スキャンダル」 (76年/伊) (1977/06 日本ヘラルド映画) ★★★★ (○ アルベルト・ラットゥアーダ 「スキャンドール 禁じられた体験」 (80年/伊) (1982/02 ジョイパックフィルム) ★★★☆)

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"熟年女優"ぶりが印象的だったリザ・ガストーニとヴィルナ・リージ。

「スキャンダル」.jpg スキャンダル ポスター.jpg スキャンダル.jpg  スキャンドール ポスター.jpg LA CICALA 1.jpg
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「スキャンダル」(監督:サルバトーレ・サンペリ/出演:リザ・ガストーニ)チラシ
Lisa Gastoni LO SCANDALO.jpgLisa Gastoni & Franco Nero in Lo Scandalo
Lisa Gastoni & Franco Nero in Lo Scandalo.jpg「スキャンダル」('76年/伊)は(イタリア映画なのだが)第2次大戦下の南フランス・プロヴァンスが舞台で、大学教授の妻エリアーヌ(リザ・ガストーニ)が、自らが営む薬局で働く雑役夫アルマン(フランコ・ネロ)に、女店員と間違えられて抱きつかれたことを契機に、彼と性交渉を持つようになり、上流階級への怨念を抱く雑役夫のもと、彼の肉体の奴隷となっていくというもの。雑役夫は、女店主の15歳の娘ジュスティーヌ(クラウディオ・マルサーニ)にも手を出すが、大学教授の妻はむしろそれに嫉妬する有様で、雑役夫の命令でどんな辱めも受けるという完全な主従逆転状態に陥る―。

●リザ・ガストーニ Lisa Gastoni
Lisa Gastoni2.jpgLisa Gastoni2.jpgLisa Gastoni.jpg サルヴァトーレ・サンペリの演出と「暗殺の森」(70年/伊・仏・西独)のヴィットリオ・ストラーロのカメラは「青い体験」('73年/伊)と同じコンビで、主演のリザ・ガストーニ(Lisa Gastoni 、1935年生まれ)が美しく高貴な人妻が堕ちていく様を身体を張って演じており、マカロニ・ウェスタンの俳優というイメージがあったフランコ・ネロもネクラかつサディステックな雑役夫をしっかり演じていて、"イタリアン・エロス"映画とか言われるけれども、ある種、家族の崩壊を描いた文芸作品と言えるかもしれません。

クラウディオ・マルサーニ5375.jpg 女店主エリアーヌは、彼女の15歳の娘まで雑役夫アルマンに差し出してしまい、しかもその2人に嫉妬するといった有様で、最後には絶望の淵に追い込まれるわけですが、雑役夫との関係がスキャンダルにクラウディア・マルサーニ 家族の肖像.jpgなろうとも性愛の道を突き進むその姿は、一時のこととは言え、退屈なインテリである夫からの束縛を逃れ、自らの解放を果たしたというふうにもとれるかと思います。一方の雑役夫アルマンは、母だけでなく娘も籠絡したわけですが、そこには階級克服的な動機も色濃くあるように思われました(因みに、15歳の娘ジュスティーヌを演じたクラウディオ・マルサーニは、本作の2年前、ルキノ・ヴィスコンティの「家族の肖像」('74年/伊)にもシルヴァーナ・マンガーノの娘役で出ていた)。

●クラウディア・マルサーニ Claudia Marsani /with シルヴァーナ・マンガーノ in 「家族の肖像」('74年/伊) by ルキノ・ヴィスコンティ

 サルヴァトーレ・サンペリは"ネオ・レジスタ"グループの代表格ともされており、この作品には上流階級の脆弱・崩壊というものがバックテーマとしてあるようです。妻のすべての告白を聞いてもただ涙を流すしかない大学教授の夫(そのくせ、自分のコレクションを妻が誤って壊すと怒る)には、"知識人階級"への批判も込められているように思えました。

●クリオ・ゴールドスミス Clio Goldsmith 「スキャンドール(LA CICALA)」
LA CICALA 2.jpgLa Cicala2.jpgLA CICALA.jpg "イタリアン・エロス"系では、少し似たようなタイトルで「スキャンドール」('80年/伊)というものもあり、行きずりの少女チカラ(クリオ・ゴールドスミス)と共に旅していた歌手(ヴィルナ・リージ)が、旅先で知り合ったレストラン経営者と結婚しガソリンスタンドをLA CICALA2.jpg切り盛りするようになLA CICALA1.jpgり、そこに呼び寄せた娘(バーバラ・デ・ロッシ)と共に男1人女3人の生活を始めるが、やがて男を巡って娘と骨肉の争いをするというもので、「スキャンダル」と少し似ているかもしれません。この映画も、エロチックですが、演出はしっかりしています。
●バーバラ・デ・ロッシ Barbara De Rossi
"La cicala" - Regia Alberto Lattuada - 1980 - Barbara De Rossi

LA CICALA3.jpg クリオ・ゴールドスミスとバーバラ・デ・ロッシの同性愛的関係もあって、ストーリー的にはもうこの家族は一体どうなってるのという感じです。まあ、とことんやってくれる点がイタリアっぽくていいとも言えるのですが...。

 原題"チカラ"はイタリア語で「セミ(蝉)」の意。クリオ・ゴールドスミス演じるところの、ガソリンスタンドの住み込み店員となって、こうした出来事の推移を目の当たりにし、自らもその異常事態に巻き込まれている少女チカラですが、この映画に出てくる「男1人女3人」の中では唯一ノーマルな存在と言えるかも。最後は彼女が、セミが木から飛び立つように店から逃げ出すところで終わります。

●ヴィルナ・リージ Virna Lisi
ヴィルナ・リージ.bmpVirna Lisi2.jpgVirna Lisi 1937.jpg 主演のヴィルナ・リージ(Virna Lisi、1937年生まれ)は、若い頃はジャック・レモン主演の「女房の殺し方教えます」('64年/米)などにも出たりしましたが、演技派指向なのに英語の話せないイタリア人の役をあてがわれ、結局、自分をセクシー女優としてしか見ないハリウッドに見切りをつけ、主にヨーロッパで"演技派"兼"セクシー女優"として活躍した人。

 ヴィルナ・リージは「スキャンドール」にはノーメークで出ていますが、当時43歳だったけれども美貌は健在で(役柄上、少し怖さもあったが)、「スキャンダル」に出た時41歳だったリザ・ガストーニと並び、強烈な印象を抱かされたイタリア"熟年"女優でした。実はエヴァの匂い_2.jpgこの2人はもっと若い新人時代の頃に、ジョセフ・ロージー監督の「エヴァの匂い」('62年/仏)に共に出演しています。主役はジャンヌ・モロー(1928年生まれ)で、モローが演じる女性主人公のエヴァが男を惑わすファム・ファタール役で、ヴィルナ・リージはスタンリー・ベイカー演じる男性主人公である自分の恋人をエヴァに奪われ自殺する女性というかなり重要な役回りで、一方のリザ・ガストー二の方はパーティに出ていた女性たちの一人といった端役っぽい役だったように記憶してします。

ヴィルナ・リージ (Virna Lisi,1936-2014)in「エヴァの匂い」('62年/仏)
 
LO SCANDALO 1976.jpg「スキャンダル」●原題:LO SCANDALO(SCANDAL/SUBMISSION)●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督:サルヴァトーレ・サンペリ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:オッタヴィオ・ジェンマ/サルヴァトーレ・サンペリ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロLisa Gastoni (Scandalo, 1976).jpgスキャンダル [DVD] リザ.png●音楽:リズ・オルトラーニ●時間:107分●出演:リザ・ガストーニフランコ・ネロ/レイモン・ペルグラン/ク三鷹オスカー.jpgラウディオ・マルサーニ/アンドレア・フェレオル●日本公開:1977/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:三鷹東映(78-02-04)●2回目:五反田TOEIシネマ(83-09-18)(評価:★★★★)●併映(1回目):「ラストタンゴ・イン・パリ」(ベルナルド・ベルトリッチ)/「O嬢の物語」(ジュスト・ジャキャン)
Lisa Gastoni (Scandalo, 1976) 「スキャンダル [DVD]
三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。

スキャンドール ポスター2.jpg「スキャンドール 禁じられた体験」●原題:LA CICALA●制作年:1980年●制作国:イタリア●監督・脚本:アルベルト・ラットゥアーダ●製作:イブラヒム・ムーサ●撮影:フレッド・ボンガスト●音楽:ダニロ・デジデリ●原作:ナターレ・プリネット/マリナ・デ・レオ●時間:99分●出演:アンソニー・フランシオーサ/ヴィルナ・リージ/レナート・サルSet del film ヴァトーリ/クリオ・ゴールドスミスバーバラ・デ・ロッシ/マイケル・コビー●日本公開:1982/02●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:池袋日勝地下劇場(82-05-03)●2回目:新橋文化劇場(83-09-17)(評価:★★★☆)●併映(2回目):「ホテル」(カルロ・リッツァーニ)
「スキャンドール」撮影風景 "La cicala" - Alberto Lattuada - 1980 - le attrici Clio Goldsmith e Barbara De Rossi

日勝地下.jpgビックカメラ池袋.jpg池袋.jpg池袋スカラ座・日勝地下.jpg池袋スカラ座・池袋日勝地下劇場・池袋日勝映画劇場・池袋日勝文化劇場(現・池袋東口ビックカメラ池袋本店付近)1995(平成7)年6月25日閉館
③池袋東急 ④池袋スカラ座 ⑮池袋日勝地下劇場 ⑬池袋日勝映画劇場 ⑭池袋日勝文化劇場

池袋スカラ座/池袋日勝文化 菅野 正 写真展 「平成ラストショー hp」より  
池袋日勝 日勝文化 6月25日.jpg 池袋日勝.jpg 
青木 圭一郎 『昭和の東京 映画は名画座』(2016/03 ワイズ出版)より
昭和の東京 映画は名画座  池袋.jpg

日勝映画.png・1937年 池袋日勝映画館オープン
・1946年10月 - 池袋日勝映画劇場として再オープン
・1951年12月 - 池袋日勝地下劇場オープン
・1960年前後 - 池袋日勝文化劇場、池袋松竹劇場オープン
・1963年 - 池袋松竹劇場を池袋スカラ座と改称
・1995年 - 4館ともすべて閉館

imagesCA9GCJE5.jpg新橋文化劇場 内.jpg新橋文化劇場.jpg新橋文化劇場・新橋ロマン劇場 1957年ニュース映画の専門館として新橋駅烏森口JR浜松町方向ガード下にオープン、1958年に洋画の「新橋文化劇場」と邦画の「新橋第三劇場」が新設、1979年~洋画の「新橋文化劇場」邦画の「新橋ロマン劇場」に。
2014(平成26)年8月31日閉館

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サルバトーレ・サンペリ 2009年3月4日、ローマ郊外の自宅で死去、64歳。
ヴィルナ・リージ 2014年12月18日、ローマの自宅で死去、78歳。

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