【1097】 ◎ ルイ・マル (原作:ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル) 「鬼火」 (63年/仏) (1977/08 フランス映画社) ★★★★★

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自殺をする人というのは、自分で自分が自殺するという「脚本」を書いているのだなあと。

鬼火dvd.jpg 「鬼火 [DVD]」 鬼火.jpg 「鬼火 [DVD]」  ドリュ・ラ・ロシェル『ゆらめく炎』2.jpg ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル 「人間の文学〈第8〉ゆらめく炎 (1967年)

LE FEU FOLLET (輸入版DVD)
LE FEU FOLLET.bmp アルコール中毒で治療院に入院し、死にとりつかれたアラン(モーリス・ロネ)という男の、彼が自殺に至るまでの最後の48時間を追った作品。
 原作は、ピエール・ドリュ・ラ・ロシェルの『ゆらめく炎』('80年/河出書房新社)で、この原作者自身も自殺しています。

鬼火 ポスター.jpg アランは、治療院を一時出てパリに行き、旧友と再会したりしますが、彼らはあまりに凡庸なマイホーム主義の中に自己を埋没させていて、彼はその凡庸さを嫌悪します。
 或いは、かつての恋人エヴァ(ジャンヌ・モロー)の場合だと、彼を受け容れはするものの、彼女自身が麻薬漬けの退廃生活に陥ってしまっていて、やはり、アランに生き方の指針を示すようなものではありませんでした。

Le Feu follet2.jpg 彼の厭世観と孤独は深まるばかりで、医者に禁じられているアルコールにも手を出し、そうしながらも、昔馴染みのソランジュ(アレクサンドラ・スチュワルト)が催す晩餐会に出たりもしますが、誰も彼の話すことを理解しようとはせず、一層疎外感を募らせるだけで、この映画の登場人物で最もアランのことを理解していると思われるソランジュさえも、「気の毒な人」という感じでアラン見送るほかありません。

 アランは晩餐会の翌朝、治療院に戻り、読みかけのフィッツジェラルドの本を読み終えると、ピストルで自分の人生の幕を静かにおろします。
 「僕は自殺する。君達も僕を愛さず、僕も君達を愛さなかったからだ。だらしのない関係を緊め直すため、君達のぬぐいがたい汚点を残してやる」と書いた手紙を残し。

Le Feu follet3.gif アランが自殺したのは7月23日で、これは冒頭の治療院の場面で壁の鏡に書かれていた日と同じであり、彼は最初から自殺を決意していたことがわかります。

 確かにアランの抱える虚無感は根深い。但し、この作品を観て先ず思ったことは、自殺をする人というのは、自分で自分が自殺するというストーリーの「脚本」を書いているという面があるのではないかということです。
 この映画ぐらい、そのことがよくわかる映画は無く、個人的には、もしも自殺を考えている人がこの映画を観たら、逆に踏みとどまるのではないかという気もします。

LE FEU FOLLET1.bmp エリック・サティ(1866-1925)のピアノが、淡々とした描写を自然に繋いでいて、時にそれは死への甘美なる誘いを醸しているようにも思えます。
 モーリス・ロネ(1927-1983/享年55)の抑制の効いた演技も素晴らしく、アランという複雑な性格の主人公を、驚異的な集中力をもって演じていたように思います。

 今思うに、アランの純粋さは、「シゾイド」(統合失調質)型の人格の特徴と一致するかも。
 あまりに純粋過ぎて、「世間」と妥協することでできない気質であるともとれます。

鬼火パンフ.jpg ただ、「アル中」であり「シゾイド」であるとなると、アランのケースは何か特殊なもののように思われそうですが、飲み友達は多くいても(アランはかつては社交会で鳴らした存在だった)、真に価値観を共有したり、心を通わせ合ったりする友人はいないという点では、アランの孤独は、現代人の孤独に通じるものがあるように思います。

「鬼火」 パンフレット

文芸坐.jpg「鬼火」●原題:LE FEU FOLLET●制作年:1963年●制作国:フランス●監督・脚本:ルイ・マル●撮影:ギスラン・クロケ●音楽:エリック・サティ●原作:ピエール・ドリュ・ラ・ロシェル「ゆらめく炎」●時間:108分●出演:モーリス・ロネ/ベルナール・ノエル/ジャンヌ・モロー/アレクサンドラ・スチュワルト●日本公開:1977/08●配給:フランス映画社●最初に観た場所:池袋文芸坐 (78-02-20)(評価:★★★★★)●併映:「ローマに散る」(フランチェスコ・ロージ)
池袋文芸坐 1997(平成9)年3月6日閉館/2000(平成12)年12月12日〜「新文芸坐」(写真提供:新文芸坐)

     



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和田泰明

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