【1123】 ○ 崔 洋一 「十階のモスキート (1983/07 ATG) ★★★☆ (○ 崔 洋一 (原作:梁石日) 「月はどっちに出ている (1993/11 シネカノン) ★★★★)

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荒削りだが骨太感がある崔洋一監督のデビュー作「十階のモスキート」。

十階のモスキート パンフ.jpg 十階のモスキート.jpg 「十階のモスキート [DVD]」 月はどっちに出ている.jpg月はどっちに出ている [VHS]

 出世の見込みも無く、妻にも離婚された警察官の男は、原宿のロックンロール族に狂って家を出た娘がたまに金をせびりに男の住まう団地の十階を訪ねた時だけは甘い父親になるが、それ以外では酒とギャンブルとセックスに浸る虚無的で堕落し切った暮らしぶりで、元妻への慰謝料や毎月の養育費、バーのツケやギャンブルの借金に追われ、ついには昇進試験の勉強のためにサラ金から借金して購入したパソコンを団地の窓から放り投げ、そのまま郵便局へ駆け込み強盗を図る―。

十階のモスキート2.jpg 「十階のモスキート」('83年/ATG)は崔洋一監督のデビュー作で、映画としての作りは粗く、主人公の警察官の短絡行動にはただ呆れるばかりであるはずであるのに、何か観ていて身につまされるような痛々しさを感じるのはなぜだろうか。
 若松孝二監督の「水のないプール」('82年/東映セントラル)などで既に俳優としても注目されていた内田裕也が、経済的に追い詰められることで徐々に精神的にも追い詰められていく主人公を好演していて、最後はちょっとシュールな感じですが、こうした現実感覚を喪失しているようなヤケクソ気味の犯罪は、最近はたまにあったりするのではないでしょうか。

 デビュー間もない小泉今日子が、内田裕也の娘の女子高校生役で登場するほか(この映画が上映される少し前に"竹の子族"というのが流行っていたが、まさにその役)、ビートたけしがチョイ役ながら競艇の予想屋で出てきますが、存在感充分でした(この人、役者としては"脇"の方がいいような...)。(内田裕也/小泉今日子(映画デビュー作))

月はどっちに出ている1.jpg
 後に「月はどっちに出ている」('93年/シネカノン)で国内の映画賞を総なめにする崔監督ですが、在日コリアンのタクシー運転手とフィリピーナの恋を軸に描いたこの作品は、在日外国人の日常をコミカルに描いていて細部の描写も冴えていたように思います(原作は梁石日の自伝的小説『タクシー狂騒曲』)。
 また、岸谷五朗はじめ役者陣も良く、有薗芳記の「ホソ」は特に秀逸、ルビー・モレノも多くの演技賞を受賞しましたが、今思えばこれは監督の演出力のお陰だったのではないかと。

 「月はどっちに出ている」の方が完成度では勝るように思いますが、ただ、こういう映画を撮るのだという骨太感ではこのデビュー作も劣っていないように思います(メジャーになると、だんだんそうしたものが失われることが往々にしてあるが)。(岸谷五朗/ルビー・モレノ

大井武蔵野館.jpg十階のモスキート1.jpg「十階のモスキート」●制作年:1983年●監督:崔洋一●製作:結城良煕●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:森勝●音楽:大野克夫●時間:108分●出演:内田裕也/アン・ルイス/吉行和子/中村れい子/小泉今日子/ビートたけし/小林稔侍/風祭ゆき/阿藤海/安岡力也/横山やすし●公開:1983/07●配給:ATG●最初に観た場所:大井ロマン(83-11-20)(評価:★★★☆)●併映:「シャッフル」(石井聰互)

大井ロマン(大井武蔵野館) 1999(平成11)年1月31日閉館

「月はどっちに出ている」●制作年:1993年●監督:崔洋一●製作:李鳳宇/青木勝彦●脚本:内田裕也/崔洋一●撮影:藤澤順一●音楽:佐久間正英●原作/梁石日「タクシー狂操曲」●時間:108分●出演:岸谷五朗/ルビー・モレノ/絵沢萠子/小木茂光/遠藤憲一/有薗芳記/麿赤児/國村隼/芹沢正和/金田明夫/内藤陳●公開:1993/11●配給:シネカノン(評価:★★★☆)

   



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和田泰明

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