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工藤夕貴の演技がいい「台風クラブ」。少女を撮るのが上手だった故・相米慎二監督。
「台風クラブ」ポスター「台風クラブ [DVD]」(相米慎二監督)「逆噴射家族 [DVD]
」 (石井聰互監督)ラスト・シーン
地方都市の女子中学生たちが、学校のプールに夜中に泳ぎにやってきて、先に来ていた男子生徒にイタズラをするが、度が過ぎて溺死寸前の状態に追い込んでしまう。翌朝、ニュースでは台風の接近を告げていた―。
「台風クラブ」('85年/東宝=ATG)は、台風の接近に伴い、言いようのない感情の昂ぶりを見せ騒乱状態に陥る中学生たちを生々しく且つ瑞々しく描き出した作品で、三浦友和が不良っぽい教師役で出ていて、彼のイメージチェンジ作品となりました。
しかし何と言っても女子中学生役の工藤夕貴が、中学生の日常とそこに潜む思春期の生理的・精神的危うさを演じて秀逸で、何か自分でそうしたものを観察でもしたかのような相米慎二監督の演出が際立っています。
実際、女子中学生の私生活を「長回し」で写し撮っているような感じのシーンもあり、今ならば児童保護の名目で規制の対象になりそうな際どい場面もあって、更にストーリー的にも結構どろどろした出来事がありますが、そうしたことも含め、「観察対象」としての距離を置いて撮っているような感じもします。
そして台風一過、中学生たちは何事もなかったかのようにまた元気に学校に通い出す―でも実際には、台風が来る前に比べぐっと大人に近づいているという、 "大人になるための出来事"を台風に絡めているところが旨く、また、女子中学生の方が男子よりも逞しく描かれているように思いました。
相米慎二(1948‐2001/享年53)監督は、薬師丸ひろ子主演の「セーラー服と機関銃」('81年)の後に夏目雅子主演の「魚影の群れ」('83年)や斉藤由貴主演の「雪の断章‐情熱‐」('85年)などを撮り、そして工藤夕貴主演のこの作品「台風クラブ」を撮っていますが、その内夏目雅子を除いて当時皆二十歳未満で、斉藤由貴は映画初出演で主演、工藤夕貴もこの作品が初主演でした。
何だか新人専門みたいですが、とりわけ未成年(少女)を撮るのが上手だった?(工藤夕貴は作中の少女同様、まだ中学生だった)。
工藤夕貴の映画初出演は、この作品の前年の石井聰互監督の「逆噴射家族」('84年/ATG)で、真面目で小心者のサラリーマン(小林克也)が長期ローンでやっとマイホームを建て、家族4人でそれなりの幸せ気分でいたところに(この家族が変人揃いで皆それぞれ勝手気儘というかバラバラなのだが、その1人が工藤夕貴演じる娘)、郷里からまた変な祖父(植木等)が舞い込んで来て家の中がおかしくなりだし、更にある日、このサラリーマン氏が自宅でシロアリの群れを発見して、マイホームが朽ちるのではとの不安に駆られ、シロアリ駆除に向けて大暴走するというものです。
小林よしのり氏(当時31歳)の原案だそうですが、映画としてはあくまでも石井聰互監督(当時27歳)の映画という感じで、DJ・小林克也の演技は役者並みだし、ちょっと狂い気味の妻役の倍賞美津子や、植木等の怪しい老人ぶりもいい。
更には工藤夕貴の兄を演じた有薗芳記の電脳オタクぶりも、映画初出演ながら凄かった―ということで、工藤夕貴のぶっ飛び感も、これらに比べるとちょっと弱かったかも知れません("緊縛シーン"(?)に象徴されるように、彼らの被害者的立場という色合いが強い役柄のせいもあったが)。

海外の映画祭でもグランプリなどを獲っている作品ですが、狂気を描くことが目的化してしまっている面も感じられ、むしろ異価値・異文化的な面で海外に受けたのかなあ。
「台風クラブ」●制作年:1985年●監督:相米慎二●製作:宮坂進●脚本: 加藤裕司●撮影:伊藤昭裕●音楽:三枝成章●時間:85分●出演:工藤夕貴/三上祐一/大西結花/三浦友和/佐藤充/寺田農/尾美としのり/鶴見辰吾●公開:1985/08●配給:東宝=ATG●最初に観た場所:不明(1986/9/20)(評価:★★★★)●併映:「時代屋の女房」(森崎東)
「逆噴射家族」●制作年:1984年●監督:石井聰互●製作:長谷川和彦/山根豊次/佐々木史郎●脚本:石井聰亙/小林よしのり/神波史男●撮影:田村正毅●時間:106分●出演:小林克也/倍賞美津子/植木等/工藤夕貴/有薗芳記●公開:1984/06●配給:ATG(評価:★★★☆)●最初に観た場所:池袋・日勝文化(85-11-04)(評価:★★★★)●併映:「お葬式」(伊丹十三)

池袋スカラ座・日勝文化・日勝地下 (現・池袋東口ビックカメラ池袋本店付近) 1995年閉館

