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「星への旅」「少女架刑」の瑞々しいリリシズム。拾い物だった「石の微笑」「透明標本」。
『星への旅 (新潮文庫)』 ['74年]
吉村昭(1927‐2006/享年79)
吉村昭がその創作活動の初期に発表した短編を集めたもので、「鉄橋」「少女架刑」「透明標本」「石の微笑」「星への旅」「白い道」の6篇を収録していますが、死をテーマにした純文学的な作品が多く、歴史小説作家、動物小説作家という既成のイメージとかなり違っていて、それがまた新鮮でもありました。
「星への旅」('66(昭和41)年発表、太宰治賞受賞)は「集団自殺」を敢行する若者達を扱っていて、近年のネット上で自殺志願者を募って行われる類のもの(最近読んだ桐野夏生の『メタボラ』にもあったが)などと比較してみると興味深いのですが、この短篇に出てくる若者達には自殺するこれと言った理由などは特に無く、「自殺してみようか」といった遊戯的な感覚で死ぬことを思い立ち、幌付きのトラックで死に場所を探して移動し、お互いにどこまで本気なのかを探り合いながらも集団生活のようなものを送っている―その集団生活が続けば、自殺を思いとどまりそうな気もするのだが...。
より初期の「少女架刑」('59(昭和34)年発表)は、急性肺炎で亡くなり、金銭目的で病院に献体された貧しい家の少女の遺体がどう扱われるかを、少女の意識が死後も依然在り続けるという設定のもと、少女の視点で描かれているというシュールな作品で、医学生の眼前で解剖され、焼かれて骨になるまではともかく、納骨堂に並べられる最後はちょっと怖かった...。
暗い話ばかりみたいですが、タイトルの付け方からも察せられるようにその中に瑞々しいリリシズムが感じられ、20代の頃に川端康成や梶井基次郎に傾倒したという文学遍歴と符号するように思えました。
一方で、大学病院に寄贈された遺体がどのように扱われるかといったことに関しては綿密な取材がなければ書けないはずで、この辺りの創作姿勢は後の記録文学と呼ばれる作品群に繋がるものを感じました。
個人的には、墓場から石仏を集め売る友人と出戻りの姉との関係を描いた「石の微笑」('62(昭和37)年発表、第47回芥川賞候補作)がホラー・ミステリっぽくてよく出来ていたように思え(2人は失踪するが、実はこの男はあることに憑かれていた...)、人体骨格の透明標本を作ることに憑かれた男を描いた「透明標本」('62(昭和37)年発表、第46回芥川賞候補作)も結構ブラックユーモアっぽくて面白く、共に思わぬ拾い物でした。
4回芥川賞候補になっているのに結局賞は貰えず、夫人の津村節子氏に先を超されてしまったのは、この"面白さ"が災いしたため?
【『星への旅』...1974年文庫化〔新潮文庫〕】/【『少女架刑』(少女架刑、白い道、星と葬礼、貝殻、墓地の賑い)...1963年単行本[南北社]/1971年単行本[三笠書房]/1980年肉筆絵装[成瀬書房]】
