【1141】 ○ 伊坂 幸太郎 『死神の精度 (2005/06 文藝春秋) ★★★☆ (○ デヴィッド・クローネンバーグ 「デッドゾーン」 (83年/米・カナダ) (1985/06 ユーロスペース) ★★★☆)

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1篇1篇は旨くまとめているなあという気がしたが...。

死神の精度.jpg 『死神の精度』 ['05年] 死神の精度 文庫.jpg 『死神の精度 (文春文庫)』 ['08年]

 2004(平成16)年・第57回 「日本推理作家協会賞」(短編部門)受賞作(連作の第1部「死神の精度」に対する授賞)。

 人の死の1週間前に派遣され、その死について「可」または「見送り」の判断をすることを仕事とする死神の千葉は、クールでちょっとズレている雨男だが、その彼が、大手電機メーカーの苦情係の女性、兄貴分を守ろうとするヤクザ、吹雪でホテルに雪隠詰めになった宿泊客たち、近隣女性に恋するブティックの男性店員、逃走中の殺人犯、美容院店主の老婆の前にそれぞれ現れる連作。

 死という重いテーマを敢えて軽いタッチで扱っていて、最初は星新一のショートショートでも読んでいるような感じでしたが、千葉の冷静さを鏡として登場人物の心の機微もそれなりに描かれていて、結構突飛な(?)状況設定の割には、1篇1篇は旨く纏めているなあという気がしました。
 ゴダールの影響は引用フレーズなどでの面でのことであり、モチーフとしては、握手した相手の未来が見えるというスティーブン・キング『デッド・ゾーン』('87年/新潮文庫(上・下))に近いのでは...。

 作者が直木賞候補になったのは'03年『重力ピエロ』、'04年の『チルドレン』『グラスホッパー』に続き本作が4回目で、この時は東野圭吾氏の『容疑者χの献身』が受賞していますが、個人的には『死神の精度』の方がやや面白いかなあと(『グラスホッパー』の対抗馬が角田光代氏の『対岸の彼女』だったのはいたしかたないが)。
 この後'06年に『砂漠』でも直木賞候補となっていますが、'08年に『ゴールデンスランバー』が候補になったとき、ノミネート辞退をしています。

 ただ、この作品に関しても、「吹雪に死神」がいきなり本格推理調だったり(パロディなのか?)、最後の「死神対老女」が必ずしもそれまでの5話を収斂し切れているように思えなかったりし、全体構成において少し不満も残りました。

 直木賞の選考委員の何人かが、時には死神の精度が狂って失敗するケースも加えた方が良かったのではないかと言っていましたが(渡辺淳一、井上ひさし両氏)、仮にそうするならばそれはモチーフ自体の改変であり、かなり違った展開になってしまうような...。
 但し、タイトルはそうしたこともあるのかなあと思わせるタイトルなので紛らわしい(読んでみれば"精度100%"で、あとは死神が「可」の判断をするかどうかということだけではないか)。
 その最終判断にも、もう少し「見送り」の作品があってもよかったのではとの意見もありましたが(平岩弓枝氏)、それは言えているような気がします。

 「恋愛で死神」などは「可」ながらも読後感は悪くなかったですが、ややメルヘンっぽい。阿刀田高氏さえ、「もっと深い思案があってよかったのではないか」と言っているぐらいで、この人が「△」では、他の直木賞選考委員も引いてしまうのではないかと―殆ど、「選評」評になってしまいましたが。


 因みに、スティーブン・キングの『デッド・ゾーン』は、当時無名のデヴィッド・クローネンバーグ監督が「デッドゾーン」('83年/米・カナダ)として映画化し、'84年のアボリアッツ・ファンタスティック映画祭で批評家賞受賞、'85年6月の東京国際映画祭の"ファンタスティック映画祭"で観ましたが、キング原作の映画化作品の中ではいい方だったのではないかと。

Videodrome [1982].jpgヴィデオドローム パンフ.jpg 当時の評判も良かったみたいで、同月には渋谷ユーロスペースで同監督の前作「ヴィデオドローム」('82年/カナダ)が上映され、ジェームズ・ウッズ主演のこの作品は見た人の性格を変える暴力SMビデオによって起きる殺人を描いたもので(鈴木光司原作の日本映画「リング」はこれのマネか?)、この2作でクローネンバーグの名は日本でも広く知られるようになりました(「ヴィデオドローム」は、ちょっと気持ち悪いシーンがあり、イマイチ)。
 Videodrome [1982] /パンフレット
 
蠅.jpgザ・フライ.jpg その後、クローネンバーグは、ジョルジュ・ランジュラン原作、カート・ニューマン監督の「ハエ男の恐怖(The Fly)」('58年/米)のリメイク作品「ザ・フライ」('86年/米)を撮り(ホント、"気色悪い"系が好きだなあ)、ジェフ・ゴールドブラムが変身してしまった「ハエ男」が最後の方では「カニ男」に見えてしまうのが難でしたが、ストーリーはなかなかの感動もので、ラストはちょっと泣けました。
                   
デッドゾーン パンフ.jpgデッドゾーン 映画.jpg 「デッドゾーン」ではクリストファー・ウォーケンが演じる突然に予知能力を身につけてしまった主人公(キングらしい設定!)の男は、将来大統領になって核ミサイルの発射ボタンを押すことになる男(演じているのは、後にテレビドラマ「ザ・ホワイトハウス」で合衆国大統領役を演じることになるマーティン・シーン)に対して、彼の政治生命を絶つために犠牲を払って死んでしまうのですが(未来を変えたということか)、これならストーリー的にはいくらでも話が作れそうな気がして、これきりで終わらせてしまうのは勿体無いなあと思っていたら、約20年を経てTVドラマシリーズになりました。
 The Dead Zone [1983] /パンフレット

 CSチャンネル(AXN)で主役のアンソニー・マイケル・ホールを見て、雰囲気がクリストファー・ウォーケンに似ているなあと思ったのは自分だけでしょうか。

'85年東京国際映画祭"ファンタスティック映画祭"カタログより
コデッドゾーン20761.jpgデッドゾーン dvd.jpg「デッドゾーン」●原題:THE DEAD ZONE●制作年:1983年●制作国:アメリカ・カナダ●監督:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:デブラ・ヒル●脚本:ジェフリー・ボーム●撮影:マーク・アーウィン●音楽:マイケル・ケイメン●原作:スティーヴン・キング●時間:103分●出演:クリストファー・ウォーケン/マーティン・シーン/ブルック・アダムス/トム・スケリット/ハーバート・ロム/アンソニー・ザーブ●日本公開:1985/06●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:渋谷パンテオン (85-06-06)(評価★★★☆)

ビデオドローム.jpg 「ヴィデオドローム」●原題:VIDEODROME●制作年:1982年●制作国:カナダ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:クロード・エロー●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア ●時間:87分●出演:ジェームズ・ウッズ/デボラ・ハリー/ソーニャ・スミッツ/レイ・カールソン/ピーター・ドゥヴォルスキー●日本公開:1985/06●配給:欧日協会(ユーロスペース)●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース (85-07-21)(評価★★★)

ザ・フライ dvd.jpg 「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア ●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)

デッド・ゾーン tv.jpg「デッド・ゾーン」The Dead Zone (USA 2002~2007) ○日本での放映チャネル:AXN(2005~2010)
デッド・ゾーン シーズン5 コンプリートBOX [DVD]


 【2008年文庫化[文春文庫]】

                        



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和田泰明

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This page contains a single entry by wada published on 2009年4月10日 23:43.

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