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人類進化に関する知識をリフレッシュするのに手頃。諸説をバランスよく纏めた本。
『人類進化99の謎 (文春新書)』 ['09年]
本書によれば、人類進化学というのは、大体10年ごとに人類化石の大きな発見があり、その度に進化図ががらりと書き換えられているそうですが、21世紀に入って起源的人類の発見が相次ぎ、2001年にアフリカ中部のチャド共和国で見つかった化石(サヘラントロプス・チャデンシス (Sahelanthropus tchadensis))により、人類のルーツは700万年前に遡ったそうで、もっと古い人類種が未発見で眠っているとも推定されるとのことです。
The red dot marks the site at which a skull of Sahelanthropus tchadensis was found.
以前に、ネアンデルタール人の研究をしている奈良貴史氏が養老孟司氏との対談『養老孟司 ガクモンの壁』('03年/日経ビジネス人文庫)(『養老孟司・学問の挌闘―「人間」をめぐる14人の俊英との論戦』('99年/日本経済新聞社)改題 )で、ネアンデルタール人がホモ・サピエンス(現生人類)とある期間共存していたと言っていたのが興味深かったですが、ネアンデルタール人というのはホモ・サピエンスの"先祖"ではなく、学術名がそれぞれ Homo neanderthalensis、Homo sapiens sapiens となっているように、両者はホモ属の中で"従兄弟"関係にあることを本書で再認識(ホモ属全体で見ると200数十年前からいて、ネアンデルタール人が滅んだのは2万数千年前とのこと)。
今までアウストラロピテクス((Australopithecus)が一番古い猿人だと思っていましたが、アウストラロピテクスというのは属名で、その中にもいろいろあり、それでも一番古いもので400数十年前だったように思いますが(このあたりまでは習ったような記憶がある)、サヘラントロプス・チャデンシスの「700万年前」というと、それより200数十年も古いことになります。
Sahelanthropus tchadensis
1テーマ見開き2ページですが、ある程度テーマが繋がっていて、あまりぶつ切り感がなく読めるのが本書の特長かと思います。
それでも巻末の「人類進化の系統図」を参照しながらでないと、ホモ属にしろアウストラロピテクスにしろ、それより古い猿人にしろ、今どの年代の辺りにいた人類の話をしているかわからなくなる―それはとりもなおさず、本書が新書でありながら、細分化された各種の最新の情報を丁寧に読者に提供しようとしていることの証なのかも知れません。
著者は学者ではなく科学ジャーナリスト(但し、この分野を深耕している)で、「ヒトはいつ、どこで誕生したのか」「ヒトははたして強い狩猟者だったのか」「いつから火を使い出したのか」「ヒトはなぜ、いつ、アフリカを出たのか(ヒトは永らくアフリカにいた)」「ヒトはいつから言葉をしゃべれるようになったのか」「ヒトの暴力性は古くからあったのか」「ヒトの性による役割の違いは、いつからは始まったのか」といった素朴な問いの設定からもそのことが窺え、多くは推論でしかないと言えばそうなるのかも知れませんが、諸説をバランス感覚を以って取り纏めているような印象を受けました。
どの年代においても複数種の人類がいたのに、今はホモ・サピエンスしかいないというのは確かに不思議で(著者はこのことについても一応の推論をしているが)、この先、人類は更に進化するのかなあ。
人口は増えているけれど、ホモ属としては先細りしているような気もしないでもないです。
