【1244】 ◎ 小川 洋子 『心と響き合う読書案内 (2009/02 PHP新書) ★★★★☆

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 「素直」に「深く」読む。ジュニアに限らず大人が読んでも再発見のある本。

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心と響き合う読書案内 (PHP新書)』['09年]

Panasonic Melodious Libraryド.jpg '07年7月にTOKYO FMでスタートした未来に残したい文学遺産を紹介するラジオ番組『Panasonic Melodious Library』で、「この番組は文学的な喜びの共有の場になってくれるのではないだろうか」と考えパーソナリティを務めた著者が、その内容を本にしたものですが、文章がよく練れていて、最近巷に見られるブログをそのまま本にしたような類の使い回し感、焼き直し感はありません。

 著者については、芥川賞受賞作がイマイチ自分の肌に合わず、他の作品を読まずにいたのが、たまたま『博士の愛した数式』を読み、ああ旨いなあと感服、その後も面白い作品を書き続けていると思っていましたが、本書に関して言えば、とり上げている作品は「著者らしい」というか、「いまさら」みたいな作品も結構あるような気がしました。

 しかし実際読んでみると、優れた書き手は優れた読み手でもあることを実証するような内容で、評価の定まった作品が多いので、何か独自の解釈でも連ねるのかなと思ったら、むしろ素直に自らも感動しながら読み、また楽しんで読んでいるという感じがし、その感動や面白さを読者に易しい言葉で伝えようとしているのがわかります。

 むしろ「解釈」を人に伝えるより、「感動」や「面白さ」を人に伝える方が難しいかも。その点、著者は、作品の要(かなめ)となる部分を限られた紙数の中でピンポイントで抽出し、そこに作品全体を読み解く鍵があることを、著者なりに明かしてみせてくれています(作家だから当然かも知れないが、文章がホントに上手!)。

 作品の読み方が評論家っぽくなく「素直」で、それでいて、味わい方の奥が「深い」とでも言うか、冒頭の金子みすゞの『わたしと小鳥とすずと』(これ、教育テレビの子ども向け番組「日本語で遊ぼう」でよく紹介されているものだが)の読み解きからしてそのような印象を抱き、「心に響く」ではなく、「心と響きあう」読書案内であるというのはわかる気がします。

 こんな人が国語の先生だったら、かなりの生徒が読書好きになるのではないかと思いましたが、ジュニアに限らず大人が読んでも再発見のある本ではないかと。

《読書MEMO》
●第一章 春の読書案内 ... 『わたしと小鳥とすずと』/『ながい旅』(大岡昇平)/『蛇を踏む』/「檸檬」/『ラマン』/『秘密の花園』/「片腕」(川端康成)/『窓ぎわのトットちゃん』/『木を植えた男』(ジャン・ジオノ)/『銀の匙』/『流れる星は生きている』/「羅生門」/「山月記

蛇を踏む.jpg 檸檬.jpg 片腕.jpg 銀の匙.jpg 羅生門・鼻 新潮文庫.jpg 李陵・山月記.jpg

●第二章 夏の読書案内 ... 『変身』/『父の帽子』(森茉莉)/『モモ』/『風の歌を聴け』/『家守綺譚』(梨木香歩)/『こころ』/『銀河鉄道の夜』/「バナナフィッシュにうってつけの日」/『はつ恋』/『阿房列車』/『昆虫記』(ファーブル)/『アンネの日記』/『悲しみよ こんにちは

変身.jpg 銀河鉄道の夜 童話集 他十四編.jpg 悲しみよこんにちは 新潮文庫.jpg

●第三章 秋の読書案内 ... 「ジョゼと虎と魚たち」(田辺聖子)/『星の王子さま』/『日の名残り』/『ダーシェンカ』/『うたかたの日々』/「走れメロス」/「おくのほそ道」/『錦繍』/「園遊会」(マンスフィールド)/『朗読者』/『死の棘』/「たけくらべ」/『思い出トランプ

日の名残り (中公文庫) _.jpg 錦繍 bunnko .jpg 朗読者 新潮文庫.jpg にごりえ・たけくらべ (新潮文庫).jpg 思い出トランプ.jpg 

●第四章 冬の読書案内 ... 『グレート・ギャツビー』/『冬の犬』(アリステア・マクラウド)/「賢者の贈りもの」(O・ヘンリ)/『あるクリスマス』(トルーマン・カポーティ)/『万葉集』/『和宮様御留』(有吉佐和子)/「十九歳の地図」/『車輪の下』/『夜と霧』/『枕草子』/『チョコレート工場の秘密』/『富士日記』/『100万回生きたねこ』

グレート・ギャツビー (村上春樹翻訳ライブラリー).jpg 十九歳の地図.jpg チョコレート工場の秘密 yanase.jpg 富士日記 上巻.jpg
以上

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This page contains a single entry by wada published on 2009年9月28日 23:18.

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