2011年6月 Archives

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「刑事というのは因果な商売で」。
別れのワイン vhs.jpg    別れのワイン dvd.jpg 刑事コロンボ 別れのワイン.jpg
特選「刑事コロンボ」完全版~別れのワイン~【日本語吹替版】 [VHS]」/「刑事コロンボ 完全版 Vol.10 [DVD]

ANY OLD PORT IN A STORM 1.jpg ワイナリー経営者エイドリアン・カッシーニ(ドナルド・プレザンス)のもとへ、腹違いの弟でワイナリーのオーナー(父親からの相続人)であるリック(ゲイリー・コンウェイ)がやって来て、金が要るのでワイナリーを売却すると言う。ワイナリーに人生を捧げてきたエイドリアンは、そんなことはさせないとリックと口論になり彼の後頭部を一撃、床に倒れ意識を失ったリックをワイン貯蔵庫に運び、ロープで手足を縛って、空調装置のスイッチをオフにした。やがてリックは窒息死するはずである―。

ANY OLD PORT IN A STORM.bmp 「刑事コロンボ」シリーズ第19話で、シリーズの中でも傑作との呼び声が高い作品ですが、犯行が衝動的なものであるため、犯行後の犯人のアリバイ工作が咄嗟にしてはそれなりに冷静に練られたものではあるものの、コロンボの手に掛かれば穴が多いものにならざるを得なかったような...。では、なぜこの作品の評価が高いかというと、ワイン通である犯人が、常人では判別できないワインの劣化を言い当てることで、自らが犯人であることの疑いを強めてしまうといったストーリーの旨さもさることながら、やはり多くのファンが指摘するように、捜査の進展とともに犯人とコロンボの関係がワインを通して深まっていくところにあるのでしょう。

別れのワイン ラスト.jpg ラストも、第1シーズンによく見られた意外なネタ明かしと突然のエンディングという終わり方ではなく、コロンボが観念した犯人を乗せた愛車プジョーをワイナリーの前に止めて、自分が選んだワインを取り出し(この頃にはコロンボもすっかりワイン通になっている)、車中で犯人と杯を交えるという余韻を残したものとなっています。

エデンの東ポスター.jpg別れのワイン2.jpg 映画「大脱走」の名脇役ドナルド・プレザンスが演じた犯人は、ワインのプロであると同時に、ある意味"ワイン・オタク"であり、必ずしも人好きがするタイプではありませんが、犯行には過失致死的要素もあり、何となく同情を引きます。コロンボの検証は状況証拠によるもので、犯人側からすれば反駁の余地もありそうなものですが、自分のワイナリーのワインがダメになってしまったショックや、「エデンの東」のジュリー・ハリス演じる女性秘書に秘密を握られ、関係を迫られていたりしたこともあって、むしろ解放されたような気分で自首を受け容れます。

 「刑事というのは因果な商売で」というのはコロンボが容疑者に対して細かい質問をする際の常套句ですが、こうした状況においても犯人を挙げなければならないというのが、本当のところ一番の「因果」な点かもしれません。

名探偵モンク 悲恋.jpg それで思い出したのが、「刑事コロンボ」と同じく「ホームズ型」のドラマで、潔癖症の元刑事エイドリアン・モンクが活躍する「名探偵モンク」の第6シーズンにあった「悲恋」でした。
 
 タクシー運転手が殺された事件で、遺留品のブレスレットから故国の難民支援で働く女性が容疑者として浮かび上がりますが、モンクは亡妻トゥルーディに似たその女性に一目惚れし、根拠なく彼女は犯人ではないと主張、彼女とモンクの間にはいったんは恋愛感情を帯びた信頼関係が構築されますが、それまで犯行を否認していた彼女が、突然、自分が犯人だと言い出します。

 実は、殺されたタクシー運転手は、彼女の故国で多くの民を殺害したかつての独裁者で、彼を殺したのは、たまたまその男が運転するタクシーに乗り合わせてそのことに気付いた彼女の母親、彼女は母親を守るために偽証したわけですが、そのことに気付いたモンクによって母親は逮捕され事件は解決。但し、母親を検挙した男と共に居ることは考えられず、彼女はモンクのもとを去っていくという、コメディタッチのシリーズには珍しく「やや重」の結末となっています。

 第5シーズンで一旦打ち切りが決まった後で再開された第6シーズンということで、ややこれまでと違った毛色の作品もあったりするのか。どんなに同情すべき背後事情があろうと、「犯人を挙げる」のが仕事であるという刑事(乃至探偵)という仕事の「因果な」性質において、「別れのワイン」に通じるものがありました。

「刑事コロンボ(第19話)/別れのワイン」●原題:ANY OLD PORT IN A STORM●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:レオ・ペン●製作:ロバート・F・オニール●脚本:スタンリー・ラルフ・ロス●ストーリー監修:ジャクソン・ギリス●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:95分●出演:ピーター・フォーク/ドナルド・プレザンス/ジュリー・ハリス/ジョイス・ジルソン/ゲイリー・コンウェイ/ダナ・エルカー/ロバート・エレンスティーン/リジス・コーディック/ヴィト・スコッティ/モンテ・ランディス/リード・スミス/ロバート・ウォーデン/モンテ・ランディス/マイケル・ラリー●日本公開:1974/06●放送:NHK(評価:★★★★)

刑事コロンボ 完全版2.jpg刑事コロンボ完全版 DVD-SET 2 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】
Disc6 (11) 悪の温室:約74分 (12) アリバイのダイヤル:約74分
Disc7 (13) ロンドンの傘:約97分 (14) 偶像のレクイエム:約74分
Disc8 (15) 溶ける糸:約73分 (16) 断たれた音:約74分
Disc9 (17) 二つの顔:約74分 (18) 毒のある花:約73分
Disc10 (19) 別れのワイン:約95分 (20) 野望の果て:約98分
Disc11 (21) 意識の下の映像:約73分 (22) 第三の終章:約74分
 

名探偵モンク1.jpg名探偵モンク2.jpg「名探偵モンク」 Monk (USA Network 2002 ~2009/04) (2004/03~NHK BS2/ミステリチャンネル)

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B級っぽい単純明快さ、血沸き肉躍り、かつホロリとさせる場面もある「カリフォルニア・ドールズ」。

THE CALIFORNIA DOLLS.jpg  カリフォルニア・ドールス.jpg「カリフォルニア・ドールズ」 ベルリン・天使の詩.pngベルリン・天使の詩【字幕ワイド版】 [VHS]

ピーター・フォーク.jpg ピーター・フォークが今月('11年6月)23日、ロサンゼルス近郊ビバリーヒルズの自宅で亡くなったという報に接しました。83歳だったとのことですが、以前からアルツハイマー症であることが伝えられており、心配していたのですが...。

 ピーター・フォークと言えば、70年代と90年代終わりの2期にわたっての「刑事コロンボ」のTVシリーズが代表作でしょうが、一部の新聞で、代表的な出演映画にロバート・アルドリッチ監督の「カリフォルニア・ドールズ」('81年/米)とヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン/天使の詩」('87年/西独・仏)が並んで紹介されていました。

カルフォルニア・ドールズ1.jpg 「カリフォルニア・ドールズ」は、アメリカの女子プロレスの世界を描いた作品で、さえない女子プロレスのタッグ「カリフォルニア・ドールズ」のプロモーターをピーター・フォークが好演。「ドールズ」はアウェイでの負けが仕組まれた試合で勝ってしまい、世間からも興行界からも批判に晒されるが、そこへ一発逆転をもたらすようなチャンスが巡って来る―。

 ピーター・フォーク演じるプロモーターと「ドールズ」との心の通い合いが結構泣けて、こてこてのアメリカ映画でありながら、どことなく日本の人情噺的な雰囲気もある作品です。
 この作品がアルドリッチの遺作になってしまいましたが、「ロンゲスト・ヤード」(' 74年/米)などで男臭い世界を描いて定評のあったアルドリッチ監督の遺作が、若い女子プロレスラーたちが主人公の作品であるというのも、意外と言えば意外かも。。

ベルリン・天使の詩1.jpg 「ベルリン/天使の詩」は、人間になりたがっている天使ダミエル(ブルーノ・ガンツ)がサーカスの舞姫に恋をするというファンタジックなストーリーでしたが、映画俳優のピーター・フォーク(本人役を演じている)がベルリンに撮影のためやって来ていて、子供にしか見えないはずの天使が、どういうわけか彼には見えるらしい―。

 「全てのかつての天使、特に小津安二郎、フランソワ、アンドレイに捧ぐ」というクレジットで締め括られており(ヴェンダースは'07年のインタビューで今ならロベール・ブレッソンとサタジット・レイを必ず加えると述べている)、日比谷シャンテ・ シネの興業記録をうちたてたほどブームになった映画でしたが、ヴェンダースのファンが日本にそんなにいたのか、当時はやや不思議に思いました(シャンテがデート・スポットとして手頃だったのか)

ピーター・フォーク ベルリン・天使.jpg 「ベルリンの壁」崩壊の数年前に作られた作品で、「壁」がロケ地にも使われ、映画の中でも象徴的な役割を果たしていますが、やや高踏的かなあ。個人的には、ナスターシャ・キンスキーを使った「パリ、テキサス」('84年/仏・西独)の方が好みでした。
 「ベルリン/天使の詩」は芸術作品として国際的評価も高かったですが、「パリ、テキサス」のナスターシャ・キンスキー以上に、この作品のピーター・フォークは、"客演"という感じがあり、彼の"正体"にもやや唐突感を覚えました。

 ピーター・フォークの代表作で「ベルリン・天使の詩」を紹介していて、「カリフォルニア・ドールズ」を紹介していない新聞もありましたが、追悼作品として観るのであれば、B級作品っぽい単純明快さ、血沸き肉躍り、かつホロリとさせる場面もある「カリフォルニア・ドールズ」の方が、自分としてはお薦め(但し、DVD化されていないのが難)。

「カリフォルニア・ドールズ」●原題:...All THE MARBLES a.k.a. THE CALIFORNIA DOLLS●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルドリッチ●製作:ウィリアム・アルドリッチ●脚本:メル・フローマン●撮影:ジョセフ・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォール●時間:113分●出演:ピーター・フォーク/ヴィッキー・フレデリック/ローレン・ランドン/バート・ヤング/クライド・クサツ/ミミ萩原●日本公開:1982/06●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:中野武蔵野館(83-02-06)(評価:★★★★)●併映「ベストフレンズ」(ジョージ・キューカー)

TOHOシネマズ・シャンテ.jpg日比谷シャンテ・ シネ.jpg 「ベルリン/天使の詩」●原題:DER HIMMEL UBER BERLIN●制作年:1987年●制作国:西ドイツ/フランス●監督:ヴィム・ヴェンダース●製作:ヴィム・ヴェンダース/アナトール・ドーマン●脚本:ヴィム・ヴェンダース/ペーター・ハントケ●撮影:アンリ・アルカン●音楽:ユルゲン・クニーパー●時間:127分●出演:ブルーノ・ガンツ/ソルヴェーグ・ドマルタン/オットー・サンダー/クルト・ボイス/ピーター・フォーク●日本公開:1988/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:日比谷シャンテ・ シネ2(88-05-05)(評価:★★★)

日比谷シャンテ・シネ 1987年10月、日比谷映画跡地に2スクリーンで開館。1995年~3スクリーン。2009年2月~「TOHOシネマズ シャンテ」に館名変更。

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戦前最後にして最大規模のミュージカル・コメディ。先取性、先見性に富む。

エノケンの孫悟空 vhs.jpg 「エノケンの孫悟空」 エノケンの孫悟空.jpg

 三蔵法師(柳田貞一)は経典を求めての天竺への旅の途中、岩山に閉じ込められていた孫悟空(榎本健一)を救い出して従者とし、併せて猪八戒(岸井明)、砂悟浄(金井俊夫)らもお供にして、妖怪魔物たちに邪魔をされながらも3人(3匹?)の活躍で危難を乗り越えて目的を果たす―というベース・ストーリーはオリジナル通りですが、登場人物全員が歌いながら芝居をするオペレッタ形式となって、'40(昭和15)年という戦時色の濃い中で制作された、山本嘉次郎(1902-1974)監督の戦前最後にして最大規模のドタバタ・ミュージカル・コメディと言えるものです。

エノケンの孫悟空2.jpg '36年1月に日本劇場でデビューした「日劇ダンシングチーム」総動員のレビュー風の踊りがオープニングから見られ(「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年/米)のオープニングを想起した)、ハリウッドの古典的ミュージカルを模した彼女らの、中国風であったりアラビア風であったりする集団ダンスシーンが、大掛かりなセットも含め、物珍しさもあって印象に残りました。

 中国ロケを敢行していて中国人俳優も出演していますが、ハリウッド映画のパロディなどもあってバタ臭い印象が強いのはそのためでしょうか。それでいて、悟空を演じるエノケンの喋りがもろ江戸弁で、エノケン自身がこれまで演じてきた「鞍馬天狗」や「近藤勇」のパロディもあったりするため、もはや国籍不詳という感じ。しかも、最後はSF風になって「未来国」へ行くという、もう何でもありの世界です(そもそも、悟空の移動手段であるキン斗雲がプロペラ戦闘機に置き換わっており、特撮撮影は、あの円谷英二が担当している)。

 猪八戒が歌う「狼なんかこわくない」はディズニ―・アニメ「三匹の子ぶた」('33年/米)の挿入歌、この「孫悟空」の前年にアメリカで公開された「オズの魔法使い」('39年/米)っぽいシーンやアニメ「白雪姫」('37年/米)のパロディと思われる場面もありますが、両作品とも日本での公開は戦後であり、「ピノキオ」('40年/米)のテーマ「星に願いを」なども使われていることを考えると、先取性のみならず、その「先見性」には測り知れないものがあります。

 "SF風"金角・銀角大王を演じた中村是好・如月寛多などエノケン一座も多数出演していますが、その他、服部富子、渡辺はま子、藤山一郎といった当時の人気歌手も出演し、更に役者陣も豪華。「奇怪国」の大王に「わしゃかなわんよ」のフレーズで当時人気のコメディアン・高勢実乗、アラビアの「煩悩国」の女王に三益愛子(当時29歳)、煩悩国で猪八戒が恋に落ちる歌姫に満映の超人気女優・李香蘭(山口淑子)(当時20歳)、後編の「お伽の国」のお姫様で、金角・銀角らによって「ネバーエンディング・ストーリー」('84年/西独・米)の竜ファルコンそっくりの顔した犬に姿を変えられてしまった少女に、当時人気絶頂の国民的アイドル・高峰秀子(当時16歳)、その国の案内役の少女・袖珍に天才子役として人気のあった中村メイコ(当時6歳)といった具合。

エノケンの孫悟空1.jpg 中村メイコの袖珍(いつも小脇に百科辞典を抱えている)は、金角・銀角らの頭脳交換機で記憶を奪われ虚脱状態になった孫悟空らに、ホウレン草の缶詰を与えて元気を回復させるという、ここは「ポパイ」のパロディで(実際ポパイのテーマ曲が流れる)、「ポパイ」は、'59年から'65年までTBS「不二家の時間」でテレビ放映されたアニメですが(後番組は「オバケのQ太郎」)、ポパイというキャラクター自体は日本でも戦前からよく知られていたようです。

 この作品は、評論家には「中身のない映画」と酷評されたそうですが、確かに「大掛かりな学芸会」といった印象はあります。ただ、前年の'39 年に、戦時体制に合わせ映画法が施行、'40年には、学生・生徒が映画館に行くのは土日・祝祭日に限るという文部省通達が出され、実際に世の中は日中戦争からから日独伊三国同盟締結へと太平洋戦争へ向かいつつある中、日米開戦の前年にこのような作品が作られたのは(ディズニー・アニメのモチーフがふんだんに織り込まれていることだけをとっても)信じられないようなことでもあります。

 評論家の酷評とは裏腹に国民に大受けしたのは、そうした暗い時代であったからこそ、明るい娯楽を求める国民の気持ちに応えたということでしょう。芸術的価値よりも歴史的価値の方が高い作品化かも。

「エノケンの孫悟空」●制作年:1940年●監督・脚本:山本嘉次郎●制作:滝村和男●撮影:三村明●特殊技術撮影:円谷英二●音楽:鈴木静一●原作:山形雄策●時間:135分●出演:榎本健一/岸井明/金井俊夫/柳田貞一/北村武夫/高勢実乗/土方健二/中村是好/如月寛多/三益愛子/高峰秀子/中村メイ子/徳川夢声/服部富子/渡辺はま子/李香蘭(山口淑子)/藤山一郎●公開:1940/11●配給:東宝東京(評価:★★★☆)

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「登場人物の誰もが突っ走り、映画そのものが疾走している」(山根貞男)

ちゃっきり金太2.jpg ちゃっきり金太.bmp エノケンのちゃっきり金太 vhs.jpg  エノケンのちゃっきり金太1.jpg
「エノケンのちゃっきり金太」(ポスター/横山隆一)/VHS/(中村是好/榎本健一)

 幕末・明治維新前夜の江戸、名うてのスリ金太(榎本健一)は、財布と一緒に薩摩藩・勤皇派の密書をスッてしまったことから、薩摩の侍連中と八丁堀の岡っ引き・倉吉(中村是好)の両者に追われるハメに。追っ手を逃れて江戸から西へと旅立った金太の行く手には数々の事件が巻き起こる―。

 1937(昭和12)年作品で、P.C.L.(東宝の前身の1社)のエノケン映画10本の内の最後の作品(この作品の後、松竹に在籍していた榎本健一は、新会社の東宝へ移籍する)。

 ジョンストン・マッカレーの探偵小説『地下鉄サム』を翻案したものと言われていますが、山本嘉次郎監督の原作・脚本は、これを幕末の動乱期の東海道に置き換えて、追いつ追われつのドタバタ劇に仕上げて違和感がありません。

 映画評論家の山根貞男氏曰く、この作品は「走る映画」であり、「登場人物の誰もが突っ走り、映画そのものが疾走している」とのことですが、まさにそうであり、個人的にはエノケンの韋駄天ぶりから「キートンのセブンチャンス」('25年/米)を想起したりもしました。

 「ちゃっきり」とは「巾着切り」のことで(「ちゃっきり節」の「ちゃっきり」(茶切り)とは無関係だろう。むしろ、「ちゃきちゃきの江戸っ子」と懸けているのか?)、その金太と、彼を追っていたはずがひょんなことから一緒に旅することになる岡っ引きの倉吉とのやりとりが面白く(中村是好も好演)、フィルムの逸失部分を含めて想像すると、エノケンの映画の中でもギャグの絶対数はかなり多い方ではないでしょうか。

 結局、薩摩藩・勤皇派の行軍に潜伏して大政奉還後に江戸への帰還を果たす2人ですが、こうした行進を揶揄的に撮っているところは山本嘉次郎監督ならではであり、戦時中は軍の依頼を受けて国威発揚映画も撮っていますが、根は全体主義、権威主義的なものを嫌った人だったように思います(黒澤明、三船敏郎といった人材の発掘者でもあった)。

吉行 淳之介.jpg 作家の吉行淳之介(1924-1994)が、文藝春秋のアンケートの中で、この作品を好きな日本映画の第1位に挙げていて(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))、「エノケンは天才で、それにまた戦前の時代、ただ出演しただけで軍国主義批判になりえた」「戦中派としては第1位にするしかない」と言っています。

 多分、吉行淳之介の場合は10代にリアルタイムで観たのだろうなあ。公開当時はエノケンの映画は、世間一般には低俗映画と見做されていたようですが、10代でこういうの観ちゃうと、そんなことに関係なく、一生忘れられなくなるような気はします。

 ストーリー的には(いきなり助っ人が現れたり)かなり乱暴な部分もありますが、モノクロ時代劇というのがいい。大井川で川止めを喰って逗留する旅人達の様子とか宿の様子に何かリアリティがあって、こういうの観ると、最近の時代劇は、テレビでも映画でも、セットも衣装も綺麗過ぎるように思えます。

「エノケンのちゃっきり金太」●制作年:1937年●監督:山本嘉次郎●原作:脚本:山本嘉次郎●撮影:唐沢弘光●音楽:栗原重一●漫画: 横山隆一●時間:72分●出演:榎本健一/中村是好/二村定一/如月寛多/柳田貞一/市川圭子/花島喜世子/山懸直代/千川輝美/宏川光子/北村武夫/近藤登/金井俊夫/椿澄枝/宮野照子/清水美佐子/南弘一/小坂信夫/斎藤務/松ノボル●公開:1937/07●配給:P.C.L.(評価:★★★☆)

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日本初の国産ミュージカル。太田光と岡村隆史を足して2で割ったような感じのエノケン。

エノケンの近藤勇.jpg 「エノケンの近藤勇」VHS  エノケンの近藤勇2.bmp 1935(昭和10)年10月15日公開

エノケンの近藤勇1.jpg 勤皇派と反目し合う新撰組組長・近藤勇(榎本健一)らが桂小五郎(二村定一)暗殺に動く中、組員の加納惣三郎(花島喜代子)は芸姑との恋に落ちていた。一方、薩長同盟を成し、大政奉還実現を目指ざす坂本龍馬(榎本)は、寺田屋騒動ではお龍(高尾光子)の機転で何とか難を逃れるものの、その後に中岡慎太郎(柳田真一)と共に暗殺される。新撰組は脱党者が増えて混乱し、更に、辻斬りの疑いをかけられた加納は同士・田代又八(如月寛多)を斬ってしまい芸姑と心中。近藤は、池田屋に勤皇の志士が集まっていることを聞き、斬り込みをかける―。

 浅草の舞台での往年の爆発的な人気に陰りの出たエノケンが、トーキーに進出し、山本嘉次郎(1902-1974)監督と組んだ第1作が「エノケンの青春酔虎伝」('34年)、第2作が「エノケンの魔術師」('34年)、そして第3作がこの「エノケンの近藤勇」('35年)で、この頃のエノケンの映画は、舞台で彼が演じたものを映画化しており、彼の舞台がどのようなものであったかが想像できて興味深いものがあります。

榎本健一.jpg岡村隆史.jpg太田光.jpg エノケン一座「ピエル・ブリヤント」で、エノケンと共に座長だった二村定一演じる桂小五郎の殺陣シーンなどは完全に舞台風で、それに対して主役のエノケンは、場面々々で様々なパターンの演技を見せているのが芸達者ぶりを窺わせます(この頃のエノケンは若々しく、爆笑問題の太田光とナイティナインの岡村隆史を足して2で割って少し男前にしたような感じ)。

 近藤勇と坂本龍馬の1人2役ということで、襖を挟んで2人が偶然居合わせる場面などの映画的趣向はありますが、フィルム合成は無く編集操作のみ、基本的に舞台基調という感じで、前半の山場である「寺田屋騒動」は、まるでドリフの「8時だョ!全員集合」の冒頭コントのようでした。

 龍馬暗殺の場面では結構シリアスに演技しているかと思うと、最後におちゃらけてみせたりするなど、常にゲラゲラ笑えるというものではないですが、真面目にやっていながらいきなりギャグで落としたり、或いは、所々に小さなギャグを挟んだりと、バラエティに富んでいます(山岡鉄太郎(丸山定夫)が近藤勇を諭す場面など、シーンの終わりまで真面目な時代劇風だったりもする)。

 最後の「池田屋騒動」はミュージカル調。前半はクラシック(ラヴェルの「ボレロ」)で後半は和楽、大円団は紙吹雪舞う凱旋パレード風で、深作欣二監督の「蒲田行進曲」の楽屋落ち風のエンディングは、この作品に想を得ていることが窺えました。

 間諜が「X二十七番」(中村是好)という名前になっているなど、洋画の影響が見られるかと思えば、時計が時報を鳴らす際に台湾と満州の時刻も併せて告げるなど、昭和10年という時代を反映させた遊びも入れたりしています。

 近藤勇は真剣勝負の際に高下駄を履くとやけに強くなり、坂本龍馬は眼鏡を外すと何も見えなくなるというオリジナル設定。加納惣三郎は、司馬遼太郎の『新選組血風録』中の1篇「前髪の惣三郎」(大島渚監督の「御法度」の原作)では、ホモ嗜好の熱い視線を浴びる美青年でしたが、この作品では女優が演じており女剣劇風、と言うより芸姑との恋に落ちるため宝塚を観ているみたい―但し、この挿話は要らなかったようにも思いました。

 こうした無駄もあったせいか、この作品の批評家受けは良くなかったようですが、「キートンの爆弾成金」との併映ということもあって興行的には成功し、以降、山本嘉次郎監督とのコンビで次々と作品を世に送り出すことになります。

 作品自体の出来はそこそこといった感じで、思想性も個人的には特に感じられませんでしたが、P.C.L.(東宝の前身の1つ)初の時代劇であり、日本で初の国産ミュージカルであるという映画史的な価値の方が高い作品かも。

「エノケンの近藤勇」●制作年:1935年●監督:山本嘉次郎●脚本・原作:ピエル・ブリヤント/P.C.L.文芸部●撮影:唐沢弘光●音楽:栗原重一●時間:81分●出演:榎本健一/二村定一/中村是好/柳田貞一/如月寛多/田島辰夫/丸山定夫/伊藤薫/花島喜世子/宏川光子/北村季佐江/千川輝美/高尾光子/夏目初子●公開:1935/10●配給:P.C.L.(評価:★★★)

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日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと。

淑女は何を忘れたか1.bmp 「淑女は何を忘れたか [VHS]」(斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子)

淑女は何を忘れたか vhs.jpg 大学の医学部教授の小宮(斎藤達雄)は日頃から、口うるさい妻の時子(栗島すみ子)に頭が上がらなかったが、それは、夫婦円満を保つ彼流の秘訣でもあった。そんなある日、大阪より時子の姪・節子(桑野通子)が上京、小宮家にやって来る。自分とは対照的に思ったままに行動する彼女に触発された小宮は、ある揉め事を契機に初めて時子に平手打ちをくらわせてしまう―。

 トーキー時代に入ってもしばらくサイレント映画にこだわり続けた小津安二郎監督の、「一人息子」('36年)に続くトーキー第2作で、サイレント映画時代の彼のコメディ的要素と戦後の家庭劇の要素が混ざった作品のように思えました。

 それまで下町の庶民を題材にすることが多かった小津ですが、この作品では一転して舞台を山の手へ移し(丁度この頃に小津自身も深川から高輪へ転居している)、アメリカ映画から得られた素養をふんだんに生かしたモダニズム溢れるソフィストケティッド・コメディに仕上がっています。

淑女は何を忘れたか3.jpg 桑野通子演じる姪の節子は、いわば当時のモダンガールといったところでしょうか。未婚だがタバコも酒も嗜むし、車の運転にも興味がある活発な彼女は、妻の尻に敷かれる小宮を見て、夫権の復活を唱えて盛んに小宮をけしかける―そこへ時子がいきなり現れたりして、小宮が節子を叱るフリをする、時子が去ると節子が小宮を軽く小突くなどといった具合に、小宮と節子の遣り取りが、爆笑を誘うというものではないですが、クスッと笑えるものとなっています。

 この作品の斎藤達雄はいいです。サイレント時代の小津作品では、もてない大学生(「若い日」)やしがないサラリーマン(「生まれてはみたけれど」)を演じたりもしていましたが、この作品で「ドクトル」と世間から呼ばれるインテリを演じてもしっくりきています(独りきりになると結構このドクトルは剽軽だったりするが)。

 有閑マダム3人組(栗島すみ子、吉川満子、飯田蝶子)の会話なども、それまでの小津作品には無かったシークエンスですが、関西弁で話しているためか、どことなくほんわかした感じがあり、それでいて畳み掛けるところは畳み掛けるという、トーキー2作目にしてこの自在な会話のテンポの操り方には、トーキー参入に際しての小津の周到な事前準備が感じられました。

淑女は何を忘れたか4.jpg その他に、小宮家で家庭教師をすることになる大学の助手・岡田を佐野周二が演じていますが、息子・関口宏より相当濃いハンサム顔に似合わず、教え子の友達(突貫小僧)に先に算数の問題を解かれてしまって面目を失うというとぼけた役回り。

 小宮は、妻にはゴルフに行ったことにしながら、節子の東京探訪に付き合わされて、その晩は岡田の下宿に泊めてもらいますが、アリバイ工作のためにゴルフ仲間の会社役員(坂本武)に投函を託した葉書に書かれた当日の天候が全く違っていたことに気付いて慌てふためくも、まあ、大丈夫でしょうと、岡田はのんびり構えてしまっています(結局、そのことで小宮の工作は時子にばれてしまう)。

淑女は何を忘れたか2.jpg 岡田と節子の間で何かあるのかなと思いましたが、これは"夫婦"がテーマの映画なのでそうはならず、結局、「雨降れば地固まる」みたいな映画だったんだなあと。

 まあ、全体として他愛の無い話と言えばそうなのですが、こうした細部のユーモラスなシチュエーションの組み入れ方もそうですし、ストーリーの落とし所からも、ああ、日本のホームドラマの基盤がこんなところで着々と築かれていたのだなあと思わせるものがありました。

 また、この作品は、日本映画史上初のスター女優と言われた栗島すみ子(1902-1987)の映画界引退作品でもあり、彼女はその後、成瀬巳喜男監督の「流れる」('56年/東宝)で一度だけスクリーンに復帰、田中絹代(1909-1977)、山田五十鈴(1917-)、杉村春子(1906-1997)、高峰秀子(1924- 2010)らと共演しましたが、それら大女優の更に先輩格だったわけで、堂々たる存在感を示しています。

『お嬢さん』栗島すみ子、岡田時彦.jpg そもそも、成瀬巳喜男の監督デビュー(1930年)よりも栗島すみ子の映画デビューの方が先であり(1921年)、年齢も彼女の方が3歳上。成瀬監督を「ミキちゃん」と呼び、「流れる」撮影の際は、「あたしはミキちゃんを信用して来てるのだから」と、セリフを一切覚えず現場入りしたという話があり、小津安二郎の「お嬢さん」('30年/松竹蒲田)で岡田時彦と共演したりしていることから、自分の父親が自分が1歳の時に亡くなったためその記憶が無い岡田茉莉子(1933-)には、「あなたのお父さんは美男子の中でもずば抜けて美男子だった」と「流れる」の撮影現場で話してやっていたそうな。

栗島すみ子、岡田時彦 in「お嬢さん」('30年/モノクロ。フィルムは現存せず)

 
「淑女は何を忘れたか」●制作年:1937年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁/ジェームス槇(小津安二郎)●撮影:茂原英雄/厚田雄春●音楽:伊藤冝二●時間:71分●出演:斎藤達雄/栗島すみ子/桑野通子/佐野周二/飯田蝶子/坂本武/吉川満子/葉山正雄/突貫小僧/上原謙●公開:1937/03●配給:松竹大船●最初に観た場所:神保町シアター(10-12-11)(評価:★★★)

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昭和初期の軟派系早大生を描いた、小津版「私をスキーに連れてって」といったところ。

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学生ロマンス 若き日 vhs2.jpg 大学の同級生仲間の渡辺(結城一郎)と山本(斎藤達雄)は、憧れのマドンナ千恵子(松井潤子)がスキーに行ったのを知り、彼女の後を追いかけて妙高高原・赤倉に行き、恋の争奪戦を繰り広げていくが―。

 1929(昭和4)年公開の小津安二郎監督の第8作にして初の長編作品。小津安二郎の監督作品は記録映画も含めると全部で54作ありますが、その内の現存する37作品の中ではこれが最初期の作品で、個人的には今回が初見。本来はBGMも無い「完全サイレント」作品ですが、神保町シアターで、エレクトーン奏者・柳下美恵氏の伴奏により鑑賞しました。

 陽気でお調子者の渡辺と、生真面目だがちょっと抜けている山本のコンビが妙。もともと2人が千恵子と知り合ったのは、渡辺が下宿に「貸間あり」の張り紙をし、男が訪ねてきたら「残念でした。今日、僕が入居しました」と言って追い払い、美女が訪ねてきたら一旦部屋を引き払って、後で忘れ物をしたと言って部屋に上がり込んで、その女性と親しくなるという戦略によるものです。

 そうして知り合った千恵子がスキーに行くことを知った2人ですが、渡辺には仕送りが来ず、山本は財布を落としたために共にその資金が無く、山本の下宿に転がり込んだ渡辺が、山本に「上を向け」と言って、その間に山本の部屋の書籍や家財道具をかき集め、それを質屋に持っていき"軍資金"を作る下りは、渡辺の部屋にポスターが貼ってあったフランク・ボーゼージ監督の1927年映画「第七天国」の、掃除夫の主人公が自分はもっと偉くなるのだという前向きな気持ちを表した「上を向け」という台詞のパロディで、主人公が自分の住む部屋を「第七天国」と称した「七」に「質」を懸けています(柳下美恵氏の解説による)。

学生ロマンス 若き日.jpg 渡辺と山本がゲレンデで千恵子を巡って恋の鞘当を繰り広げる場面は、随所にスラップスティックなノリが感じられ、山本が渡辺にスキー板を流され取りに行く間に、渡辺と千恵子が仲好く語らう場面など、チャップリン映画さながら。

 ストーリーの方は、実は、千恵子は、母親(飯田蝶子)と共にお見合いをするためにスキー場に来ていたのであり、見合いの相手は、渡辺らの同級生(日守新一)だったという皮肉な展開に(それでも諦めない渡辺なのだが...)。

 2人がスキー場を後にし、乗った列車の中で、スキーに出かける前に受けた期末試験の担当教授に会い(何で教授がこの列車に乗っている?)、テストの点数を教えてもらったところ、それぞれ45点と37点で、「君たち、スキーをしている場合じゃないだろ」。渡辺は落第、同級生と千恵子の見合いはうまくいったようで、常人ならばがっくりくるところですが、下宿に戻ってから落ち込んでいるのは山本の方で、渡辺は、「俺がもっとシャン(美人)を捜してやるから」と明るく前向き。再び「貸間あり」の張り紙をしたためる図々しさ(今度は山本の部屋なんだよなあ。結城一郎は、いけしゃあしゃあとした主人公を好演)。

 思ったよりゲレンデ・シーンが多く、小津版「私をスキーに連れてって」('87年/東宝)といったところでしょうか。

私をスキーに連れてって 1.jpg 「私をスキーに連れてって」の方の舞台は奥志賀のゲレンデ。主人公(原田知世)が恋人へのプレゼントを届けるために横手山から万座へ夜中にスキーで山越えをするといった話だったと思いますが、あまりに現実離れしたストーリーで、しかも出演者の演技はみんな下手(もう一人の主演の三上博史は、最初に脚本を読んだ時、あまりのバカバカしさにゴミ箱に捨てたというから、最初からモチベーション低かった? そんな演技にOK出しする作り手の方に問題があるのだろうが)。ユーミンの挿入歌「恋人はサンタクロース」くらいしか印象に残らなかった作品ですが、「見栄講座」のホイチョイ・プロダクションの映画だから、ストーリーや演出よりも、当時のバブリーな、「猫も杓子もゲレンデへ」といった世相を映し出すことが主眼の作品だった言えなくも無く、その目的は果たしたか?

 「世相を描く」ことが主眼となっているという点では「青春ロマンス 若き日」にも当て嵌る部分があり(演出はこっちの方がしっかりしていて、昭和初期とは思えないほど現代的)、スキーをする時にパイプを咥えたりベレー帽をかぶるのが流行りだったのか?とか、ゲレンデ交際という当時の若者風俗を描いていること自体に大いに関心を引かれました(共に、その後に不況が控えていたという点でも共通するかも)。

 その他にも、冒頭「都の西北」とあることから、主人公たちは早稲田の学生なのでしょうが(ロケも早稲田キャンパスでやっている模様)、当時の学生の気風(まあ、渡辺はかなりの軟派系だとは思うが)や生活ぶりが窺えるのが興味深かったです。

 監督初の長編作品であるためか冗長な部分もあり、コメディとしてはテンポが今一つですが、そうした「映像記録」的な価値を加味して、星1つオマケしました。

「学生ロマンス 若き日」●制作年:1929年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁●撮影:茂原英雄●原作:伏見晁●時間:103分(109分)●出演:結城一郎/斎藤達雄/松井潤子/飯田蝶子/高松栄子/小藤田正一/大国一郎/坂本武/日守新一/山田房生/笠智衆/小倉繁/一木突破/錦織斌/蜂野豊夫●公開:1929/04●配給:松竹蒲田●最初に観た場所:神保町シアター(10-12-04)(評価:★★★☆)

「私をスキーに連れてって」●制作年:1987年●監督:馬場康夫●脚本:一色伸幸●撮影:長谷川元吉●音楽:杉山卓夫●原作:ホイチョイ・プロダクション●時間:98分●出演:原田知世/三上博史/ 原田貴和子/沖田浩之/高橋ひとみ/布施博/鳥越マリ/上田耕一/飛田ゆき乃/小坂一也/竹中直人/田中邦衛●公開:1987/11●配給:東宝(評価:★★)

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